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賞と顔 2014年9月

第34回横溝正史ミステリ大賞

エンタテインメントの魅力あふれる力強いミステリ小説を募集。大賞受賞者には賞金400万円と金田一耕助像が贈られる。

受賞者:藤崎 翔

「面白い物を作って
お金を儲ける」チャンス

ふじさき・しょう

ふじさき・しょう

1985年、茨城県生まれ。茨城県立龍ケ崎第一高等学校卒業。好きな作家、芸人は筒井康隆、東野圭吾、前田司郎、爆笑問題、バカリズム。受賞作『神様の裏の顔』(『神様のもう一つの顔』より改題)は角川書店より9月26日に刊行される予定。

僕、藤崎翔は、4年前まで「セーフティ番頭」というコンビで、お笑い芸人をやっていました。

と、4行読んだだけで多くの方が勘付かれたと思いますが、その通り。僕は芸人としては一切売れませんでした。唯一出たTV番組が、NHKの「爆笑オンエアバトル」だったのですが、観客の投票で上位に入った芸人のネタだけがオンエアされるこの番組に5回ほど挑戦し、オンエアを勝ち取ったのは1回きり。残りは「悔しいけど次こそは頑張ります」的な、10秒弱の敗者コメントが番組の最後に放送されただけでした。最終的には、ネタよりも敗者コメントを上手に言う技術ばかりが向上している有り様でした。

その後芸人を辞めた僕ですが、「面白い物を作ってお金を儲けたい」という欲望は捨てきれず、アルバイトの傍ら文学賞に応募するようになりました。落選続きの中、短編ミステリーの賞で2次予選を通過できたことに味をしめ、次は長編ミステリーだと意気込み、去年の夏から今回の作品を書き始めまし た。秋には書き上がるだろうと、11月締切の横溝正史ミステリ大賞に狙いを定めたのですが、完成したのは締切直前。ほぼ推敲もせず応募してしまい、どうせ予選敗退だろうと諦めていたところに、予選通過、最終候補選出の連絡を頂いたのでした。

しかし、長年の負け癖が染みついていた僕は、どうせ受賞はないだろうと思い込み、最終選考落選を伝える電話に対する、上手な敗者コメントばかりを考えていました。ところが、かかってきたのは「藤崎さんが大賞です」という想定外のお電話。僕は「たたたっ、大賞ですか?」と、無様に慌てたコメントしか返せませんでした。

勝者コメントは、まったく言い慣れていなかったのです。

とはいえ、念願の「面白い物を作ってお金を儲ける」チャンスを頂けたので、今後は笑いあり驚きありの小説を全力で書きまくりつつ、来るべき時に備え、余裕あふれる勝者コメントの練習もしておこうと思います。

「僕が今年のノーベル文学賞? ははは、そろそろ獲るんじゃないかと思ってましたよ」

・・・う?ん、これは必要ないか。

(ふじさき・しょう)

受賞作『神様の裏の顔』

神様のように慕われていた元中学校長の通夜で、遺族と参列者たちが故人との記憶を振り返っている。しかし、故人には生前、数々の凶悪事件に関与していたという恐ろしい「裏の顔」があった様子で、5人の参列者がそのことに気づいてしまう。

第60回江戸川乱歩賞

広い意味の推理小説を募集。受賞作は講談社から刊行され、フジテレビによって映像化される。大賞受賞者には賞金1000万円と江戸川乱歩像が贈られる。

受賞者:下村敦史

常に新しい物語に
「挑戦」し続けたい

しもむら・あつし

しもむら・あつし

1981年、京都府生まれ、同県在住。好きな作家は、真保裕一、横山秀夫、高野和明、 坂剛、今野敏、東野圭吾。趣味はサッカー観戦、読書、ドラマ・映画鑑賞。受賞作『闇に香る嘘(『無縁の常闇に嘘は香る』より改題)は講談社より好評発売中。

このたび、5度目の最終候補の末に第60回江戸川乱歩賞をいただきました。

思い返せば、乱歩賞に挑戦する前は数々の賞に応募し、1次落選を繰り返していました。20作は応募したと思います。

初めて1次通過したのが当時初挑戦だった乱歩賞です。1次通過者の人数が多かったのも一因だと思いますが、今となっては、何か縁があったのだなあ、と感じています。

その後は、「乱歩賞という偉大な賞に応募するからには、今までのように下調べもせず想像だけで簡単に書けてしまう物語を書いていてはいけない」「自分にとって最も難しい物に挑戦しよう」と考え、難易度が高い海外モノを書きはじめました。150%の力を費やしても足りないほど難しい舞台や題材に挑戦する方が成長できるし、良い作品になる、と考えたからです。

