こじま・たまき
1985年、愛知県生まれ、同県在住。愛知県立大学外国語学部中国学科卒業。受賞作『三皇の琴 天地を鳴動さす』は2015年1月に講談社より刊行予定。

第9回 小説現代長編新人賞

自作未発表の長編小説を募集。大賞受賞者には賞金300 万円が贈られ、受賞作は書籍刊行化される。選考委員は石田衣良、伊集院静、角田光代、杉本章子、花村萬月。
主催 講談社

小島環さん

上昇と下降を繰り返しながら
じりじり選考を突破

 中学生の頃から、こんな物語があったら面白いなと思ったものを文章にして、内輪で読んでもらい、楽しんでいました。
 大学生になった頃、「あんなスッカスカの文章を、どうして読む人がいるのか理解できない」
 と噂されていると知り、もっと人を夢中にさせたい、さらにうまく書けるようになりたいと感じるようになりました。
 実力を知るため投稿を始めたのですが、真剣に作ったものをプロに評価してもらう緊張感と、上昇と下降を繰り返しながらも応募するたびにじりじり選考を突破していくのが励みになり、いつしか本気になりました。
 とはいえ、何点とったら合格というものではないので、受賞は簡単ではありませんでした。
 物語を書いて食べていきたいと人に告げても、「夢みがち」
 と笑われるかなと言いだせず、執筆時間を増やすために人間関係や仕事や生活を削り、完全に趣味の域を超えたあたりから、自分の人生はこれで良いのか?
 と不安になってきたものの、だからといって止められず、そろそろ破綻……というあたりで受賞の連絡を頂きました。
 今回の応募は人の勧めでしましたが、
「今の私では難しいな」
 と感じていたので、驚きました。
 最近まで受賞の実感がなかったのですが、出版にむけて原稿の修正を繰り返していると、夢みたいとか言ってる場合じゃないと思えるようになりました。
 むしろ、異世界に通じるという噂の扉を叩き続けて、なんとか開いたものの、新世界は偉大なカイブツばかりで、さてどうやって生き抜こうかと、装備の確認をしている状態です。
 結果を頂いた作品は、中国時代劇です。日本と文化の交流もあって身近に感じる国でありながら、歴史が長く規模も大きいため、幻想的でかつ壮大な物語を想像できるところが幼い頃より好きでした。
 学生の頃にもっと専門的に勉強をしておけば良かったと、今だからこそ感じますが、まずは多くの人に今回の物語を楽しんでいただけるよう、魅力をひきあげる作業を頑張ります。
(こじま・たまき)

受賞作

『三皇の琴 天地を鳴動さす』

春秋末期の衛国。小柄な十五歳の少年・小旋風は、盗堀を生業とする養父に育てられた。あるとき彼は、墳墓の棺の中から華麗な琴を発見する。しかし直後、養父は落盤事故で死んでしまう。小旋風は自分の唯一の武器である言葉だけを使って琴を売り、大金を手に入れようとする。

うちやま・じゅん
1963年、神奈川県生まれ。東京都在住。立教大学社会学部卒業。現在自営業。好きな作家は、A・アシモフ、J・アーチャー、E・S・ガードナー、M・ジュヴァール/P・ヴァールー。受賞作『B(ビリヤード)ハナブサへようこそ』は10月14 日に刊行される。

第24回 鮎川哲也賞

創意と情熱溢れる鮮烈な長編推理小説を募集。選考委員は北村薫、近藤史恵、辻真先。受賞者には印税全額とコナン・ドイル像が贈られ、受賞作は書籍刊行される。
主催 東京創元社

