【特集INTERVIEW 番外編】 真梨幸子(小説家)
- 文芸
2019.07.09

撮影:神崎安理
特集INTERVIEW 番外編
真梨幸子(小説家)
まり・ゆきこ。1964年宮崎県生まれ。2005年、『孤虫症』で第32回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年に『殺人鬼フジコの衝動』がベストセラーに。『向こう側の、ヨーコ』『ツキマトウ』など著書多数。
8月号の特集では、イヤミスの女王として人気の真梨幸子さんにインタビューしました。その番外編をお届けします。▼WEB限定!誌面に入りきらなかったインタビューはこちら
自分には不向きだった社会派ミステリーに
自分を隠して応募していた
自分を隠して応募していた
「やりたいこと」と「やれること」は違うと言いますが、「やれること」は自分にとっては当たり前すぎて、なかなか見えないものですね。やはり、目標や憧れのほうばかり見てしまいます。
真梨幸子さんも、ミステリーの作家を目指し、「ミステリーと言えば江戸川乱歩賞でしょう」とばかりにまっしぐらだったそうです。
江戸川乱歩賞。そう、社会派ミステリーの文学賞です。
真梨さんももちろん、このことは知っていて、無理して社会派を書いていたそうです。
ところで、江戸川乱歩賞は、なぜ社会派ミステリーなんですかね。
江戸川乱歩自体は社会派というわけでもなく、ちょっとエロが入っていたり多分にグロが入っていたり、風変わりな傑作をたくさん書いていますよね。
まあ、それを言ったら、芥川賞も芥川龍之介の作風とはだいぶ違いますし、冠になった作家の作風とイコールである必要もないのですが。
真梨さんがなぜ江戸川乱歩賞からメフィスト賞にシフトしたかは公募ガイドの特集の中に詳しく書いてありますが、あることがきっかけで、真梨さんはメフィスト賞に応募しました。
メフィスト賞は、どこか異端の作風のものが多く受賞しているということで、真梨さんも自分の中のエロとグロを爆発させて書きました。
それが受賞作の『孤虫症』です。
受賞後、真梨さんは担当編集になった方に、
「真梨さんは江戸川乱歩賞じゃないよ」というようなことを言われたそうです。
でも、わからないですよね。憧れもありますし、社会派が向いてないなんて思いたくもないでしょうし。
書いているときは、役者になりきり、
書き終わったら、今度は演出家の立場で
書き終わったら、今度は演出家の立場で
真梨さんは、なぜイヤミスの書き手になったのでしょうか。
本人はイヤミスを書いている自覚はないそうですが、イヤミス以前に、テレビのワイドショー的な、どろどろしたスキャンダルが好きだったようです。
考えてみると、人間ってそういうの、大好きですね。とくに女性はお好きなようです。
実際に身近な人が殺されたら大変ですが、そこは小説だから現実からは遠い世界です。
自分には危害が及ばない世界で、誰かが殺されたり悲惨な目に遭ったりするのは、読んでいてドキドキしますね。
社会派ミステリーの場合、小説とはいえ、かなり現実的に描かれます。だからこそ、弁護士や医師など、専門家が書くケースが多いのですよね。
そういう意味では、真梨さんは逆かもしれません。人が殺されるのに、どこかユーモアがあって、どこか現実ではないような空想性があります。
真梨さんは、プロットというものを全く作らないそうです。今作には「ミツコ調査事務所」という興信所が出てきますが、なかば無意識のうちにそう書いてしまい、「ミツコだから女性だよね」「調査事務所ってことは探偵事務所か」のように思いながら書いていったそうです。自動筆記みたいですね。
普通の人がそんなふうに場当たり的に書いていったら、たいがいは破綻してしましますが、真梨さんの場合は大丈夫なんですね。それを才能と言ってしまえば話は早いですが、秘訣は真梨さんが映画の勉強をしていたことにあるようです。
書いているときは、役者になりきって、ほとんど即興で演じていくわけですが、書き終わったら、今度は演出家の立場で書き直していくんだそうです。
いわゆる「鳥の目と虫の目」ですね。これは創作には必須ですね。
(ヨルモ)

『初恋さがし』
(新潮社・1600円+税)
所長も調査員も全員女性の「ミツコ調査事務所」。だが持ち込まれた案件を調査すると、とんでもない事件に発展してしまい……。苦みとユーモアが入り混ざった全7編の連作短編集。
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