伊藤一彦の短歌
『牧水・短歌甲子園作品集』というものが昨年刊行され、
そのなかに、私の歌も1首入れていただいておりました。
ぜひ広めてほしいとのことだったのでここに載せておきます。
伊藤一彦先生のコメント付きで、なかなかうれしいです。
なんとなく短歌を始めた私を沼に沈めたのが伊藤先生。
めちゃくちゃ温厚な人なのに、詠む歌はずっしりと重さがあり、
大人だ~かっけえ~~とすぐ好きになりました。
いくつか紹介すると、
「おとうとよ忘るるなかれ天架ける鳥たちおもき内臓もつを」
着眼点とそれを弟への語りかけとするうまさ
「妻とゐて妻恋ふるこころをぐらしや雨しぶき降るみなづきの夜」
をぐらし=ほの暗いですが、全体としてもほの暗さが出ていて好き
「月光の訛りて降るとわれいへど誰も誰も信じてくれぬ」
故郷宮崎の月の光を詠んだもの。わかります!と言いたくなる。
「人工の鳥のこゑする地下街を人らいそげり聴くことなしに」
恐らくは東京の地下街を詠んだもの。人口の鳥の声がやたらと耳につく。
この鋭さ、しびれますよね~。
特に2首目の「妻とゐて~」はうっすらと濡れているような質感や、
大人っぽい情景が、当時17歳くらいだった私と友人たちを沸き立たせ、
「やばい無理しんどい」ばかり言っていました。
また、地方vs東京の構図は斎藤茂吉や石川啄木の時代から
寺山修司なども通りつつ、ずっと続いているものですが、
伊藤先生の歌もそういった側面があります。かっこいい。
短歌だけじゃなくて、いろいろな表現物の中で、
これぐらい人を引きつけられたらなあと思います。