【特集INTERVIEW 番外編】北村薫(直木賞作家)

  • 文芸

2019.11.08

【特集INTERVIEW 番外編】北村薫(直木賞作家)

撮影:神崎安理

特集INTERVIEW 番外編


北村薫(直木賞作家) 
1949年埼玉県生まれ。89年『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞受賞。06年『ニッポン硬貨の謎』で本格ミステリ大賞(評論・研究部門)、09年『鷺と雪』で直木賞受賞。小説、評論、エッセイおよび創作表現や編集等の著書多数。
12月号の特集では、直木賞作家の北村薫さんにインタビューしました。その番外編をお届けします。
 
謎は、どこにでもある!
日常生活にもある!


北村薫さんと言えば、「日常の謎」の書き手としてその名が知られています。
連続殺人のような非日常の謎ではなく、身近なところにある謎です。

最近、テレビドラマを観ていたら、以下のような場面がありました。
母親がアイスの袋と棒を指し、
「このゴミ、分別しないで捨てたのは誰?」
と聞きます。謎ですね。

聞かれた息子が犯人探しをします。しかし、犯人は誰でもありません。
実は、一週間前、当の息子がアイスを食べ、袋と棒をテーブルの上に置いたのですが、
母親はアイスの袋と棒があることに気づかずにその上に新聞を置き、一週間分たまったところで資源ゴミとして廃棄した。
かくて、一週間ぶりにアイスの袋と棒がテーブルの上に出現したというわけです。
テーブルマジックみたいですね。
これが「日常の謎」です。

 
謎を見つけ、答えを知ると、
人生はとても豊かになる


北村薫さんは、NHKの番組「課外授業~ようこそ先輩~」に出演されたことがあります。
著名人や話題の人が母校を訪問し、先生役として授業をする番組です。
このときの模様は、『北村薫の創作表現講義』(新潮選書)にも書かれています。
北村先生は番組の中で、子どもたちと町を歩き、「はてな」を探します。

先生が生まれ育った町には古利根川が流れていて、川向うに何本かの高い木が列を作っています。手前は住宅街で、反対側は田んぼです。
そこで、先生は聞きます。
「同じ間隔で生えているんだから人が植えたんだね。でも、なんのために植えたんだろう」
子どもたちはいろいろ考えます。
「お花見のため」「防風林」などなど。

教室に戻ると、先生は新潟に残る「ハザ木」の写真を見せます。ハザ木は、並木を作り、その間に横木や竹を渡し、稲を掛けて干す設備のこと。
先生は、先ほど見た並木はハザ木の名残だろうと推理します。
正解かどうかはわかりません。しかし、先生は、
「大事なのは、そんな風に、《はては》と思う気持ちを持つことだと思う」
と言います。

今度は私自身の話ですが、つい先日、こんな文章を読みました。
〈森を歩いていると、小鳥が寄ってきて、私が持つ枝の先に乗りました。〉
そんなことがあるだろうかと思いました。小鳥は人を警戒し、すぐに逃げるのが普通ではないか。作り話ではないかと。

そこでインターネットで「人懐っこい鳥」で検索してみると、
「ヤマガラはとても人懐っこく、野生の鳥でも手乗りになったりします」
おお、そんな鳥がいるのね。疑った無知な私を許してねと思いつつ、
「でも、ヤマガラってどんな鳥?」と思い、今度は図鑑を調べてみました。

スズメ目シジュウカラ科の鳥で、留鳥(渡り鳥ではない)だとわかりました。
シジュウカラ、アオガラ、ヒガラ、コガラなど「カラ」とつく鳥はみんな仲間です。
知ってしまうと、公園を歩いていても、「あれはヤマガラかなあ」なんて見てしまいますね。
興味の対象が1つ増えました。

 
本を読むことは、
ほんと、しあわせ!


謎は、本の中にもたくさんあります。
ある本を読んで、それまで知らなかった世界を知ってわくわくしたり、
なぜこんな事件が起きてしまったのだろうと疑問に思ったり。
前者の場合は、同じ作家の別の本を読んでみたくなりますし、
後者の場合は、別の本でさらに謎に迫ってみたくなります。

このようにして、謎が謎を呼び、読みたい本がどんどん増えてきます。
それにつれて知識も増え、ものの見方も変わり、何も知らなかったときより、遙かに豊かな生活になります。
北村薫さんの新刊は『本としあわせ』ですが、本を読むこと、そしてそれがもたらす豊かな人生は、「ほんと、しあわせ」です。

ちなみに、『本としあわせ』には、北村先生が朗読されたCDがついています。
自作エッセイ「さばのみそ煮」「白い本」を朗読したものです。
講演会にでも行かないと声まではなかなか聞けません。

北村先生は、かつては高校の国語科の教員でしたが、教卓で先生が朗読する姿を想像しつつ、生徒になったつもりで聞くと、先生を身近に感じられるかもしれません。
先生は、どんなお声でしょう。
それは皆さんへの謎としてとっておきましょう。

(ヨルモ)




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「北村薫のエッセイ」3部作に続く最新作は、デビュー30周年の愛蔵版にして本が読みたくなる読書ファン必携の書。高校時代のショートショート7編収録。自作朗読CD付き。
  
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