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賞と顔 2013年10月

第1回 日本エンタメ小説大賞

「映画の原作になること」を意識したエンタテインメント性の高い小説を募集。大賞受賞者には20万円が贈られ、リンダパブリッシャーズから出版 (規定の印税を支給) される。

受賞者:中得一美さん

受賞作のヒントは
「冬のソナタ」

なかえ・ひとみ

1965年、鹿児島県生まれ。日本映画学校映像科脚本ゼミ、放送大学教養学部心理と教育コース卒業。現在は自営業(おはなしサービス)、介護ヘルパー。好きな作家はアゴタ・クリストフ、好きな映画監督はキム・ギドク。受賞作『嫁の心得』はリンダパブリッシャーズより9月14日に刊行される。

武家に嫁いだ大女いのが、仇討の旅に出るというこの『嫁の心得』のヒントは、実は「冬のソナタ」からでした。当時韓流ブームの火付け役ともなったこのドラマは、多くの女性のハートを鷲掴みし(しかも中高年の)、一大現象ともなっておりました。私は「何故、皆、ヨン様に夢中になるの?」と不思議に思っておりました。

それから、自分なりに色々と考えたのですが、数年経ってようやく出た答えは「もしかするとあの人たちは、ドラマの主人公に恋をすることで、この辛い現実を乗り越えようとしているのではないか?」ということでした。

もう若くもなく、夫も子どももいる家庭の主婦たち。そんな彼女たちが、毎日嫌と言うほど続く同じような日常、そんな閉塞感の中で自分を奮い立たせる為に、そして、この倦んだ日常を乗り越える為に“恋のパワー”を使っているのではないか?  と思い当たったのです。

この私の説が正しいかどうかは分かりませんが、少なくとも後年、同じような経験を重ね、同じように閉塞感を感じていた私は、その思いに確信を得た気がしました(はい、そうです。私も今ではすっかり韓流ドラマにハマっております……)。

ヨン様のドラマを毎日のように観て、気持ちを奮い立たせる主婦のように、主人公いのも、仇の描かれた似顔絵を見て、恋をするのです。そして、この過酷な仇討の旅に耐えようとするのです。そう考えると、女性って何て健気なんだろうと思います。そうやって一所懸命に生きているんですよね。

この作品はそんな女性たちへのリスペクトの物語です。

今回賞を頂きました「日本エンタメ小説大賞」は、映画の原作を念頭に置いた賞ということで、長年脚本家を目指していた私には合っているのではないかと思い応募しました。本当にこんな素晴らしい賞を頂くことが出来て有難く思っております。

今後は時代劇や故郷の奄美の話にも挑戦したいのですが、逆にうんとバカバカしいものも書きたいですね。「何じゃ、こりゃ~!」と皆が呆れ返るような、そんなものも書いてみたいです。

(なかえ・ひとみ)

受賞作『嫁の心得』

武家へ嫁いだ農家の大女いのが、馴れない武家の作法に戸惑いながらも、やがて一人前に成長していく。だが、そんな折、夫が何者かに斬り殺され、仕方なく仇討の旅に出ることに。しかし、次第に仇の似顔絵に恋心を抱いてしまうのだった。

第33回 横溝正史ミステリ大賞

エンタテインメントの魅力あふれる力強いミステリ小説を募集。大賞受賞者には賞金400万円と金田一耕助像が贈られる。

受賞者:伊兼源太郎さん

心から待ち望んだ義務
小説を書け

いがね・げんたろう

1978年、東京都生まれ。上智大学法学部卒業。好きな作家は藤原伊織、山口瞳、打海文三。趣味は靴磨き。受賞作『見えざる網』は角川書店より9月30日に刊行される。

文庫本を読んでいると携帯電話が鳴った。横溝正史ミステリ大賞の最終候補に残ったとの連絡だった。その夜、私が手にしていた文庫本は横溝正史氏の作品。私は思った。「これは本当に縁があるのかもしれない」

小説を書きたい。

初めてその思いを抱いた時のことは覚えていない。数年前、仕事で配置換えがあった。以前の持ち場に比べて、少し時間に余裕が出来た。気づけば小説めいたものを書いていた。

小説を書く。その呪いにも似た思いは日ごと募った。これで生計を立てたい。そう思うまでになり、スタート地点に立つべく公募賞に応募した。だが、最終候補までは残っても、落ち続ける日々が続いた。つまり、自分には才能がない。才能がないのなら、応募を続けても結果なんて出ないのではないか。

