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賞と顔 2013年9月

第59回 江戸川乱歩賞

広い意味の推理小説を募集。受賞作は講談社から刊行され、フジテレビによって映像化される。大賞受賞者には賞金1000万円と江戸川乱歩像が贈られる。

受賞者:竹吉優輔さん

物を語る=伝える行為

たけよし・ゆうすけ

1980年、茨城県生まれ。二松学舎大学文学部卒業後、東洋大学大学院で文学を専攻。図書館で司書として働くかたわら、小説執筆をつづける。第55回江戸川乱歩賞一次通過、第57回江戸川乱歩賞二次通過と着実にステップアップし、2013年、本作にて第59回江戸川乱歩賞を受賞。受賞作『襲名犯』(「ブージャム狩り」より改題)は講談社より発売中。

 私は、大学院で文学を研究し、その後、一般企業に就職。今は図書館司書をしています。
 物心ついた時から頭の中に「書く」という行為がありました。そして、それは当然「読者」を想定してしかるべきという思いがありました。物語を書く度に、友人達に見てもらい、常に読者を意識した創作を心がけました。
 使い古された言葉ですが、「自分だけが理解できればいい!」という物語ならば、金庫にしまって厳重に鍵でもかけておけばよいわけで、ましてや賞に応募する必要などありません。
 相手に読んでもらうことは、相手の人生の時間を少しもらうことと等価です。だからこそ、書く以上は読者に誠実でなければならない。これは、確信に近い形で正しいことだと考えています。
 江戸川乱歩賞に応募したのは、大乱歩や受賞された先生方への憧れも当然ありましたが、知名度の高い賞ならば、多くの方に読んでもらえるという考えも少なからずありました。
 拙著『襲名犯』は、ミステリーですが、私はミステリーも純文学もライトノベルも、垣根は無いものだと思っています。
 物語は「伝える行為」。伝えるためには何千、何万語も尽くそう、そう思っています。  面白い話を思いついたとか、ペットの猫が可愛いとか、大声で伝えたいことは誰だって必ずあるはずです。私も我が家で飼っている犬達の可愛さを伝えたいですが、何もこの場を借りて語ることではないので我慢しますが。
 ただ、伝えることは本当に難しい。「うちの犬が可愛い」だけじゃ伝わらない。尻尾の形とか、頭の後ろを掻いてやった時の表情とか、言葉やエピソードを尽くし、さらに表現の技量を磨かないと、何一つ伝わらない。プロとして書き続ける上で、それは永遠の課題だと思います。
 拙著『襲名犯』、たくさん伝えたいことがつまっています。言葉に出来ないものも言葉を積み重ねて書きました。
 まだ新人ではありますが、物語を書く時は、「伝える」ということを常に意識し、そのために言葉を尽くそうと思っています。
(たけよし・ゆうすけ)

受賞作襲名犯』

猟奇殺人犯の死刑が執行された。その後、彼の名を継ぐ者が現れ、再び殺人事件が発生する。図書館司書の南條仁は、かつての猟奇殺人事件の最後の被害者、南條信の双子の弟であった。彼は多発する殺人事件と、自分と兄とに何らかの関わりがあるのではないかと苦悩する。

第23回 鮎川哲也賞

創意と情熱溢れる鮮烈な推理長編を募集。大賞受賞者には、印税全額とコナン・ドイル像が贈られる。

受賞者:市川哲也さん

目標は著書を十冊出すこと

いちかわ・てつや

1985年、高知県生まれ。太成学院大学卒業。現在はアルバイト。好きな作家は石持浅海、山田詠美。好きなアーティストは川本真琴、峯田和伸。受賞作『名探偵の証明』(『名探偵-The Detective-』から改題)は東京創元社より刊行予定。

