公募ガイド

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賞と顔 2014年11月

第4回『 このライトノベルがすごい!』大賞

エンターテインメント性あふれる小説を募集。宝島社が2005年版より毎年刊行しているガイドブック『このライトノベルがすごい!』から生まれた新人賞。本当に面白い作品、新しい才能を発掘し、世に送り出すことを目的に創設。大賞受賞者には賞金500万円が贈られ、受賞作は刊行される。

受賞者:長谷川 也

この先の一歩こそが
真のスタートライン

はせがわ・なりや

はせがわ・なりや

1982年、新潟県出身。基本的に臆病で優柔不断で女々しい性格をしていますが、だからこそ、せめて自分の得意分野では、それっぽくありたいと思っています。好きなものは大抵の動物。嫌いなものは大抵の病気。趣味は虚構に触れること。

この『公募ガイド』には、少々苦い思い出があります。

もう十年近くも前の話になります。その頃から作家を目指していた私は、書くことに煮詰まるとふらっと近所の書店へ出かけ、よくこちらの雑誌を購入していました。このような受賞者の自慢話が当時も掲載されていたか、覚えてはいませんが、どちらにしろ妬ましくて読めなかったはずです。私はまるで才能の無い作家志望者だったのです。応募したい新人賞に印をつけて、締め切りまでに必ず書き上げると自分を奮い立たせ、なんとなく構想は頭に浮かぶのですが、結局一本の長編も完成させられませんでした。

二十代の前半には作家になることをキッパリ諦め、夢も目標も無い生活をひたすら続けて、結果、再びここへ舞い戻ってきてしまったのは、他になんの希望も見い出せなかったからです。何年経っても、まるで成長しなかったというわけです。

しかも成長していないのは人間の性根だけではなく、性能の部分もまったく同じで、実はまだ、人生に一度も長編小説を書いたことがありません。

今回賞をいただいたのは、連作短編--というよりもコント集に近いもので、いや、これはこれで書くのに苦心しましたし、書けるものなら書いてみろという自負もあるのですが、しかしこれで小説家を名乗るのは詐欺に近い行為だと思います。

そういうわけで、私はまだ作家ではありません。プロどころかアマチュアですらありません。ワナビですね。最低の代名詞にとどまっているのです。

普通とは順序が逆で、私は小説を書くためにデビューをしました。これがライトノベルの懐の深さだと感謝はしていますが、うかれるわけにもいきません。堂々と作家を名乗れないのは、やはり歯がゆいのです。

まあ、たぶん、私はやればできる子ですので、こうやって自分を逃げられない高台へ追い込んでしまえば、今まで書けなかったものも書けると思います。

謙遜でもなんでもなく、私にとってはこの先の一歩こそが真のスタートラインなのです。

(はせがわ・なりや)

受賞作『セクステット 白凪学園演劇部の過剰な日常』

地味で弱そうで友達の少ない少年・カキタニは、自分を変えるべく、進学を機に演劇部に入部する。だが、彼が入部した演劇部は、人間関係を有利に支配し、世の中をうまく渡っていくために『演技』を活用しようとする女生徒たちの集まりだった。

第26回 小説すばる新人賞

新人文学賞。受賞者には記念品と賞金200万円が贈られ、受賞作は刊行される。選考委員は阿刀田高、五木寛之、北方謙三、宮部みゆき、村山由佳。

受賞者:周防柳

スネ肉をお守りに抱いて

すおう・やなぎ

すおう・やなぎ

1964年、東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業。編集者・ライター。趣味は長唄三味線。好きな作家は夏目漱石、内田百閒、山田風太郎。受賞作『八月の青い蝶』(『翅と虫ピン』より改題)は、集英社より2014年2月に刊行予定。

私は応募歴もほぼ皆無の新人ですので、皆様のご参考になるようなことは何もないのですが、改めて鑑みて、二つのことを申し上げたいと思います。

一つは、賞を取る、取らないといったことは考えず、ただひたすら自分の書きたいことを書くということです。自分の納得のいくように書く。自費で刊行するつもりで書く。人様に評価していただけるかどうかは後付けでしかないと思います。じっさい、私は結果のことは微塵も頭にありませんでした。おそらくそのような気持ちが幸いしたのだろうと、いま思います。

