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賞と顔 2014年4月

第9回 日本ラブストーリー大賞

“今世紀最高のラブストーリー”を発掘するとともに、賞を通じてベストセラーを生み出すことを目的に創設された恋愛小説の新人賞。累計30万部の『オカンの嫁入り』や累計35万部の『カフーを待ちわびて』など映画化された作品を多数生み出している。大賞受賞者には賞金500万円が贈られる。

受賞者:石田 祥

声を出すほど
感情が揺さぶられる
一文を残せれば

いしだ・しょう

いしだ・しょう

1975年、京都府京都市出身・在住。高校卒業後、金融会社に入社。現在は通信会社勤務のかたわら執筆活動中。「日本ラブストーリー大賞」には、第7回より3年連続応募し、今回3度目にして大賞を受賞。受賞作『トマトの先生』(『トマトのために』より改題)は宝島社文庫より3月刊行予定。

小説を書き始めたのは、三十五歳になってからです。物書きになりたいという夢は小学生の頃から持っていたのに、実行するまで随分と時間がかかったのは、多分試すのが怖かったのだと思います。

それなのにいつかはなれるんじゃないかと、どこかで信じていました。不思議ですね。でもそろそろ諦めれば?って、自分でも少々ウンザリしていたんです。せめて努力くらいしようよって、情けなく思いましたね。

しかし憧れというのはそういうものなんでしょう。駄目とわかっていても、どうしても捨て切れない。どうしたら諦められるのかと考えて、これはもう諦めるのを諦めようという結論に達したんです。恋愛小説の読者モニターに選ばれて、レビューを書くために文章を読み砕いてみたのもいいきっかけになりました。これなら私にも書けるんじゃないかなって、妙な気楽さが出てきたんです。単純な性格でラッキーでした。

それに当時の私は、平均ではあと五十年も時間があったんです(三年前の日本女性の平均寿命は八十六歳)。それだけあれば一冊くらい図書館に自分の本が並べられるんじゃないだろうか。そんな気の長い計画でした。

ですから今回大賞を頂いて「どうしよう、こんなに早く受かってしまった」というのが本音です。困ったことになりました。正直な気持ちです。私の小説が評価されたというよりは、題材にしたトマトが目立ってくれたお陰だと思っています。

今はとにかく、生活のリズムを崩さないこと。夜更かしせず、執筆以外のことも大切にする。自分を見失わないように心掛けています。そしてもう一冊でいいから、本が出せればと思います。それが積み重なって、いつかは私の書いたものを読んでくれた人が、思わず声を出してしまうような文章が書きたい。笑い声、ため息、吃驚、涙、なんでもいいので、声を出すほど感情が揺さぶられる一文を残せればと思います。

今年で三十九歳になります。まだまだ、夢を叶える時間はあります。気長に気楽に、いつまでも好きな執筆活動を続けていきたいです。

(いしだ・しょう)

受賞作『トマトの先生』(『トマトのために』より改題)

主人公の早苗は、祖母の代わりに家賃の受け取りに行ったボロアパートの一室で風変わりな男に出会う。裏庭でトマトを栽培する大学農学部の講師・日置に食べさせてもらったトマトはあまりに甘くておいしく、衝撃を感じた早苗は熱に浮かされるように日置と寝てしまう。その後、早苗は日置の頼みで、偽の婚約者として一カ月ともに生活することに。

第8回『幽』怪談文学賞 長編部門

体験談、伝聞、創作を問わず「怪異」をテーマとする文芸作品を募集。長編部門大賞受賞者には賞金30万円が贈られる。選考委員は岩井志麻子、京極夏彦、高橋葉介、南條竹則、東雅夫。

受賞者:石川 緑

はじまりは偶然手にした
雑誌『ダ・ヴィンチ』

いしかわ・みどり

いしかわ・みどり

大阪府出身。近畿大学大学院修士課程修了。受賞作を収録した『常夜』(『天竺』より改題)は5月16日にメディアファクトリーより発売予定。

今回の『幽』怪談文学賞の募集は雑誌「ダ・ヴィンチ」の広告で知りました。その頃子供を産んで家に閉じこもっているのを心配して夫が雑誌を買ってきてくれたんですね。ご存知のように『ダ・ヴィンチ』は薄くてくったりしているので床や机にさっと開いておけます。授乳の際に読むのにぴったりなのです。

その募集に選考委員の京極夏彦さんと岩井志麻子さんのお名前があがっていたのが最終的な応募の決め手でしょうか。受賞作『常夜』の「民俗学」、「学芸員」、「地方都市」というキーワードがぽんぽんと頭に浮かんできて作品の入り口が見えてきました。

『常夜』は関西のこじんまりした田舎町が舞台になっています。主人公の青年は民俗学を専攻した学芸員で、仕事を通して次々と怪しい出来事に遭遇してゆきます。奇怪な出来事は勿論、実はもう一つ着目してもらいたいのが普通の人たちの普通の暮らしの不思議さです。

