あの人に聞いてみたい/白石一文さん

撮影:武井優美

公募ガイド3月号の特集「ヒルモとヨルモのオモテとウラがわかる 小説・エッセイ相談室」では、直木賞作家の白石一文さんにご登場いただきました。
誌面に入りきらなかったインタビューをご紹介します。

白石一文(直木賞作家)(小説家) しらいし・かずふみ

1958年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中から小説を書き始め、文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。2009年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞、2010年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。父親は直木賞作家の白石一郎。

プロットはお作りになられますか。

白石先生

僕は作らないですね。まさにぶっつけ本番です。双子の弟も作家をやっていて(白石文郎)、彼はもう何年も作品を発表していませんが、彼の小説作りは僕とはまるで違う。プロットを完璧に仕上げて、そこには各場面ごとのセリフまで書き込んであります。

彼に言わせると、小説は建築と同じだと。建築だから、実際に小説を書くときはプロットという設計図通りに作り上げなくてはならないというのです。そして、そうやって現実に設計図に従って書いていくと、途中で、あれ、この施設はいらないんじゃないの? と気づいたりするという。彼の場合は、そこではたと立ち止まって、あらためて図面を引き直す。そういう緻密な作業が重なるものだからどうしても作品の完成が遅れてしまうわけです。

僕のようにプロット無しで書くのも大変と言えば大変ですが、彼のように完璧なプロットを仕上げてからでないと先に進めないという書き方も大変だと思いますね。

純文学とエンターテインメント小説の境目は?

白石先生

多くの小説は、概念として区別できなくても、小説としては区別できると思います。100冊の小説を純文学とエンターテインメント小説に半々に分けろと言われたら、分けられると思います。N極とS極があるように、磁石を近づけてみればわかる。そういう意味では境目はあるんだと思いますね。

白石さんの小説は、純文学であり、エンターテインメント小説でもありますね。

白石先生

「小説新潮」も「小説現代」も「オール讀物」も、今はエンタメ誌に衣替えしているけれど、昔は中間小説、つまり、純文学でもないし、エンタメ小説でもないという小説誌だったんです。で、ぼくは長年、その中間小説を書いてきた作家なんです。

中間小説という言い方は今はないですが、新鮮ですね。

白石先生

中間小説というものは、非常にざっくり言えば、純文学寄りのエンタメ小説ということになるでしょうね。最近はそうした小説が少ないように思うので、何か新人賞を狙うのであればチャレンジしてみるといいと思います。

そのためにはまず純文学をたくさん読んだほうがいい。戦後の芥川賞受賞作だけでもいいから、『芥川賞全集』を手に入れて一気に読んでみることです。続けて読むと小説の流れというものもわかるし、すごく勉強になると思います。そもそも文章を磨きたいのならば、直木賞作品ではなくまずは芥川賞作品を読むことですね。

公募ガイド3月号

公募ガイド3月号では、白石一文さんに「新刊『君がいないと小説は書けない』について」伺っています。

公募ガイド2020年3月号
特集「ヒルモとヨルモのオモテとウラがわかる 小説・エッセイ相談室」

2019年2月7日発売/定価680円

詳しくはこちら