たかはし・まさき
1957年、愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。(公社)日本奇術協会会員。好きな作家は内田康夫、西村京太郎。受賞作は、来年3月舞台上演される。

第11回北区内田康夫ミステリー文学賞

ミステリーの短編小説を募集。北区の地名・人物・歴史などを入れ込んだ作品を歓迎。大賞受賞者には賞金100万円が贈られる。選考委員は内田康夫ほか。

高橋正樹さん

偶然・必然の様々な「ひと・もの・こと」との出会いに感謝

 出来上がった一編の小説は、人生そのものと似ていると思います。もし、あの人と出会っていなかったら、また、あの時列車が間に合っていなければ今の自分は……などということは、誰しも一度は思うことでしょう。
 小説も同じで、その作品が今そこにある形として結晶するまでには、作者には様々な出会いがあります。その中のどれかが欠けていたら、その作品は生まれなかったか、あるいは大なり小なり、今とは内容の違ったものになっていたでしょう。
『最後のヘルパー』の場合、成立の大きな契機は二つありました。一つは、私が自宅で母の介護を経験したことで、もう一つは、あるシナリオの秀作に接したことです。タイトルの意味が最後に鮮やかに反転するその作品に触れてから、いつか自分もこうした作品を書いてみたいと思うようになったのです。むろん、小さなことでは、他にも無数と言っていい出会いがありました。受賞という幸運な結果を得られた今では、それら偶然・必然の様々な「ひと・もの・こと」との出会いに感謝したい気持ちでいっぱいです。
 ただ、そうした出会いは、自ら呼び込むものという考え方もあります。ですから、今後も、あちこちにアンテナを張り巡らす努力と心構えだけは忘れぬようにしたいと思っています。
 活字以外の様々なメディアが隆盛の現代に、エンターテインメントを書く上で特に気をつけていることは、読みやすく、できるだけ映像の浮かぶ文章にすることと、ドラマをテンポよく、スピーディーに展開させることです。
 私は、マジシャン、花岡丈太郎を主人公とした長編ミステリーを、電子書籍で4作発表していますが、今後も『風来マジシャンシリーズ』をライフワークとして、年2作ぐらいは書き続けていきたいと思っています。
 また、現在、短編のシリーズキャラクターも構想中ですが、これはまだまだ、この先の「ひと・もの・こと」との出会い次第といったところでしょうか。
(たかはし・まさき)

受賞作

『最後のヘルパー』

刑務所から出所したばかりの川勝は、空腹からとあるアパートへ侵入してしまう。そこで出会った寝たきりの老女・タキ。介護ヘルパーと間違われた川勝は、ヘルパーのフリをして窮地を切り抜けようとするが……。

あさか・しき
1971年、愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。会社員。趣味はDVD鑑賞、旅行、ジャズ鑑賞、北欧食器とやきものの収集。好きな作家はパウロ・コエーリョ。好きなアーティストはデイヴィッド・リンチ、キース・ジャレット。受賞作『マンガ肉と僕』は新潮社より刊行予定。

