ふかざわ・うしお
1966 年、東京都生まれ。上智大学文学部卒業。日本語講師。趣味はヨガ、旅と食べ歩き。好きな写真家は岩合光昭、作家は小池真理子、江國香織、吉田修一。受賞作『金江のおばさん』は新潮社より来年初め刊行予定。

第11回女による女のためのR-18文学賞

新潮社では、女性ならではの感性を生かした小説を募集。応募資格は女性に限る。大賞受賞者には賞金30万円と体脂肪計付きヘルスメーターが贈られる。選考委員は三浦しをん、辻村深月。

深沢潮さん

小説を書くことに出会えて幸せ

 電話で大賞受賞の知らせを聞いても、まったく実感が湧きませんでした。受賞作を『yom yom』に掲載することになり作業を進めていくなかで、だんだん現実のことと認識してきたような感じです。しかし、まさか大賞をいただけるとは思っていなかったので、いまだに「本当だろうか、朝起きたら冗談だったと言われないだろうか」と思う時があります。
 受賞後もとくに変化があるわけでもありません。ごく普通に日常生活を送り、小説を書いています。
 執筆のスタイルですが、早朝に細々とした雑事をこなし、おもに午前中にパソコンに向かって書いています。そして、午後は日本語講師の仕事やその他の用事を入れ、夜にもまた執筆します。
 小説を書いて5年目になりますが、これまでどんな作品も長短問わず途中で止めたことはなく、たとえ「つまらないな」と思っても、必ず「了」の文字を記してきました。そうしないと気がすまない、ムズムズしてしまうからです。これは読書にも言えることで、読み始めた本は眠くなってもページがなかなか進まなくても、意地でも読み終えてきました。そういう性格なので、今後も変わらないでしょう。
 大賞を受賞し、発表の機会を与えていただけたことで、これからはさらに意欲的に作品を作って行きたいです。温めているものがいくつかありますので、丁寧に物語を紡いでいければと思います。閉じた世界、群像劇、トンデモな人々の生態、染みる愛の話などなど。湧いてくるエッセンスをうまくブレンドして、読み手に届き、感じてもらえるものを書きたいです。
 小説を書くことに出会えたことは、本当に幸せです。
 アイデアをひねり出すのに苦しむことはありますが、基本的に書くことは楽しいです。閉じられた宇宙である私の脳内から開かれた文字の世界に登場人物たちが躍り出て心地よく生きていけるように、努力と研鑽を重ね、私自身がつまりのないパイプでありたいと思っています。(ふかざわ・うしお)
受賞作

『金江(かなえ)のおばさん』

金江福は、30 年前から在日韓国朝鮮人同士の縁を繋ぐお見合いおばさんを生業として報酬を得ている。 辣腕で有名だが、このところ見合いの成功率が下がっていた。そんなある日、美しくキャリアもある美姫の初の見合いを斡旋する。日本人の恋人に未練のある美姫は乗り気ではない。それでも福は熱心に美姫を説得するのだが……。

やました・あゆみ
1962 年、東京都生まれ。産能短期大学卒業。趣味は読書、映画・古典落語・歌舞伎・宝塚歌劇鑑賞。大の猫好き。好きな作家は松本清張、藤沢周平、山田太一、横山秀夫、向田邦子、北原亞以子、山本文緒、など多数。