内山純さん

勝因のひとつは
一歩引いた視点で描けたこと

 五十一歳の遅咲き新人です。
 若いころからミステリ小説が好きでしたが、執筆とは無縁の人生を過ごしてきました。翻訳ものばかり読んでいたためか〝作家〞は遠い存在で、特殊な才能を持った人だけがなる職業だと信じていました。
 しかし、不惑も過ぎると図々しくなり、何を間違えたのか「自分でも書いてみようか」と思い立ち、六年前に投稿を始めました。
 しばらくは落選続きでした。独りよがりの文章を書きなぐっては送りつける、の繰り返しなので、当然の結果です。
 これでは進歩がないと気づき、家族に読んでもらって意見を聞き、推敲を重ねてから応募することを心掛けるうちに、選考に残るようになりました。
 一次選考通過が二回。最終選考まで辿り着いたのが一回。励みになりましたし、その際に頂いた選評は大変参考になりました。
 そしてこのたび鮎川哲也賞を受賞することができました。今でもまだ、信じられない気持ちでいっぱいです。
 受賞の要因を出版社の方にお伺いしたところ、題材に選んだ〝ビリヤード〞とミステリの融合が良かったのでは、とのことでした。
 実は、ビリヤードには興味がありませんでした。ゲーム経験も両手の指で数えきれる程度です。そんな私がなぜこの題材を選んだのかというと、たまたま身近に愛好者がいて、その方々の話を聞くことができたからです。私にすればちっぽけな球を棒で撞くだけのこと(失礼!)を、摩訶不思議な専門用語を駆使して何時間も議論するのです。よく飽きないなあと感心しましたが、ふと、この世界をミステリに組み込んではどうかと思い付き、出来上がった作品が『Bハナブサへようこそ』です。
 一歩引いた視点で描けたことも、勝因のひとつかもしれません。好きなことは得てして書き過ぎてしまうようです。
 今後はバリバリ活動していく……と言いたいところですが、年齢を考慮しつつ、じっくり書いてゆければ、と思っております。願わくは、素敵な題材にまた巡り合えますように……!
(うちやま・じゅん)

受賞作

『Bハナブサへようこそ』

元世界チャンプ・英雄一郎先生が経営する「ビリヤードハナブサ」。ビリヤードは奥が深く、理論的なゲームだ。そのせいか、常連客たちはプレーそっちのけで、各人が巻き込まれた事件について議論していることもしばしばだ。そして今日もまた不思議な事件が持ち込まれ、推理談義に花が咲く。               
              

あおぬま・ようと
1980年、北海道生まれ。東京都在住。早稲田大学第一文学部卒業。公務員。趣味はカフェ巡り、音楽鑑賞。好きな児童文学作家は奥田継夫、好きなアーティストは原一男、市橋織江、コザック前田。2008年、『北日本児童文学新人賞』優秀賞受賞。受賞作『さくらいろの季節(仮題)』が来春刊行予定。

第4回 ポプラズッコケ文学新人賞

小学校中・高学年~中学生が夢中になるエンターテインメント小説を募集。大賞受賞者には賞金100 万円が贈られ、受賞作は書籍刊行される。特別審査委員は那須正幹。
主催 ポプラ社

蒼沼洋人さん

小さな喜びを丁寧に
掬いとっていきたい

 児童文学を書いていると、数あるジャンルのなかでなぜその道を選んだのか、よく訊かれます。いくつか理由はありますが、一番は単純に好きだからです。
 初めて小説を書こうと思ったとき、野球選手に憧れる子どもが自然とグローブを手にするように、児童文学を書くことに迷いはありませんでした。
 作品は主に週末と、平日の夜に書いています。今回、賞の締切前は仕事の繁忙期で、出勤前や昼休みの細切れな時間を拾い集めるようにして応募作を書き上げました。
 しかし、仕事が創作の障害かといえばそうではありません。上司や同僚に助けられつつ、うまくいかない現実と格闘するなかで、人として成長し、書き手として物の見方が深くなっている気がします。なにより、様々な考えを持つ人たちとの関わりを通じて、良いことも悪いこともひっくるめて、生きているという実感があります。
 今回賞を頂いた作品も、教室における人間関係を通じて成長する主人公を描いた作品です。
 影響を受けた既存の作品の一つに、奥田継夫さんの『ボクちゃんの戦場』があります。同作は、疎開先での集団生活における子どもたちの人間関係をえぐるような鋭さで描いています。
 私は十一歳の時に読み、作品に夢中になりました。戦争とは無縁の平和な現代日本に生きていた私が、戦時中の主人公にすっかり共感できたのは、描かれた少年たちの人間関係がリアルで、震えるような切実さを持っていたからです。
 どんなに時代が変わろうと、大人も子どもも、人は互いにひかれあい、時に対立し、うちのめされ、それでもささやかな喜びを見つけて成長していくことに変わりはないと思います。
 実生活でも、創作においても、私は人と人との心の触れあいを大切にしながら、季節の移ろいに目を配り、小さな喜びを丁寧に掬いとっていきたいです。
 これから先、いくつ作品を書く機会を頂けるかわかりませんが、どの作品が最後となっても悔いを残さないよう、目の前の作品に向き合っていきます。
(あおぬま・ようと)

受賞作

『さくらいろの季節(仮題)』 

小学6年生の少女めぐみの、親友の優希が転校してしまったあと、次第に変わってゆく周囲の状況や自身の内面を、エピソードの中で丁寧に綴った連作短編集。

              

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