現代アーティスト公募プログラム
ART IN THE OFFICE 2014
マネックス証券本社(東京)のプレスルームの壁に展示する平面作品案を募集。受賞者には賞金30万円が贈られ、制作費10万円が支給されるほか、現代アートの学校MAD2014「アーティスト」コース(後期) の無料受講資格が与えられる。
- 主催マネックス証券
受賞者:川内理香子さん
かわうち・りかこ
1990年、東京都生まれ。多摩美術大学在学中。第9回shiseido art egg を受賞。2015年1月に資生堂ギャラリーで個展を開催予定のほか、五美大展2015(国立新美術館)および卒業制作展(多摩美術大学)に参加予定。
プレスルームで絵を描くという
能動的なプログラム
今回の展示のテーマは「鮨」である。
受賞作『鮨/寿司/すし/sushi』
鮨は、酢飯と刺身という非常にシンプルな組み合わせであるにもかかわらず、様々な色彩や形、食感や味を持つ多様性のある食べ物だと思っている。また、お金というのも、価値があるということは変わらないが、その価値は時代や場所で変動していくものだと思う。その変動に合わせ、その時代でさまざまな変革を遂げていくであろうマネックス証券と、どこまでも横に広がりを見せる鮨が、重なり合う部分があるのではないかと考えて制作した。
第1回 暮らしの小説大賞
「暮らし」と「小説」をつなぐ新しい文学賞として「暮らしの小説大賞」を設立、小説を募集。受賞作品は単行本として出版し、規定の印税が支給される。
- 主催産業編集センター出版部
受賞者:髙森美由紀さん
書いて送る行為に
ほとんど中毒になって
たかもり・みゆき
1980年、青森県出身。八戸西高等学校卒業。好きな作家は、群ようこ、さくらももこ、東海林さだお。ちゅうでん児童文学賞大賞の受賞作『いっしょにアんべ!』(フレーベル館)を2月に出版。今回の受賞作『ジャパン・ディグニティ』(産業編集センター)は10月17日に刊行された。
私の書くものは、小説とか作品とかそういったご大層なものじゃありません。妄想が肥大しただけの「お話」です。
私は計画性のない人間です。書き始めるに当たって、設計図は書けません。浮かんだことをそのまま書いて後から入れ替えたり調整したりしています。とんでもない矛盾を発見して卒倒しそうになるのは毎回なのに、学ぶということもありません。
暮らしをテーマにした小説を募集しているのを知り、津軽塗を書いたのは地元の人の生活に溶け込んでいて普段あまり漆器の存在を意識していないように思えたからです。
特別なことではないこと。それが暮らしだと思いました。
国語が苦手で、テストの問題文すら何を言っているのかとんとわからなかった私が、お話を書き始めたのは偶然、図書館に派遣されてからです。
初めは原稿用紙5枚の短いお話でした。送っても送ってもボタボタ落ちました。それでも構いませんでした。書いて送る行為にほとんど中毒になっていました。
書くようになってから、偶然や些細な出来事と見過ごしてしまいそうなこと、また見過ごしてきたことにも必ず意味はあり、見たこと、聞いたこと、嗅いだこと、味わったこと、思ったことの一つ一つが未来に必要なものであると考えるようになりました。
『ジャパン・ディグニティ』はヘナチョコ津軽塗職人の親子が地味ながらも、世間やひいては世界に挑戦する話なのですが、職人の話だからといって難しいことは書いておりません。というか、私には難しいことは書けません。彼らの日々の暮らしぶりをじわじわとした笑いとともに綴っています。うだつのあがらない彼らの奮闘ぶりに、読んでくださる方が少しでも気が楽になって、こういう人でも何とか生きていられるなら、自分もまだまだ大丈夫だろうと勇気づけられればいいな、と祈って書きました。
これからも市井の人々のぼちぼちな暮らしぶりをちょっとコミカルに書いていきたいです。
(たかもり・みゆき)
受賞作『ジャパン・ディグニティ』
22歳の美也子は津軽塗職人の父と、デイトレーダーのオネエの弟との三人暮らし。スーパーのレジ係の傍ら、家業である津軽塗を手伝っていたが、元来の内向的な性格と極度の人見知りもありスーパーを辞める。しばらくの間、充実した無職ライフを謳歌していたが、津軽塗の世界に本格的に入ることを決めた。うだつのあがらない漆職人の父娘(おやこ)の挑戦を、ひたむきにコミカルに描いた青森発「もの作り小説」。
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