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賞と顔 2014年8月

第30回太宰治賞

未発表の小説を募集。大賞受賞者には賞金100万円と記念品が贈られる。第30回の選考委員は加藤典洋、荒川洋治、小川洋子、三浦しをん。

受賞者:井鯉こま

太宰で始まり
太宰で受賞

いこい・こま

いこい・こま

1979年、神奈川県生まれ、同県在住。東京外国語大学卒業。受賞作『コンとアンジ』を掲載したムック『太宰治賞2014』が筑摩書房より発売中。

応募のきっかけは、子どもの夜泣きがなくなって自分の時間がもてるようになったことでしょうか。朝晩子どもの相手をしていると、読書もできませんし、それならばと、こっそり空想にふけってみますと、それもすぐに子どもに悟られ、現実に呼び戻されます。悶々とします。その悶々としたエネルギーが、夜中から明け方にかけて、書くことへ向かった、という感じです。そうして初めて作品を書き上げたとき、それがちょうど太宰治賞の締め切りに近かったので、とにかく応募してみました。そのとき一次選考を通過することができたので、これは、三年くらい真面目に取り組めば良い評価をもらえるのではないかと思い、毎日四時間ほど書くようにして、書き上げてはいくつかの新人賞に応募しました。二年目も終わろうかという頃、今回の受賞に至った次第です。

太宰治賞は二度目の応募でしたが、太宰で始まり太宰で受賞、というのはとても嬉しいです。中学生のとき愛読したのが太宰治であったことも嬉しいですし、そのときの全集が筑摩書房であったことも嬉しいですし、とても好きな小説家が太宰治賞出身であったことも嬉しいです。

受賞して変わったことは、自分の作品の批評を聞くことができる、ということでしょうか。自分ひとりで書いて、読み返し、書き直し、また読み返していると、なにがなんだかわからなくなるときがあります。自分以外の人が読んで意見を聞かせてくれればと、よく思いました。受賞作は、主人公が見知らぬ土地を行くのですが、主人公の視点で物語は進むため、読者も限定された世界を読むことになります。けれども、読み進められなくなっては困りますので、そのあたりの情報開示が、作者としては難しかったです。

今後、新たな読者ができる、そういう可能性が開かれたということが、私にとって一番変わったことですし、楽しみなことでもあります。

(いこい・こま)

受賞作『コンとアンジ』

異国を旅する十八歳の娘「コン」は、一緒に旅をしていた兄の彼女とはぐれ、さらに安宿で洗濯娘らしき少女にだまされて無一文になってしまう。その状態から転がり出してたどりついたのは、外国人居留区の怪しげな貿易会社「マソン商会」。オーナーのマソンはコンを小僧と勘違い。そこから、性と年齢を偽る「ぼく」の生活が始まる。

第1回ダ・ヴィンチ「本の物語」大賞

本にまつわる物語(本が重要なアイテムとして登場する/作家が重要な人物として登場する/書店、図書館、出版社など本のある場所が舞台/物語の内に物語があるなどの仕掛けがある。これらのいずれかを満たしたストーリー)を募集。大賞受賞者には100万円が贈られる。

受賞者:藤石波矢

未来のヒントは得てして
過去にある

ふじいし・なみや

ふじいし・なみや

1988年、栃木県生まれ、東京都在住。大正大学文学部、専門学校東京ビジュアルアーツ映画学科卒業。派遣社員。趣味は散歩。受賞作『初恋は坂道の先へ』はKADOKAWAメディアファクトリーより発売中。

ここ数年シナリオコンクールに応募していたのですが「本の物語大賞」の公募を見たとき、直感的に書きたいと思いました。意識したのは直球にしよう、ということ。後半に仕掛けもありますが全体的に王道を意識した物語です。登場人物のまっすぐな言動は書いていて恥ずかしくなるぐらいでした。実際、本になってからは恥ずかしくてあまり読み返せません。

幸いにも読んでくれた人たちからキャラクターが生き生きしていてセリフに共感できる、映像が思い浮かぶ、などの評価をもらえました。そういってもらえて徐々に良い作品が書けたんじゃないか、と自信が湧いてくるので我ながら不思議、というか勝手なものです。

