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受賞のコトバ 2015年10月

第7回 角川春樹小説賞

未発表の長編小説を募集。ミステリー、時代小説、ホラー、ファンタジー、SFなどエンターテインメント全般の作品を。選考委員は北方謙三、今野敏、角川春樹。受賞者には賞金100万円が贈られる。

受賞者:櫻部由美子

さくらべ・ゆみこ

大阪府大阪市生まれ。銀行員、会社員、 医療関係の職業などを経て、第7回角川春樹小説賞を受賞。受賞作『シンデレラの告白』(『シンデレラ異聞 小さなガラスの靴』より改題)は角川春樹事務所より9月末に発売予定。

かたじけない気持ちを
忘れず書き続けたい
「最終選考に残りました」
 思いがけない知らせに、私は自宅電話の前でへたり込んでいました。震える足で這いずるように仏間まで辿り着き、頬笑む母の顔を見た途端、涙がころころ転がり落ちました。
 かつて私は本を読むのが好きな子供でした。両親に買って貰ったお気に入りの本を、煮しめ色の手垢がつくまで読み倒し、いつか自分も本を書く人になるのだと、ふんわり夢み ていました。
 しかし、お気楽な文学少女にも、夢と現実の違いを見せつけられる時は来ます。
(世間には文才に恵まれた人々がゴマンといるのだ……)
 そんな現実の海で、銀行員を皮切りに、印刷会社に勤めたり、医療関連の職に就いたり、実に定まらない人生を三十年以上も漂いました。
 やがて両親も歳をとり、先に寝たきりとなっていた父が亡くなりました。前後して大病を患った母の介護のために職を辞した私でしたが、ここで思いがけず子供の頃の夢と向き 合う時間を得ました。
(今なら書けるぞ)
 そう言って誰かが背中を押してくれた気がしました。
 結果、仕上がったのは外国の童話を下敷きにしたミステリー仕立ての小説です。
 日本人が中世ヨーロッパを舞台にした話など書く必要はないのかもしれません。洋の東西を問わず、各時代を生きる人々の生活や喜怒哀楽をリアルに描いてみたいという思いか ら、大人のおとぎ話として大真面目に書き綴りましたが、果たしてそれが一般に受け入れられるのか、全く自信がありませんでした。
 文学賞の応募要項と積み上げた原稿を何度も見比べ、郵便局までの道を無駄に往復した上での投稿でした。そんな混迷の果てに、拙作『シンデレラの告白』は、角川春樹小説賞 を頂くこととなりました。
 母の遺影の前で流した涙は、すでに半世紀も生きてきた私が、初めて流したうれし涙です。
 このかたじけない気持ちを決して忘れず、書き続けることが出来れば幸いです。おとぎ話が現実を越える、一瞬の奇跡を信じて――。

受賞作『シンデレラの告白』

各地で魔女裁判が行われた15世紀末。大都市ルテシアではシンデレラを名乗る美女が社交界を騒がせ、時を同じくして貴族たちの不審死が相次ぐ――。ガラスの靴のゆくえをめぐる、精緻で心温まるファンタジックミステリー。

第1回 ブックショート アワード

「ブックショート」は、おとぎ話や昔話、民話、小説などをもとに創作した短編小説をWEBで公募し、大賞作品をショートフィルム化す
るプロジェクト。受賞者には賞金100万円が贈られる。

受賞者:結城紫雄

ゆうき・しおん

1987年、福岡県生まれ。東京都在住。会社員。福岡大学附属大濠高等学校、法政大学卒業。現在はインディー雑誌『恋と童貞』編集部員。2013年より超短篇小説レーベル『nanovel』にて連載中。右投両打。影響を受けた作家は、椎名誠、綿矢りさ。

物語で使われる言葉は
先人から受け継いできたもの
 二次創作がテーマの文学賞「ブックショートアワード」。今回、幸運にも第1回大賞を受賞することができた。私が応募した第1期の応募数は約100作品で、「これワンチャンあるべ」と甘く考えていたのだが、最終的には2000以上の作品が集まり、大賞の報せを聞いたときは変な汗が止まらなくなった。
 本賞へのエントリー作品(優秀作品はウェブで公開中だ)を読むと、参加者の多様性にまず目を引かれるだろう。学生、主婦、会社員から、脚本家や作詞家、デザイナー、さらに、声優、映像作家に至るまで、多彩な顔ぶれが並んでいる。「小説を書く」「物語をつくる」という行為が(職業作家などの)選ばれた人間のみに与えられた特殊技能では決してなく、人間の普遍の営みであるということに気づかされるはずだ。
 さて、「習う」ことは「倣う」という行為から始まり、「学ぶ」という言葉は「真似る」とよく似ている。本賞では作品のコンセプトやテーマのみならず、必要であればキャラクターや舞台背景を先行作品から拝借することも許されているため、相対的に「オリジナル」な部分が際立つという特性がある。しかしそもそも、純度100パーセントのオリジナル言語で書かれた小説など存在しないのではないか。なぜなら、物語で使われる言葉はその全てが先人から受け継いできたものだからだ。とするならば、スピンオフやオマージュ、パスティーシュに限らず、今日生まれる作品は全て二次創作だとさえ言えるのかもしれない。オリジナルとはゼロから1を作り出す行為ではなく、偉大な先人からの継承である、ということに本賞受賞を通して気づかされた。
 ブックショートアワードは映像化を前提として選考されるため、小説としての魅力に加えて、映像化という観点からも評価されることは想像に難くない。先ほど応募者の多様な顔ぶれについて述べたが、作家を志すものとしては、他ジャンルのクリエイターに「小説」で負けるわけにはいかないという意地もある。第2回となる今年度は防衛王者として、まだ見ぬ新鋭との異種格闘マッチを存分に楽しみたい。

受賞作『HANA』(原作は『鼻』芥川龍之介)

『HANA』は、芥川龍之介の『鼻』を女子高を舞台に大胆に書き換えた作品です。『鼻』の主人公である僧侶は、大きな鼻によって傷つけられる自尊心のために苦しんでいましたが、女子高生のハナにとってのそれは小さな胸。10代の女性を通して、老若男女が持つ人間の繊細な自尊心を鮮やかに描き出していたことが評価されました。

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