私は大阪の農村の生まれで、土着的な環境になじみが深いのです。良い意味でも悪い意味でも人間関係の密度が濃厚。田舎では出口のない巨大な渦巻き貝の中に全員が住んでいて始終ぐちゃぐちゃもめながら生きているんですね。

また他方で若い世代になると情報化とグローバル化で関係性が急激に希薄にもなっている。

その不安定さから出てくる人々の行動のおかしさ、不可思議さ、かなしさみたいなものをじっくり味わって頂けたらと思います。

そして学問の道を極める困難さがもう一つのテーマでもあります。主人公を研究の道へ導いていく野々宮先生の不穏なほどの情熱と弟子である主人公との心理的な葛藤にも注目して頂けたら幸いです。

怪談ファンの方、博物館の仕事に興味のある方、また小説好きな女性の方にぜひお勧めしたいですね。

後は、雑誌をそっと渡してくれた夫に感謝したいです。あの時雑誌の募集告知を偶然目にしたおかげで『幽』怪談文学賞に出合えたのですから。

(いしかわ・みどり)

受賞作『常夜』(『天竺』より改題)

学芸員である「私」は、疎遠になっていた恩師と喜寿の祝いのため、再会した。思いのほか話がはずんだ末、学芸員となってからの不思議な体験をまとめるように勧められる。それは、恩師の影を払うように生きる「私」の架空の物語のようだった。

第8回『幽』怪談文学賞 短編部門

体験談、伝聞、創作を問わず「怪異」をテーマとする文芸作品を募集。短編部門大賞受賞者には賞金20万円が贈られる。選考委員は岩井志麻子、京極夏彦、高橋葉介、南條竹則、東雅夫。

受賞者:沙木とも子

選んで頂けた答えを、
これから必死に模索し続ける

さき・ともこ

さき・ともこ

1959年、京都府出身。関西学院大学文学部(西洋史学科)卒業。趣味は読書、古い建物や修道院を巡る旅。好きな作家はマルグリット・ユルスナール、スティーヴン・ミルハウザー、野溝七生子、倉橋由美子。受賞作『そこはかさん』は怪談専門誌『幽』vol.20に掲載された。また書き下ろしをくわえた短編集を5月にメディアファクトリーより発売予定。

小学生の頃、漠然と物語を書く人になりたかった。中学から大学までは本気でマンガ家を目指していた。とはいえ気がちいさいので、読書とマンガに耽溺する傍ら受験勉強にも勤しんだ。進学先に史学科を選んだのは美術も建築も文学もすべて含んでいるからだ。優柔不断な上に欲張りで節操がなかったのである。

結果第一志望には落ち、マンガ家になる夢もあえなく潰えた。以後二十年と少々、不動産やインテリアの業界に身を置いて、話したり測ったり売ったりプランしたりプレゼンしたりという仕事をした。人にも仕事にも恵まれたが、現場で被ったヘルメットは最後までうまく頭に乗らなかった。本はいつどんな時も傍にあったが、仕事以外で文章を書く機会は稀だった。

四十も半ばを過ぎた時分、物語を書きたいと突然思った。三十年ぶりの創作である。三点リーダーも解せぬまま、頭に浮かぶものをPCに打ち込み始めた。なんで書くのか、何をだれに自分は伝えたいのか。首をひねりつつ、ただ言葉を紡いだ。一応書き上げると今度はだれかに読んでほしい、評価してほしいという欲求がむくむく頭をもたげる。思いつきであちこちの賞に投稿したものの、当然ながら箸にも棒にもかからない。此処にいたってようやく作風だとか、ジャンルということに私は思い及ぶのである。そういや自分は魔とか幻とか妖とか不思議の分野が大好きだったではないか。

偶然東雅夫氏の幻妖ブックブログに行きあえたことで『てのひら怪談』なるものの存在を知った。拙い掌編が初めて選評なるものを頂き、活字になった。ほんのすこしだけ、手応えらしきものの感触を知った。

東氏が編集長である雑誌『幽』の怪談文学賞に応募したのは三年前、締切一時間前に書き上げた誤字まみれの長編が佳作を頂いた。一年のブランクを経て昨年、個人的には苦手な短編で、はしなくも同賞の大賞を頂戴することになった。正直、まだ実感がない。なぜ選んで頂けたのかもわからない。その答えを、手探りで、これからも必死に模索し続けることになると思う。精進します。

(さき・ともこ)

受賞作『そこはかさん』

築後百五十年になる我が家には、隅々や暗がりに潜む「そこはかさん」なる存在がいた。幼稚園児の私がそれは何かと曾祖母に問うと、「あるかないかわからんもん」のことだという。ところがどれほど目を凝らしても私にはそれが見えない。そして八年後、祖母の四十九の日に、私がおくどさんで目にしたものは。

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