もう一つは、世知辛いことですが、ものを書くことには経済的に非常なる困難が伴いますので、しかるべきスポンサーを確保することです。なにしろたった一つの小説を仕上げるのに、何カ月も、何年もかかるのです。その間ずっと収入ゼロということもありえます。その憂いに心を奪われていたら、たぶん書くことはできません。

ですからこれから挑戦なさる方には、頼りになる親御さんやよき伴侶、あるいは創作活動に理解のある職場等々の環境をまず整えられることを切望します。

じつのところ、私自身はそのどれでもありません。親はすでに高齢ですし、パートナーもおりません。しかも定収のないフリーのライターです。そのために小説への志はあってもなかなか踏み切ることができず、ここまできてしまったのです。

しかし、その代わりに賞を取ったとき、長年ともにやってきた仕事仲間たちから「この先難しくなったときにはいくらでも助けるから、できるところまで小説頑張ってごらんよ」と励ましてもらいました。これは受賞そのものより何倍もうれしかったことで、どっと涙が出ました。

ものを書くためには、こうしたいろいろな意味での「かじるスネ」が必要なのだと思います。

もちろん、それに甘えてはいけませんが、それがあるのとないのとでは精神的にかなり違う気がします。自分を見守っていてくれるお守りとしてだいじに胸に抱いていたら、活字にもじわっと味が出てくるのではないでしょうか。あたたかなスネ肉の煮込み料理のように。

(すおう・やなぎ)

受賞作『八月の青い蝶』(『翅と虫ピン』より改題)

昭和20年8月6日に広島で被爆した中学生の少年が、65年後、死期が迫った病床で、かつての悲しい初恋の記憶をふりかえる。

シェル美術賞2013

日本国内在住者で40歳以下を対象に、現代絵画、平面に準じる作品を募集。グランプリ受賞者には賞金150万円が贈られる。審査員は本江邦夫、木ノ下智恵子、保坂健二朗。

受賞者:武藤浩一

前に進むため挑んだ
長い宿題

むとう・こういち

むとう・こういち

1975年、新潟県生まれ。フリーイラストレーター。新潟県立新潟高等学校通信制卒業。趣味は音楽鑑賞。好きなアーティストはアルノルト・ベックリン、大友克洋、キース・エマーソン、ロジャー・ウォーターズ。

15年ほど前から、自室に100号というサイズのキャンバスが在ります。15年前のその当時、自分なりのものを描いて、公募展に出品しようと用意したキャンバスです。しかし、描き上げることはできず、その後、白く塗りつぶしました。

ガッカリしましたが、できなかった理由もよくわかっていました。その大きさに堪えうるだけの主題もなければ、技術もありませんでした。そして何よりも、ほんとうの意味で、描くことを自分に許していなかった、と今はそう思います。

そんな〝白いキャンバス?が部屋の一角を占めてから、それに描くことは、そう遠くない未来にやるとだけ約束した宿題のようになりました。

時折はその気になって、モチーフを考えたりスケッチをしたりしましたが、なにぶん、一度出しそびれた宿題です。遅れて出すならば、できるだけ怒られないものにしようという言い訳で、悪い先延ばし作戦で対峙する、少なからず困る存在になっていました。けれど、そんな状況は拠り所でもありました。「これに描けないうちは、まだ時間がある」と。

その周辺で、イラストやデザインみたいなことはしていましたが、15年はやはり15年です。自分のこれからを考えたとき、いよいよこのことは終わらさなくてはいけない、今やる宿題になったことがはっきりしてきました。そして、前に進むために「ほんとうに描くことへの許可」を自分にしました。表現すべき主題も技術も大してないのは変わりありません。みっともなさや怖れも含めて、無理やりにでも、許したふりだとしても描く……今回のことでいえば、そういうことでした。

〝白いキャンバス?は制作上の理由で使えませんでしたが、とにかく描いて、公募があり、それが嬉しい結果になったことに安堵しています。でも、次の宿題があるようで……それには、もう後出しは利かないはずです。

(むとう こういち)

受賞作『払底』(2013年 162×162㎝ アクリル・キャンバス)

背景込みで世界観を描きたいというのがありました。ありそうにない海辺の景色ですが、個々の要素を多分に現実的な感覚で、象徴的に描いています。

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