自分の知っている世界しか書けないと、デビューしてから行き詰まると考えていましたので、見知らぬ海外を舞台にして良い作品が書けるようになれば、日本を舞台にしたどんな物語でも書けるようになるはず、との思いもありました。

幸運にもその海外モノで4度、最終候補に残りました。受賞には至りませんでしたが、同じ場所で足踏みしてしまっているとは考えませんでした。新作を書くたび、自分なりに上達させたい部分を意識してきましたので、同じ「最終候補止まり」でも、文章、人物、構成など、1作ごとに様々な部分で成長できていたと実感しています。それが実り、本年度の『闇に香る嘘』の受賞に繋がったのだと思います。

海外を舞台にするかぎり受賞は難しい、との助言を選評でいただき、舞台を日本に戻して2度目の挑戦での受賞です。

過去の選評で褒めていただいた「映像的な描写」が一切使えない物語――全盲の視覚障害者の一人称――にあえて挑戦することで、また成長できると考え、チャレンジャー精神で書いたことが良い結果に結びつきました。今後も、常に新しい物語に「挑戦」し続けたいと思います。

(しもむら・あつし)

受賞作『闇に香る嘘』

村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか? 全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う――。

第15回小学館文庫小説賞

ストーリー性豊かなエンターテインメント小説を募集。大賞受賞者には賞金100万円が贈られ、受賞作は書籍刊行される。

受賞者:風カオル

デビューできたのは
自分の才能を疑ったこと

かぜ・かおる

かぜ・かおる

1981年、大分県生まれ、同県在住。別府短期大学大分キャンパス部生活文化科卒業後、市立図書館の臨時職員として勤務。大分県臨時職員、古書店アルバイトを経て、現在は百円ショップのパートタイムの仕事に就きながら、執筆活動に励んでいる。受賞作『ハガキ職人カタギ!』は小学館より11月頃刊行予定。

幼い頃から夢は漫画家になることでした。

自分はどうやら絵が下手らしいと気づいたのが小学校高学年の時。図工の時間にスニーカーの絵を描き、後日、クラス全員分の絵が掲示板に張り出されました。眺めていて「なんかしょぼくれたスニーカーがあるなあ」と思ったら自分の絵でした。初めて客観的に自分の絵を見た瞬間でした。

それでも諦めきれずに漫画を描き続け、読み漁り、結果、嗜好がどんどんマニアックになっていきました。いわゆる「売れている漫画」の面白さが今一つ分からなかったのです。

高校生になり、京極夏彦先生の『魍魎の匣』を読んだことで小説の面白さに開眼。その後は漫画を描く傍らで小説を書き、初めて書いた長編小説を小学館パレット文庫に応募したところ、最終選考まで残りました。そのことが自信に繋がり、何度か漫画賞に応募したものの、どれも佳作にすら引っ掛からず……。プロでやっていくには嗜好が偏っていて、技量もない。趣味で描くのが一番なのだと腹をくくりました。

それでも誰かに私の作った物語を読んでほしい。ならば、私が一番得意な方法はなんだろうと考えた時、やはり小説だと思い至りました。私はのめり込むと自分の短所が見えなくなるので、小説との距離感がちょうど良かったのです。

公募ガイドの読者の方がお知りになりたいところは「どうすればデビューできるか」でしょう。私自身、よくデビューできたものだと慄いておりますが……それは、自分の才能を疑うことだと思います。自信を持つのは大事ですが、過信は危険です。才能のなさを認めるのは恐ろしい けれど、認めるとそれまでと違った視点が手に入ります。幾度かの漫画投稿で痛い目を見たので間違いありません。

今後はバカバカしくて楽しい小説を書いていきたいと思っています。世の中には、もっとバカバカしい小説がいっぱいあってもいいのではないかと常々思っており、何より私がそんな小説を読みたいのです。

(かぜ・かおる)

受賞作『ハガキ職人カタギ!』

主人公は広島県に住む高校二年生。学校では目立たないが、実は隠れた笑いの才能があり、人気深夜ラジオ番組のハガキ職人として活躍している。ある日、オフラインで他のハガキ職人と交流したことにより、徐々にラジオの世界に煩わしさを感じ始める。

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