第10回北区内田康夫ミステリー文学賞

ミステリーの短編小説を募集。北区の地名・人物・歴史などを入れ込んだ作品を歓迎。大賞受賞者には賞金100万円が贈られる。選考委員は内田康夫ほか。

山下歩さん

書きたいテーマで完成度を高めた

 小説を書き始めたのは四十六歳からです。市民サークルに入って二作目の作品が小さな地方文学賞の佳作に入選して、単純なもので、気を良くしてその気になってしまいました。
 翌年に再度応募して、文学賞受賞となりましたが、そのあたりから限界を感じ始めました。書き始めたきっかけは自分が書きたいテーマが あったからですが、自分のために書くことと、その先の読んで下さる方のために書くことの隔たり、ですね。
 体調を崩したのを機に、そのサークルは一年半で退会し、半年ほど全く書けずに療養した後に、山村正夫記念小説講座に入会しました。この教室は基本的にはエンターテイメント作家養成講座なので、良くも悪くも「純文学系」と仲間から評されていた自分には不向きかとも思いましたが、独りよがりで頭でっかちの作品から脱したい気持ちが勝りました。
 受賞した『凶音窟』は入会してちょうど一年後に応募した作品で、初めて書いたミステリーです。創作のきっかけは、ご近所に住む女性の姿をお見かけしなくなったことと、私が暮らす集合住宅で、時折どこの部屋かわからないのですが工具を使用する音が聴こえることが頭の中で結びついたことでした。山村教室の生徒なのだから一度はミステリーを書いてみようと思ったものの、予想以上に難しく、教室での講評も厳しいものでした。せめて私の最も書きたいテーマ「家族」のドラマとしての完成度を高めようと書き直して応募したところ、全くの予想外で大賞受賞となり大変驚きました。しかし、やはりミステリーの部分では問題ありとの評価を受け、審査員の指摘箇所の書き直しを条件の受賞でした。
 授賞式にいただいた内田康夫先生のデビュー作『死者の木霊』を拝読して、新人とは到底思えない質の高さに唸らされ、初めて浅見光彦の作品を読んだ時以上の驚きを覚えました。そんな内田先生のお名前を冠した賞を受賞するなど恐れ多いことだと猛省しました。これからは、この受賞に恥じない作品を書くよう心掛けていきたいと思っています。(やました・あゆみ)

受賞作

『凶音窟(きょうおんくつ)』

女が原因で妻が実家に帰って半年、マンションにひとり残された武居の耳に、ある晩耳障りな音が聴こえてくる。その音は幼少期の母との不快な思い出に繋がるが、マンションのどの部屋からの音なのか特定できない。自分の心の傷にこだわり、妻に辛くあたってきた武居が知った、その「音源」とは……。               
              

マヒル
1980 年、岡山県生まれ。岡山県立岡山南高等学校家政科卒業。専業主婦。趣味は妄想、執筆、読書、ニコニコ動画鑑賞。好きな作家・アーティストは村上春樹、舞城王太郎、羽海野チカ、鬼塚ちひろ、THE BACK HORN。受賞作『ソース』は7 月25 日にスターツ出版より刊行予定。

オトナ女子が本当に読みたい小説大賞

大人の女性に向けた小説サイト「Berry's Cafe」で閲覧できる小説を募集。大賞受賞者には賞金50万円が贈られ、スターツ出版より単行本が出版される。審査員は湊かなえ ほか。

マヒルさん

“自分のため”から、“読者のため”に小説を書いた

 小学校に上がるまで文字が読めなかった私は、絵本に自分が考えた物語を勝手につけて空想するのが大好きでした。それが、歳を重ねて色々な娯楽を知っても変わらず、ついには趣味に。頭の中にある物語の世界で自分ではない人物になっていれば、現実での辛さや嫌なことを忘れられたのです。しかし、私はそんな物語を人に語ったり形にしようとは思ってもいませんでした。
 今回、賞をいただいた『ソース』は初めて書いた小説です。執筆当時、精神的に少し疲弊していた私は、この小説を遺書のような気持ちで書きました。消えてしまう前に、ひとつぐらいなにかを残そう、そんな思いで書きはじめたのです。誰かに読ませるつもりは毛頭なく、小説の作法も文法もわからずにただ書いていた作品。ですから、そんな小説に読者がついた時は本当に驚きました。感想や批評をくれ、時には指導までしてくれる。ネットの中でそんな仲間ができたことで、〝自分のための小説〞から〝読者のための小説〞と作品を書く動機が変わってきた頃、『ソース』は完結しました。この経験がなければ、今、こうして生きていることも、物語を創作する楽しさを知ることもなかったでしょう。
 創作の楽しさを見出してからは、小説とは呼べないような拙いものでも様々な賞に応募しては落選の繰り返し。もう諦めようか……そう思っていた矢先に、「オトナ女子が本当に読みたい小説大賞」の存在を知りました。大好きな湊かなえさんが審査員ということもあって、尊敬する作家さんに読んでもらえるチャンスがあればと応募をしたのです。
『ソース』が大賞をいただいたことは、未だに信じられません。宝くじが当たったようなもので、私にはまだ賞に見合った実力がないのではと思っています。
 自分の中の物語を、誰かに読んでもらい、感想をもらえるというのは、何物にも代えがたいこと。それを励みに、これからもがんばっていく所存です。(マヒル)

受賞作

『ソース』

美大生の正直(まさなお)は、大学の近くのコンビニでバイトをしている。そこには毎日なぜかソースだけを買っていく美人がいた。正直は彼女に恋心を抱きつつ、密かに“ソースさん”と呼ぶように。そんなある日、深夜の住宅街で女性の悲鳴を聞いた正直が駆けつけると、男に襲われているソースさんの姿が。無我夢中で助けだしたのをきっかけにふたりの距離は縮まるが、彼女は大きな秘密を抱えていて……。

              
              

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