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未公表資料の利用(2010年7月号)

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公募ガイド誌上で1998年4月号から2014年3月号に渡って連載された、「公募のための著作権Q&A」を再掲載します。

毎週火曜日にバックナンバーを更新していきます。

 

講師:吉田大輔(放送大学客員教授)

未公表資料の利用

既に亡くなった有名作家の手紙を入手しました。この作家の評伝の中で引用してもよいでしょうか?

 

その手紙が未公表のものであれば、引用の要件に該当せず、著作権法に違反するおそれがあります

 

他人が創作した著作物を自分の創作に利用する場合、「引用」という手法がよく用いられます。引用について「出典の表示」さえしておけば大丈夫だと言われることがありますが、正確ではありません。著作権法上、適法な引用とは、引用する側と引用される側の作品がきちんと区別できるように表現されていること(明瞭区別性)と、引用する側が「主」であり引用される側が「従」となる関係(主従関係)が認められるものでなければなりません。「出典(出所)の表示」とは、これらの条件を満たした上で、さらに法的に義務づけられているものなのです。

 

また、引用にあたっては「公表された著作物」を用いることが著作権法上定められています(著作権法32条1項)。したがって、設問にある有名作家の手紙が過去に出版物や放送などで紹介されたことがあれば、公表されたこととなり、引用の条件に従って利用することができますが、仮にその手紙が未公表のものであるとすれば、著作権法上の引用の要件に該当せず、著作権侵害となるおそれがあります。

 

さらに、未公表の著作物を用いる場合には著作者人格権として認められている公表権にも注意する必要があります。既に亡くなった作家の場合には著作者人格権自体は消滅していますが、死後においても生前であれば公表権侵害に当たる行為は著作権法上禁じられており(同60条)、この面からも法的な追及を受ける可能性があります。作家の三島由紀夫の死後にその未公開の手紙を利用したことについて、著作権法違反に当たるとした事例があります(東京高裁平成12年5月23日判決)。


会社などの団体が作成した資料を引用しようとする場合も同様です。内部での検討や連絡などのために作成された文書等で著作物に該当するものが、「部外秘」扱いなどにより未公表となっている場合には、引用の要件に合致しないこととなりますので、慎重な取扱が必要です。

 

※この記事は、「月刊公募ガイド」2010年7月号で掲載されたものです。法改正などにより、当時と状況が変わっている場合があります。

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