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賞と顔 2014年7月

第5回 野性時代フロンティア文学賞

広義のエンターテインメント小説を募集。恋愛、ミステリ、冒険、青春、歴史、時代、ファンタジーなど、ジャンルは不問。大賞受賞者には300万円が贈られた。

受賞者:未上夕二

妥協しなかったことが、
受賞につながった

みかみ・ゆうじ

みかみ・ゆうじ

1973年、大阪府生まれ。駒澤大学卒業。好きな作家は宮部みゆき、角田光代、花村萬月、ラズウェル細木。趣味はダイエット。受賞作『心中おサトリ申し上げます』は8月末に刊行予定。

小説のネタはどこに転がっているのかわからない。

詳しくは「小説野性時代」の五月号に載っている選評をご覧いただきたいのだが、応募した作品の中で評価された箇所の一つが料理の描写だ。

「生き物の命を奪って人間は生きているのだ」、と常々考えていて、調理をする場面は特に力をいれたつもりだったので、選評の言葉は震えるほど嬉しかった。

手先が不器用なものだから、結婚するまでは刃物や火を扱う料理を避けて通ってきた。

ところが世の妻というものは、かくも夫の手料理を食べたがるものなのか。請われて渋々とスーパーで買ってきた豚肉を初めて触った時のことはしっかりと憶えている。

パックから取り出した生肉のねっとりとした感触、台所に漂う生臭さ、白いパックに垂れる血のおぞましさ――。

原稿を書いている時に引っ張り出してきたのがその時抱いた嫌悪にも似た感情なのだから、損になる経験は無い。

応募先はフロンティア文学賞と決めていた。なにせ妖怪が出てくる小説だ、過去の受賞作を調べても、ここほど「間口の広い」賞は見つからなかったのだ。

選評を読んで、また角川書店の編集者と打ち合わせをして気づかされたことがある。

小説には書いた者の姿勢が表れ、しかも読み手にしっかりと伝わっている、ということだ。

選評で指摘された「冗長さ」はついいらないことを口走ってしまう自分そのままだし、編集者につっこみを入れられた瑕疵の数々は、自分でも消化できずに逃げてしまったところばかりだった。誤字脱字も多く、返ってきた応募原稿に目を通している今も、嫌な汗が背筋を伝う。

結構な数の欠点があるものの、それでも受賞できたのは、作品のテーマに対する姿勢なのだと思っている。  これに関しては妥協しなかった。表現を何度も練り直し、己に問い続けた。

結果、『狙った』ところをしっかりと評価して頂けたのだからこれほど嬉しいものはない。

どれだけ真剣に小説に向き合うか、受賞の道は他にはない。

心底そう思うのだ。

(みかみ・ゆうじ)

受賞作『心中おサトリ申し上げます』

口八丁で詐欺まがいの商品を売っていた主人公はある日突然、奇妙なポエムを連発する口を抱えるようになる。失意のうちに登った大山で遭難しかけたところ、妖怪サトリに助けられる。驚いたことにサトリは言葉を取り戻す術を知っているという。はたしてその方法とは?サトリとの共同生活を通して変わっていく主人公の成長物語。

第13回 女による女のためのR-18文学賞

女性ならではの感性を生かした小説を募集。応募資格は女性に限る。大賞受賞者には賞金30万円と体脂肪計付きヘルスメーターが贈られる。選考委員は三浦しをん、辻村深月。

受賞者:仲村かずき

自分一人のためではなく、
誰かに読んでもらうことを前提として書いてみたい

なかむら・かずき

なかむら・かずき

1984年、千葉県生まれ。趣味は読書。好きな作家は江戸川乱歩。受賞作『とべない蝶々』は新潮社より刊行予定。

紆余曲折を経て、今回賞をいただきました。誰にも見せずに書いていた文章があれよあれよという間に編集者の方々の目に触れ、webに掲載されたことで不特定多数の方の目に触れ、選考委員の先生方の目に触れる。起伏もなく過ぎ去った数年に比べると、怒涛の数ヶ月でした。

賞をいただいてから、著者校正という作業に初めて関わりました。言葉への小さなつまずきや、話の疑問点。様々な箇所にきちんきちんと指摘が入ります。ゲラを手にしてようやく、選考を通してしっかりと読んでくれた人たちがいるのだと実感しました。それまでは現実感が薄く、webの中の遠い世界の出来事のように感じていたのです。

