なかざわ・ひなこ
1969年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。劇作家。趣味は旅(特に島)に出ること、タヒチアンダンス。好きな作家はドン・ウィンズロウ、梨木香歩。好きな落語家は立川談春。受賞作『柿の木、枇杷も木』は講談社より2014年1月に刊行予定。2014年4月4日~6日、上野ストアハウスにて舞台「千年水国」作・演出予定。

第8回 小説現代長編新人賞

自作未発表の長編小説を募集。大賞受賞者には賞金300 万円が贈られ、受賞作は書籍刊行される。選考委員は石田衣良、伊集院静、角田光代、杉本章子、花村萬月。

中澤日菜子さん

「戯曲」と「小説」
二足の草鞋を履いて
作家人生を歩んでいきたい

 モノを書き始めたのは、はるか昔、高校生のころでした。演劇部に入り、芝居の面白さに目覚め、それからずっと戯曲(舞台用の台本)だけを書き続けていましたが、昨年、「戯曲以外のものも書いてみよう」と思い立ち、それが今回の受賞につながりました。
 戯曲でも小説でも同じですが、必ず選考会を経て受賞作が決まります。なかでも戯曲賞に多いのが、「公開審査会」というもの。これは選考委員の方々が、公開討論で受賞作を選ぶというもの。密室審議ではないので公明正大ですが、当の候補者本人にとっては、これほどしんどいものはありません。目の前で交わされている議論に一喜一憂し、いざ投票となれば震える手で「神さま…」と祈り、出た結果で、その後しばらく浮かれたり(めったにありませんが)、激しく落ち込んだりしていました。何度か経験したこの公開審査会のおかげで、わたしの寿命は確実に十年は縮んでいると思います。
 今回の選考会は公開ではなかったので、そういう意味ではすこし気が楽でした。「決まったら電話します」と事前に言われていたので、心臓をバクバクさせながらそのときを待ちました。
 家の電話が鳴ったのは、緊張が最高潮に達するころ。膝をがくがくさせながら電話のところまで行き、番号表示を見ると、なぜかそこには我がムスメの名前が。おかしい、さっきまでこの部屋にいっしょにいたのに、と思いつつ受話器を取ると、「ママ、驚いた?  あははははー」……他の部屋から自分の携帯でいたずら電話してきたのです……お馬鹿さんです……。しかしおかげで緊張の糸がほどけ、「本物の」連絡が来たときは、自分でも意外なほど冷静に受け答えができました。ある意味、ムスメに感謝、です。
 これからは戯曲と小説、二足の草鞋を履いて作家人生を歩んでいきます。どちらもそれぞれ、違った魅力のある世界。そのどちらでも、観てくださるひと、読んでくださるかたに「なにか」を残すことのできる作家になりたいと思います。
(なかざわ・ひなこ)

受賞作

『柿の木、枇杷も木』

34歳の彩は、東京郊外の小さな町で「伊藤さん」という男性と暮らしている。「伊藤さん」は、アルバイトで生活をしている54歳。八月のある日、彩のもとに音信不通だった兄・潔から「お父さんを引き取ってくれないか」と突然連絡が入る。「伊藤さん」と同棲している彩は、その申し出を拒む。だが、拒んだその日、父は身の周りの荷物だけ持って、彩と「伊藤さん」の住む部屋へやってくる。その日から、彩と「伊藤さん」と父の、ぎこちない共同生活が始まった。

みさわ・よういち
1980年、長野県生まれ。東北大学大学院法学研究科修士課程修了。好きな作家は連城三紀彦、泡坂妻夫、山田風太郎。好きなアーティストはボブ・ディラン、ニューオーダー、曽我部恵一。受賞作『致死量未満の殺人』は早川書房より10月25日に刊行。

第3回 アガサ・クリスティー賞

広義のミステリ小説を募集。受賞者には賞金100 万円とアガサ・クリスティーにちなんだ賞碑が贈られ、受賞作は刊行される。第3 回の選考委員は有栖川有栖、北上次郎、鴻巣友季子ほか。