「人生経験が浅い人間にはおもしろい話は書けない」
 作家を目指す人なら、一度は耳にする言葉ではないでしょうか。人によっては『おもしろい話は』の部分に『浅い話しか』とか『人を感動させられる話は』が入るかもしれません。
 私自身、ある偉い方から、君の歩んできた人生なんかじゃ云々と言い放たれたことがあります。ちなみに、その方の言う人生経験とは、世間の荒波に揉まれ、社会人として立派に働き、異性とつき合った経験のある人間だけが獲得できるもの、という感じでした。
 私は「は?」と思いました。
 じゃあ俺が、夜中に一生童貞のまま死んでいくのかと泣きたくなったり、ニートの俺なんか社会のお荷物だと落ちこんだりしてきた人生は人生経験には含まれないってことか!? そんなはずがない!
 大体、浅い浅いと言うが、じゃあ、あんたに童貞ニートの体験を深く掘り下げたおもしろい話が書けるのか!?  どんな人生だろうが二十年生きた人間には二十年分の人生経験があるはずだ。と、猛烈に反発心が芽生え、いまのニート崩れの生活を変えずにおもしろい話が書けると証明してやろう、と心に誓いました。
 結果、私は新人賞を受賞することができました。
 これで前述の方に、人生経験の質なんか関係なくおもしろい話を書けると証明……できたとは、残念ながら言えません。
 人の感性は千差万別です。たとえ受賞作が世間に好評だったとしても、前述の方までもが必ず高く評価するとは言えないのです。
 しかし、私のような人生経験が浅いと言われるような人間であっても、新人賞が取れるのだということは証明できたと思います。
 いまの目標は、著書を十冊世に出すことです。それだけの活動ができたのなら、前述の方が認めずとも、おもしろい作品を書けるのだと断言できそうな気がするからです。
 鮎川哲也賞に応募したのは、当然本格ミステリが好きだからなのですが、こうした裏動機もありました。
 まずは受賞作、そして二作目。十作を目指してこれからも書いていきます。
(いちかわ・てつや)

受賞作『名探偵の証明』

かつて、屋敷啓次郎は国民的人気を誇った名探偵だった。しかし現在、名探偵として華々しく活躍するのは、現役大学生の蜜柑花子。還暦を過ぎた啓次郎の活動は途絶えていた。失われた輝きを取り戻すため、啓次郎はある事件に挑む。

第14回 小学館文庫小説賞

ストーリー性豊かなエンターテインメント小説を募集。大賞受賞者には賞金100万円が贈られ、受賞作は書籍刊行される。

受賞者:八坂堂蓮さん

受賞作のコンセプトはギャグノワール

やさかど・れん

1971年、京都府生まれ。府立高校中退後、祇園のホストクラブを経て歌舞伎町のホストクラブに所属。最長50ヶ月ナンバー1を記録しテレビや雑誌に取り上げられ、漫画のモデルにもなる。35歳で独立。現在は執筆の傍らホストプロデュース業にも携わる。

 グレッチのギター欲しさに始めたホストが祇園から歌舞伎町に根を移し、気づけば二十年近く身を置いていました。今では第二のふるさとです。
 歌舞伎町は人種の坩堝、いろんな肌と欲望が共存し、虚飾と欺瞞、ねじ伏せた良心と罪悪感で成り立つ、こんなに笑いと絶望に満ちた街は他にありません。事実は小説より奇なりと申しますが、歌舞伎町の日常は漫画より奇なりといった感じで、田舎の友人に話しても信じてもらえないようなことや人に出くわします。
 ご存知の通り不良も多く、ですが彼らも守る麗しい不文律や礼儀もあり、理不尽なことも多々ありますが、そんな歌舞伎町を私は愛しています。そこにずっぽり首まで浸かった私にしか書けないもの、それがこの度、小学館様から栄えある賞を頂いた『ドランク チェンジ』です。
 新宿を舞台にしたノワール小説は出し尽くされた感があるので、そこに笑いをたっぷり盛ったギャグノワールで行こう、というコンセプトで筆を執りました。今の世には笑いが必要だと思ったからです。
 先日、こんなことがありました。深酒が過ぎてバーの重いドアを開けて外に出ると祭のような賑わいが。わっしょいわっしょいと千鳥足を運んでいくとそれは「帰れ帰れ」というシュプレヒコールでした。物々しい機動隊に守られ、在日死ねと叫ぶヘイトデモに対抗するカウンターと呼ばれる方々の声です。奇妙な三つ巴だと一緒にいた在日コリアンの友人は笑っていました。
「何が祭だよ。あれ、日の丸の旗振ってるサングラス、あいつヨン様っぽくね?」そう言った友人と二人で吹き出しました。
 近頃はいじめや差別といった重苦しいニュースを毎日のように耳にします。それをなくすのは難しいが和ませることはできる。新宿にいると肌でそう感じます。拙作の『ドランク チェンジ』は、そんな歌舞伎町で、あざとくも健気に生きる、愉快で奇怪な奴らを描きました。彼らの貪欲な生き様を見て、カラッと笑ってくだされば幸いです。
(やさかど・れん)

受賞作『ドランク チェンジ』

新宿・歌舞伎町を舞台に、地元生まれで元キャバ嬢の果子が、現役時代に培った人脈と信頼を活かし、歌舞伎町のトラブルバスターとしてヤクザやホスト、水商売の女性たちのもめごとを解決していく。

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