僕の知り合いには面白い人がたくさんいます。弁舌巧みな人、計算もなく皆を笑わせてしまう人、常識外れな独特の考え方を貫く人。さまざまですが、どれも僕にはない個性。その個性たちに触れて感じたこと、楽しさや生じた刺激が作品を書く最大の材料になっています。たぶん一瞬でも出会った人に何かしらの影響を受けて今の自分がいる、書けている作品があるんだと思います。

今回の作品は本を通じて人々が結びつくお話です。「出会い」がどれほど一人の人間に影響を与えるか、意味のあるものになるかということを自分なりに描こうとしました。作中で使用した「未来のヒントは得てして過去にある」という気持ちは常に自分自身の中にあるものです。きれいごとに見える物語かもしれません。けれど実現できるきれいごともあるはずです。

この作品がまさに作中に登場する本のような存在になれるかどうかはわかりません。けれどそのような存在になれるかもしれないチャンスをいただけたことは確か。目標をあきらめずに続けてきてよかったと今は心から思います。

これから、読んでくれた方に指摘される課題や欠点も直していきながら、次回作に向き合っていきます。僕が出会った人たちからもらったもの、借りたものを言葉に変えてこれからも書いていくつもりです。

(ふじいし・なみや)

受賞作『初恋は坂道の先へ』

一冊の本が届いた日、研介の恋人、品子が失踪した。本の贈り主は品子の「忘れられない初恋相手」なのか?研介は行方を気にかけながらも、二人の関係の終わりを予感しどこか冷めた感情で数日を過ごしていた。場面は変わり、中学生のしなこは敬愛する小説家、日向の家に通っていた。日向の孫で不登校の海人は、本をばらばらにする謎の行動をしており、その取っつきにくい性格に初めは馴染めなかったが、徐々に交流を深めていく。

第21回松本清張賞

ジャンルを問わない長編エンターテインメント小説を募集。大賞受賞者には賞金500万円と時計が贈られる。選考委員は石田衣良、北村薫、小池真理子、桜庭一樹、葉室麟。

受賞者:未須本有生

今後は、いろいろな小説に
トライしてみたい

みすもと・ゆうき

みすもと・ゆうき

1963年、長崎県生まれ。東京大学工学部卒業。工業デザイナー。趣味はワイン、園芸、ドライブ、旅行。受賞作『推定脅威』は文藝春秋より刊行予定。

「公募ガイド」を初めて読んだのは、二十年以上前です。

私はメーカーで航空機の設計の仕事をしていましたが、意匠デザインやイラストにも興味がありました。それを知った知人が紹介してくれたのです。

当時は文学とは全く無縁だったので、「文芸」の公募には目も止めませんでした。一方「アート」では、気に入ったコンペを見つけては、いそいそと応募していました。

その後、会社を辞めてフリーランスのデザイナーになりました。十年ほどは堅調だったものの、だんだん仕事が減り、暇を持て余すようになりました。

ちょうどその頃、昔からの友人が、小説を書いて応募していることを知り、にわかにこの分野に興味を覚えました。

「航空機に関する事だったら、何か書けるかも知れない」と思い、メモ書きから始めました。

目標とする文学賞を調べるため、久しぶりに「公募ガイド」も手にとりました。

もともと作文が苦手だったので、いきなり長編小説というのは無謀な挑戦でした。案の定、執筆はスローペースで、一応最後までたどりついた後も、何度も書き直さなければならず、完成までに約二年かかりました。

松本清張賞に応募した一番の理由は、ジャンルと規定枚数です。原稿はほぼ六百枚でした。

もちろん「どうせ応募するなら、賞金額や影響力が大きいメジャーな賞」というのもありました。資産も知名度もない身としては、夢も見たくなります。

受賞が決まった時は、「嬉しい」と「ピンとこない」が入り混じった不思議な感覚でした。

また、小説を書いていることは、妻と友人の二人しか知りませんでしたから、受賞を伝えた時のまわりの反応は「君が小説を書いたとは信じられない」というのが多数でした。

受賞後、出版に向けての具体的な作業を行う中で、なんとなく作家への道を歩むのかなぁ、という気がしています。

今後は、いろいろな小説にトライしてみたいですが、そのためにも、努めて文章を書くようにしなければなりませんね。

(みすもと・ゆうき)

受賞作『推定脅威』

スクランブル飛行中の自衛隊機が墜落した。当初、単純な事故と判断されたが、違和感を覚えた技術者はその背景を探る。関係者の協力を得ながら調査を進めるうち、隠された謎が徐々に明らかになっていく。

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