作家インタビューWEB版/山崎ナオコーラさん

撮影:賀地マコト

公募ガイド5月号の特集「登場人物に命を吹き込む」では、小説家の山崎ナオコーラさんにご登場いただきました。
誌面に入りきらなかったインタビューをご紹介します。

山崎ナオコーラ(小説家)やまざき・ナオコーラ

1978年福岡県兵庫県生まれ、埼玉県育ち。2004年『人のセックスを笑うな』文藝賞受賞。2017年『美しい距離』で島清恋愛文学賞受賞。芥川賞候補には5度なっている。小説家のほか、エッセイストとしても人気。

『趣味で腹いっぱい』はユニークなタイトルですね。

山崎先生

タイトルでフックを作りたいといつも考えています。表紙に載るのは題名と筆名だけなので、「なんだろう?」と手をのばしてもらえるフレーズにしたいです。

お仕事小説というジャンルがありますが、趣味小説とは珍しいですね。

山崎先生

高齢化社会が進み、「働くことがメインの生活ではない」という人が増えています。
また、若い方には主婦や主夫を志望する人もいますし、「仕事以外の暮らしを大事にしたい」という価値観をよく聞くようになりました。 私自身は金が好きで、人に頼らずに自立したい、という気持ちで若い頃は生きていましたが、時代と共に考えが変わってきました。 今はお仕事小説が多いですが、これからの時代は趣味小説が増えていくと思います。

作中に「鞠子はどうやら人生をかけて趣味を行うことを考え始めている」という文章がありましたが、仕事も趣味もアイデンティティという意味では本質は変わらないのかもしれませんね。

山崎先生

以前の私は仕事として小説を書いていることに誇りをもっていたのですが、子どもが保育園に落選したとき、気持ちが暗くなってしまいました。 いい仕事をしている友人の作家は保育園に入れていたので、「評価される作品を書ける人は仕事をするべきだけど、そうじゃない自分は落選しても仕方ない」と考えてしまい、 「いやいや、一所懸命にやっているんだから仕事をしていい」と考え直し、「あれ? 評価や収入を気にしないなら、仕事と趣味って、実は違いがないんじゃないか」と気がついたんですね。 そもそも、趣味って、必死にやるものなんです。 私の叔母はライフワークとして趣味の小説を書いています。母は、父が亡くなってから懸命に様々な趣味の活動を始めました。 余裕があるからやるというものではない。明日を生きるためにやるものなんですね。

今後はどんな仕事をしていきたいですか。

山崎先生

個人の仕事だけではなく、全体としての仕事への欲が出てきました。日本文学史が続いていく一助となる仕事ができたらいいなと思っています。 同年代の作家の友達がいっぱいできて、一人で仕事をしているんじゃないな、と感じるようになりました。 自分の名が残らなくても、自分の本が売れなくても、文学が盛り上がったり、書店シーンが盛り上がったりすれば、十分に自分の役割を果たしたと言えると思うんです。 そうすれば、作家として堂々と死ねると思います。

公募ガイド5月号

公募ガイ5月号では、山崎ナオコーラさんに「人物造形」について伺っています。

公募ガイド2019年5月号
特集「登場人物に命を吹き込む」

2019年4月9日発売/定価630円

詳しくはこちら