公募ガイド

  • お問い合わせ 03-5312-1600
  • お問い合わせ 03-5312-1600
TOPページ > 受賞のコトバ > 2015年 > 2015年8月

受賞のコトバ 2015年8月

第14 回  女による女のためのR‐18文学賞

女性ならではの感性を生かした小説を募集。大賞受賞者には賞金30万円と体脂肪計付きヘルスメーターが贈られる。選考委員は三浦しをん、辻村深月。

受賞者:秋吉敦貴

あきよし・あつき

1979年、茨城県生まれ。 好きな作家は太宰治、アリス・マンロー、古川日出男、三浦しをん。趣味は料理、いい加減な園芸、水のきれいな場所に行くこと。受賞作『明け方の家』(『ルーさん』より改題)はタレントの友近さんが選ぶ友近賞も受賞。受賞作は新潮社「yom yom」vol.36(5月1日発売)に掲載された。

小説を書く限り、どんな経験でも無駄になることはない
 この度「女による女のためのR‐18文学賞」の大賞と友近賞を頂いた。
 そのことで、時間の流れの不思議さを思う。
 子どもの頃から小説を書いてはいた。だが、文字通り書いていただけだ。誰にも読ませなかったし、何せ、小説を書く自分というものを恥じていた。書いて感情を発散させていないと、実生活にしわ寄せがいき、急に怒り出したり、変に悲観的になったりして周りに迷惑をかける。書き続けなければいけなかった。そんな、小説を書くことでどうにかまともな日々が送れるという、何かが欠けているとしか思えない自分を人目に晒す勇気はなかった。そういった創作は自分と未分化で、ますます人に読ませるなんて考えられなかった。
 だが人は、生きてさえいれば等しく三十代になるのだ。
 自分のもの、他人のもの、あらゆる感情を過敏に抱え込んだ少女も、やがておばさんになるのだ。白も黒もない、そのあわいの妙、味わいというのも、時間の経過や経験とともに、許せるようになるのだ。
 そして私はようやく去年、恥を忍んで投稿ができるようになった。
 そんな状態なので、当然、賞を取る、などと大それたことは考えていなかった。最終選考に残った時でさえ、よもやとすらも思わなかった。
 思いがけない慶事がやってきた時、素直に喜べる人間と、もう一方、喜ぶどころか、その後に起こる種々に想像を巡らして不安になるという、損な性格の人間がいる。私は完全に後者だ。人生の新しい局面では、どんなリスクがあるのかばかり考える。
 だが、腹を括らなくてはならない。どうせ書かずにはいられないのだ。そして、誰にも読まれない文章を書いていた自分に、誰かが、書いてもいいよ、と言ってくれるのだ。やるしかないだろう。
 などと、身の丈に合わない覚悟をし、超絶後ろ向きな人間が、あっぷあっぷしながら新人生活を送っている姿を、子どもの私がどこかで笑いながら見ていればいいと思う。小説を書く限り、たぶんどんな経験でも結局無駄になることはないよ、と今なら言ってやれる。
 年を取るのはなかなかにいい。

受賞作『明け方の家』

「私」は道端で瀕死の猫を拾った。それがきっかけで、富士子さんという老女の商う下宿に転がり込む。そこにはもう一人、ルーさんと呼ばれる不思議な中年女性が住んでいた。女三人と猫の普通の暮らしにいろいろな影が忍び寄る。

第22 回 松本清張賞

ジャンルを問わない長編エンターテインメント小説を募集。受賞者には500万円と時計が贈られる。第22回の選考委員は石田衣良、角田光代、北村薫、桜庭一樹、葉室麟

受賞者:額賀 澪

ぬかが・みお

1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。広告代理店勤務。好きな作家は重松清、はやみねかおる。趣味は駅伝観戦、廃墟鑑賞、温泉。受賞作『屋上のウインドノーツ』(『ウインドノーツ』より改題)が文藝春秋より6月26日に発売されたばかり。また、第16回小学館文庫小説賞を受賞した『ヒトリコ』(小学館)も発売中。

扉の向こう側へ。
 母校、日本大学芸術学部の図書館や資料室には、必ず「公募ガイド」がありました。受賞者として掲載され、それが母校に置かれていると思うと、不思議な気分です。
 漠然と小説家という職業に憧れ、そのための勉強がしたいと大学へ進学した私がまず知ったことは、世の中には文章の上手い人が結構いて、面白いことを考える人が結構いて、要するに自分は平々凡々な存在であるということでした。
 文学賞に応募してもなかなか選考を通過できず、いいところまでいっても一番にはなれない。二番とか、佳作とか、「惜しかったね」という言葉と縁の深い大学生活を送っていました。しかし同時にそれは、「自分」と「作家」の間に、どれくらいの距離があって、それを埋めるためにはどうすればいいのか、何が必要なのかを粛々と教えてくれていたように思います。
 今年の三月、全く同じ日に、松本清張賞と小学館文庫小説賞の最終選考に残っているという一報をいただきました。その日のことは未だによく覚えています。長く上り続けていた階段の先にやっと扉が見えて、その前に立ったのだと。
 そして幸運にも二つの賞をいただき、二つのデビュー作を刊行することができました。重い扉をなんとか開き、隙間から体を滑り込ませることができたようです。もちろんその先にも果てしない階段が待ち構えているわけですが。
 恐らく、松本清張賞と聞いて多くの人が思い浮かべる物語は、『屋上のウインドノーツ』とは似ても似つかない内容かと思います。私も長くワナビーでありましたので、松本清張賞がどういう賞なのかは、理解しているつもりです。そういった意味で『屋上のウインドノーツ』は、発売されたその日からいろいろな宿題を背負っているのかもしれません。
『屋上のウインドノーツ』と『ヒトリコ』は、作家・額賀澪の最初の顔となる二冊です。普通なら一冊であるデビュー作が二冊あることは、非常に心強いことです。これから一緒に、長く長くこの世界を歩んでいきたいです。

受賞作『屋上のウインドノーツ』

引っ込み思案の少女・給前志音は高校入学をきっかけに吹奏楽部に入部。ワケありの部長・日向寺大志と共に、東日本大会を目指した練習の日々が始まる。

PAGE TOP

PAGE TOP