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小説抄 其の49「コンラート・ローレンツ『ソロモンの指環』」

カテゴリ:未分類


動物と接していると、つい話しかけてしまったりする。たいていはムツゴロウさんみたいにしゃあとか言ってじゃれているだけなのだが、愚痴を言ったりすることもある。高校3年の夏、ムツゴロウさんの奥さんと同じ名前の彼女のことを考えながら、庭先でぼうっとしていた。愛犬も隣でじっとしている。そのとき、「勉強もはかどらないし、彼女とも終わりそう。人生って」などと言ったのだと思う。「いいなあ、おまえは」と言うと、犬は「ふんっ」とそっぽをむいたのだった。

どういう加減か、犬は絶妙なタイミングでそっぽをむくことがあり、このときは「くだらないんだよ、人間は」と言われた気がした。動物がそんなこと思う? でも、今のはそういう表情だったぞ。そう言えば、手塚治虫も「動物には雑念がないから、本来、神に近い存在」って『ブッダ』の中で言っていたし、案外、すべて見透かしているのかもしれない。悟っているのかもしれない。尻尾を振りながら、内心では「超ウザ」なんて思っているのかもしれない(これはありうる)。

それで本屋に行き、動物関係の本を見ると、『ソロモンの指環』があった。解説を見る。なになに、「古代イスラエルのソロモン王は指環を使ってあらゆる動植物と話すことができた」。これ欲しい! 速攻で買う。で、指環を買ったわけじゃないけど、なんだかそんな気になって夢中で読んだ。犬について言えば、横になるとき、座ったり立ち上がったりを繰り返すのは、草原に棲んでいたときの名残、というのが印象的だった。いまだに草をならしているのか、おまえ、みたいな。

ほか、ガンは生まれて初めて見たものを親と思う、自分と似ている個体とつがいになる、しかし、同時期に生まれた子とはつがいにならないという実験結果が印象的だったが、つがいからの連想で、彼女とは結ばれるかなと思い、犬に「どう?」と聞くと、「?」てな顔で首をかしげた。今の「?」は「分からない」という意味? それとも「残念ですが」? 指環に聞いてみたかったが、ほどなく恋は終わり、その後、指環を手にすることも、ムツゴロウさんになることもなかった。(黒)

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