まだ十代だった頃、私の夢は作家になることでした。本を読むことが大好きな人間の少なくとも半数は、小説を書いてみようと思い立ったことがあるのではないか、と思います。公募ガイドを手にしたこともありました。文章を書きたいというよりは、作家になりたい。まず作家という職業ありきで夢を見ていたような気がします。

根拠のない自信は崩壊するのもあっという間でした。見ていたはずの夢から抜け出し、作家という職業への過剰な思い入れを捨ててはじめて、書くことの楽しさに気が付きました。物語を作るって楽しいんだなあと、二十代に入ってようやく知った有様です。

人より飲み込みが遅く、気が付くのも遅く、要領が悪い私は、何年も経てようやく賞に応募しました。いま、現実をするめのように噛みしめて、やっと誰かに読んでもらえることの有難さや喜びや少しの怖さを知ったところです。

ここから道がどう分岐するのかはまだ見えません。要領の悪さは情けなくもたぶんずっとこのまんまです。けれどせっかく賞をいただけたのだから、今度は自分一人のためではなく、誰かに読んでもらうことを前提として書いてみたい。今回の受賞はそんなひそやかな希望を持つきっかけになりました。

(なかむら・かずき)

受賞作『とべない蝶々』

友達のいないサツキは、高校で偶然幼馴染と再会する。彼の秘密を共有するなかで、他人と一緒にいることの意味を知っていく。

第31回 福島正実記念SF童話賞

小学校3・4年生から読め高学年でも楽しめる童話を募集。SF、SF的なファンタジー、冒険、ミステリー、ホラー、ナンセンスなどの空想物語で単行本になりうるもの。大賞受賞者には賞金20万円が贈られる。

受賞者:白矢三恵

夢が大きければ大きいほど
たくさんの努力が必要

しらや・みえ

しらや・みえ

1971年、兵庫県生まれ。親和女子大学卒業。主婦。好きな作家は重松清。趣味は空想。受賞作『流れ星☆ぼくらの願いがかなうとき』は岩崎書店から9月に刊行予定。

「さぁ、お風呂に入ろうか」

「いーやーだ」

「どうして?」

「だって、おめめにお水が入るもん」

私のちょっとしたミスがきっかけで、娘は水嫌いになってしまいました。

「そうだ。お風呂の中でアヒルさんと遊ぼう」

「やだ」

「お魚さんもいるよ」

「それでも嫌」

アヒル隊長や泳ぐ魚のおもちゃでも、娘は簡単につれません。

「絶対に嫌!」

かたくなに首を振られたら、残るは最後の手段です。

「今日のお話にはだれが出てくるかなぁ」

「え?」

「ピーチ姫と……」

「入るー!」

娘は私の即席物語が好きでした。

「昔々あるところに○○ちゃんというお姫さまがおりました」

主人公にしてあげると、ご機嫌度はさらにあがります。湯船につかり、目を輝かせる娘。それが私の勘違いの始まりでした。

(私の楽しいお話を、もっとたくさんの子どもたちにも聞かせてあげたい)

そんなことを思ってしまったのです。

『創作童話募集』

という文字を見つければ、せっせと原稿用紙を埋めました。一つの公募に五つの作品を送ったこともあります。

結果はもちろん連敗続き。起承転結もろくに知らなかった私の作品が、選ばれるわけありません。

書いても書いても落選の日々。

あきらめようと思ったことも、逃げ出したいときもありました。

夢を叶えるということは、簡単なことではありません。夢が大きければ大きいほど、たくさんの努力が必要です。

今回、福島正実記念SF童話賞で大賞をいただいた作品の中の「ぼく」。もしかしたら、私自身なのかもしれません。

長い長い月日は流れ、娘は十七歳になりました。今でも私の作品を読んでくれます。キラキラではなく、温かな目をして。

(しらや・みえ)

受賞作『流れ星☆ぼくらの願いがかなうとき』

少年野球で劣等生の主人公。ある日流れ星を見つけてお願いをするのだけれど、その流れ星も空のおちこぼれだった。お互い尊重しながら、願いを叶えていくお話。

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