第12回女による女のためのR-18文学賞

女性ならではの感性を生かした小説を募集。応募資格は女性に限る。大賞受賞者には賞金30万円と体組成計付きヘルスメーターが贈られる。選考委員は三浦しをん、辻村深月。

朝香 式さん

自分の中にふと生まれたイメージを形にするため書き始めた

 今回、受賞した作品『マンガ肉と僕』は、ずいぶん久しぶりに書いた短編でした。
 学生の頃、作家に憧れて小説を書いていました。けれどその時は、書くんだ、という意気込みばかりで、応募する賞の趣旨や、読者が求めることなど、何も見えていなかったように思います。
 それから十数年も経って、あるとき自分の中にふと生まれたイメージを、形にするために書き始めたのが、今回の作品です。
 イメージから生まれた作品ですので、映像化の可能性が高い「女による女のためのR-18文学賞」に引力を感じ、応募させていただきました。自分の書いた小説を映像として観たい、という願望は、私を今回の受賞に導いてくれた力のひとつであり、今後も私の創作活動の大きな原動力であり続けると思います。
 また、自分が生み出した登場人物のことを、読者が本気で応援したり、腹を立てたりしてくださることも魅力の一つです。今回、賞をいただくことができて、選考委員の先生、新潮社のみなさまなど多くの方が、まるで知り合いのことを話すように、私の描いた人物について語ってくださったときの喜びは、忘れられません。
 小説を書くのは孤独な作業といわれますが、書いてから世の中に出すまでの間には、たくさんの方が力を貸してくださいます。編集者の方からいただいた意見を元に文章を再考し、時に議論して自分の思いを確かめると共に、別方向からの力を加えることによって、小説が強度を増し、輝きを強くするのです。
今、小説を書く上で思うことは、本を読む時間というのはとても貴重なものですから、それを無駄にさせたくない。そのために、わかりにくい表現は避け、伝える努力をしよう、ということです。 今回の受賞の経験が教えてくれたことを大切にしながら、これからも、人物の顔や情景が見える小説、匂いを感じ、音楽までも聞こえるような小説を、書いていきたいと思っています。
(あさか・しき)

受賞作

『マンガ肉と僕』

マンガ肉によって奇妙に結びついた男女の、ひりひりとした関係と10 年後の変化を描いたもの。               
              

まのか・れん
1966年、愛知県生まれ。英会話講師。趣味はヨーロッパを旅すること。大賞受賞作『声蛍』は岩崎書店より9月に刊行予定。

第30回福島正実記念SF童話賞

小学校3・4年生から読め高学年でも楽しめる童話を募集。SF、SF 的なファンタジー、冒険、ミステリー、ホラー、ナンセンスなどの空想物語。大賞受賞者には20万円が贈られ、受賞作が刊行される。

万乃華れんさん

まだ、着飾った私 いつか、丸裸に

 英会話教室に講師として勤めている私には、「ねえ、聞いて。今日、うちの子がね」
 といったように、「うちの子」と呼べる子どもがたくさんいます。
 どんぐりの首飾りをプレゼントしてくれた男の子も、そのひとりです。
 赤いひもに、どんぐりが五つ並んでいるのですが、くっつけているのは、セロハンテープ。もう、なんど、貼りつけなおしたことやら……。
 教室で迎える私に、指をしゃぶりながら手紙を差しだす女の子もいました。
「きょうこせんせいへ ○○より」。本文はありません。裏返せば、新聞の折り込み広告です。しかも、文字を書いたところだけ、きれいに(?)ビリビリっとやぶいてもってきます。
 こんなかわいい、三歳から中学三年生までの「うちの子」が、私には二百人もいるのです。
 創作意欲が失せることはありません。昨年は、月に一作品のペースで書きあげ、賞もたくさんいただきました。
 様々な表情や、それぞれの成長をみせてくれた子どもたちに、いまはただただ、感謝するばかりです。
 とはいえ、登場するのは「うちの子」だけではありません。必ずどこかに、「私」がいます。今回、福島正実記念SF童話賞をいただいた作品も例外ではありません。
 四十六年の人生。辛いこと、悲しいこともたくさんありました。そんなとき、話を聞いてくれる人の存在に、どれほど救われたことでしょう。
『声蛍』は、そういった経験から生まれた作品ですので、心の中をのぞき見られるようで、少し恥ずかしくもあります。
 でも、まだ、着飾った「私」にすぎません。
 衣を一枚一枚脱ぎすてていくことにより、もっともっと大切ななにかを、子どもたちに伝えることができるのであれば、いつか、丸裸になった「私」を描き入れてみたい。そう思っています。
(まのか・れん)

受賞作

『声蛍』

お気に入りの野球チーム、ヤンキースの帽子をやっと手に入れた陽平。さっそく、みんなに見せびらかしますが、カラスにフンを……。仕返しをするために追いかけ、たどり着いた森で目にするのが「声蛍」。人の声を宿した、蛍のようなひかりだったのです。               

              

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