三沢陽一さん

ミステリとは
謎という妖怪を
論理的に退治する物語

 保育園の頃の話です。卒園文集の「将来の夢」の欄に、私は何の迷いもなく、「鬼太郎」と書きました。そうです、当時、私は水木しげる御大の代表作である『ゲゲゲの鬼太郎』が大のお気に入りだったのです。毎週、欠かさず、再放送の『ゲゲゲの鬼太郎』を観て、妖怪を退治する鬼太郎に声援を送っていました。大人になっても、妖怪や怪談といった不思議な話が好きで、その手の本を多く読んできたような気がします。
 そんな私がどうして、作家を目指そうとしたのか。何故、妖怪退治ではなく、小説を書こうとしたのか││それは自分でもよく判りません。そもそも、私は文章を書くのが大嫌いで、読書感想文の宿題は常に後回しにしていましたし、未だに日記をつけたことがないくらいです。とにかく、文章というものが苦手でしたし、それは今でも大して変わっていません。
 しかし、小説を読むことは大好きでした。特にミステリは大好物で、一時期は一日に四、五冊読んでいた記憶があります。多分それは、ミステリというものが非日常を舞台にしたものであり、『ゲゲゲの鬼太郎』と似た妖しい雰囲気を持っていたからだと思います。また、ミステリとは、謎という妖怪を論理的に退治する物語であり、そういった相似点を感じ取っていたのでしょう。
 そんな私が初めて筆を執ったのは大学に入ったときでした。ミステリ研で会誌を出すことになり、一人一編強制的に書かされたのです。ミミズが這ったような汚い手書き文字で構成された掌編は、ミステリとも幻想小説ともつかないような不思議なもので周囲を困惑させたものです。それ以来、ぽつぽつと創作を始め、このたび、アガサ・クリスティー賞という大変名誉ある賞を頂きました。鬼太郎になるという幼少期の夢は叶いそうにありませんが、一応、作家にはなれました。妖怪には歯が立ちませんが、謎は退治できる……はずです。といっても、まだまだ駆け出しで、これから先、コンスタントに作品を出していけるか不安でなりません。鬼太郎に笑われないよう、頑張って いきたいと思いますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。
(みさわ・よういち)

受賞作

『致死量未満の殺人』

吹雪の山荘で起きた女子大生毒殺事件。時効が迫った十五年後、一人の同級生が犯行を独白した。どうやって犯人は被害者を毒殺したのか? クリスティーに捧げる本格ミステリ。               
              

ほし・はいり
1982年、千葉県生まれ。立教大学文学部日本文学科卒業。好きな作家は那須正幹、よしもとばなな。趣味は発酵食品づくり、散歩。受賞作『焼き上がり5分前!』はポプラ社より12月に刊行予定。

第3回 ポプラズッコケ文学新人賞

小学校中・高学年~中学生が夢中になるエンターテインメント小説を募集。大賞受賞者には賞金100万円が贈られ、受賞作は書籍刊行される。特別審査委員は那須正幹。

星はいりさん

自分が望んだ分野の世界に
踏み入れさせてもらえる喜び

 私は、子どものころからお話というものが好きだったので、学生の頃から、物書きになれたらいいなと漠然と思っていました。
 しかし、あくまで漠然と思っているだけでした。文章とは全く関係のない仕事をこなしながら、自分はどの分野で、どんな話が書きたいんだろう、と自問する日々を送っていました。
 ある時、これではずっとこのままと思い、そもそも自分はどんな作品を好んで、そこから何を得ていたかを、考えることから始めました。
 私が物語から得ていたのは、そのエンターテインメントが与えてくれる感動と、それによって湧いてくる力でした。
 それを念頭に、自分がかつて夢中になって読んだ本を改めて読み返したり、新しく読んだりする中で、「ズッコケ三人組」シリーズに行き当たりました。
 読み返すうち、私もこんなものが書けたら、との思いと、その名を冠した新人賞があるなんて、ぜひ応募したい、との思いが強くわき上がりました。
 それと同じくらいの量で、不安もありましたが、何もせずに終わるのはまっぴらと思い、ちょうど仕事を辞め、時間が出来たこともあり、創作に取り組み始めました。
 そうして、自分がかつて、物語たちから得たものを込めるように書いた結果、ありがたいことに、大賞をいただくことが出来ました。
 もちろん、私はまだまだ力不足ですが、自分が望んだ分野で賞をいただいて、その世界に踏み入れさせてもらえる喜びは、創作を志す方たちには容易に想像できると思います。
 今後、お話を書かせていただく場合も、同じように、これまで自分が物語からもらって来たわくわくを、自分の形で表現したいです。そうして、かつては読むだけだった世界に、今度は丸ごと参加したいと思っています。
 一口に創作と言っても、さまざまな分野があり、その分だけ作品の募集があります。
 各分野の賞に、情熱がいっぱいの作品が応募され、そこを通って、世に出ていくのは素晴らしいことだと思います。
 自分が関わることのなかった分野は触れて楽しませていただき、自らが属する分野では、懸命に作品を創っていきたいと思っています。
(ほし・はいり)

受賞作

『焼き上がり5分前!』

小学6年生の本川めぐるは、使いこんでしまったお金を稼ぐために、クラスメートのさとしとあかりと共に、祖父のパン屋でアルバイトを始める。その途中で見つけた創作パン大賞の賞金100万円を獲るために、三人は大人たちの中で奮闘しながら、成長していく。               

              

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