その時に腹を括った。

だったら今年を応募する最後の年と決め、やれるだけやってみればいい。

小説を書き続けたかった。強い念がこもったのだろう。書き上げると、かなりの枚数で、これまで応募していた賞の規定枚数を大きく超えていた。

数日後、読もうと思っていた文庫本を買った。そこに横溝正史賞の案内があった。枚数を受け入れてくれる規定だった。

しかし、横溝作品が持つ雰囲気の欠片もない話。枚数を大きく削るか、それとも応募するか。迷い、何となく横溝氏を少し調べた。すると、氏ゆかりの地の多くが、自分にも関係がある土地だと知った。横溝氏に誘われた気がし、応募した。

そして選考会の夜。携帯電話が鳴った。受賞の連絡。拾ってもらった、と思った。

小説を書け。今まで自分が楽しんできた分、誰かを楽しませる物語を書け。その心から待ち望んだ義務が、今回の受賞で課せられたと思っている。

とはいえ、すでに存在する膨大な物語と、これから生まれる膨大な物語の森。その一本の木になれる可能性を得ただけのことでもある。私は今、再び腹を括り、自分に言い聞かせている。

やれるだけやってみろ。

(いがね・げんたろう)

受賞作『見えざる網』

ある朝、駅のホームで正体不明の連中に押され、殺されかけた会社員。その後も、不可解な出来事に巻き込まれ、ついに犠牲者も出てしまう。不審な事故死が次々と明らかになる中、影でちらつく世界的なSNS運営企業。会社員は影の正体を探る。

第13回 テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞

未発表のオリジナルシナリオを募集。テーマ、ジャンルは自由。大賞受賞者には賞金800万円が贈られる。

受賞者:吉田光洋さん

ぼんやり寝て待っていても
幸運は転がり込んでは来ない

よしだ・みつひろ

1973年、長野県生まれ。好きな映画監督はデヴィッド・リンチ、ラース・フォン・トリアー、ダニー・ボイル、好きなクリエーターはアレックス・ガーランド、マーク・チェリー。趣味は睡眠。もしくは微睡みながらする考えごと。受賞作『化石の微笑み』は今後テレビ朝日系でドラマ化される。

フィクションばかり創ってきたせいか、自分という実在の人物を題材に指定され、何を書くべきか正直困りました。しかも昨日と今日の差を示すのにも苦労するほど、僕の日々は地味で退屈に過ぎて行きます。もうずっとシナリオを創作してはあちこちの公募に送り、落とされるのをただ繰り返すばかりで……そうですね、ここはひとつ「落選」を糸口にしてみましょう。

常に自信作を応募しているのに、ことごとく選から漏れてしまう。公募ガイド読者の皆さんなら、僕と同じこの苦い経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。持てる力のすべてを注いで完成させた作品に瑕疵を認めるのは辛いものです。それでもやっぱり受賞に至らなかったのにはちゃんとした理由があると、度重なる落選から痛感し、僕はいつしかこう考えるようになりました。結果が駄目でも運は言い訳にしないでおこう。

当落の舵は運なんて得体の知れないものにではなく、この手の中にある。それじゃあ、報われないのはぜんぶ自己責任みたいで酷だと思われるかもしれません。確かに。ただ裏を返せば、他を圧倒するようなものすごい作品を生み出しさえすれば認められる訳です。だからこの理屈に僕は希望も見出してきました。わりと楽観的なんです。あとはその基本方針に従い、連日、徹夜になろうが、頭痛に悩まされようが、ひたすら邁進するだけ。

と、つい調子に乗ってマッチョな論調に突入し、急に不安を覚えました。慌てて受賞作を読み返してみたところ、執筆していた際には見過ごしていた欠点が目につきます。弱りました。これを言ってしまうと今まで書き連ねてきた内容が台無しになりそうですが、僕が賞を頂けたのは、やっぱり運が良かったからかもしれません。

とはいえ、この手の幸運は、ぼんやり寝て待っていても転がり込んでは来ないでしょう。どうすればより面白くできるのか、一人でも多くの人に共感してもらえるのか、考え、悩み、諦めずに書き続けてきた、あの地道な日々があったからこそ果報に恵まれた。そう僕は信じています。

(よしだ・みつひろ)

受賞作『化石の微笑み』

見知らぬ老女に突然手を掴まれ狼狽える少年・和哉。老女が自分を若き日の亡夫と思い込んでいるうえ、意中の少女の祖母だと知り、彼は夫のふりを始めるのだが……。人の肌に触れられない少年が、認知症の老人との交流を通し、想いを寄せる少女と手をつなぐまでを描く恋物語。

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