【特集INTERVIEW 番外編】原田マハ(小説家)

  • 文芸

2019.12.09

【特集INTERVIEW 番外編】原田マハ(小説家)

撮影:賀地マコト

特集INTERVIEW 番外編


原田マハ(小説家)
1962年東京生まれ。2005年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞を受賞。アート小説を多数執筆。
1月号(12/9発売)の特集では、アート小説で知られる原田マハさんにインタビューしました。ここでは、編集部によるこの番外編をお届けします。
 
▼WEB限定!誌面に入りきらなかったインタビューはこちら
 
 
親子で小説家、兄弟姉妹で小説家という場合、
同性のペアのほうが多い!


もしも自分の両親や兄弟姉妹が小説家だったら?
同じ血が流れ、同じ環境で育った者としては、
「私もなれるんじゃないか」
と思っても不思議ではないですね。

それで、親子で小説家、兄弟姉妹で小説家という例を探してみました。

〔親子で小説家〕
森鷗外・森茉莉、幸田露伴・幸田文、太宰治・津島佑子、井上光晴・井上荒野、阿川弘之・阿川佐和子。

また、親のほうの職業を文筆業というように広げると……。
江國滋・江國香織、吉本隆明・吉本ばなな、も該当します。

〔兄弟姉妹で小説家〕
吉行淳之介・吉行理恵、サトウ・ハチロー・佐藤愛子。

みんな性別が違いますね。
同性のペアは、アレクサンドル・デュマとデュマ・フィス、観阿弥と世阿弥(ともに父と息子)や、有島武郎と里見弴、グリム兄弟、大森兄弟、ブロンテ姉妹(ともに同姓の兄弟姉妹)もいますが、異性のペアのほうが圧倒的に多いようですね。

同性の場合、夏目漱石・夏目房之介(漫画家)、芥川龍之介・芥川也寸志(作曲家)、齋藤茂吉(歌人)・北杜夫のように、同じ芸術の分野の中で違った道を行くことが多い。
理由はよくわかりませんが、父親や兄が偉大過ぎると、息子や弟は端から“遠く及ばない”と腰が引けてしまい、そのプレッシャーに耐えられなくなるのかもしれません。

 
条件が揃うと自然に発芽するように、
小説家になるにもタイミングがある


原田マハさんは、言うまでもなく原田宗典さんの妹です。
原田宗典さんは、早稲田大学を卒業後、24歳ですばる文学賞(佳作)を受賞してデビューします。

原田マハさんとしては、どんな気持ちだったでしょうね。
子どもの頃からの夢を叶えた兄を誇りに思うと同時に、「私にはできるだろうか」とも思ったかもしれませんね。
あるいは、「兄が小説家の道を選んだのなら、私は別のジャンル」のように反発したかもしれません。
いずれにしても、原田マハさんは、大学卒業後、アート関係の道に進みました。

その後、原田マハさんは、アート関係の仕事を20年やって、やりきりました。
以前から、40歳になったらやりたいことをやろうと思っていたそうで、そこに「いつかは何か書いてみたい」と思っていた気持ちがつながり、最終的に『カフーを待ちわびて』を書いてデビューします。

20代のとき、兄のデビューに触発されて、「私も」と小説家を目指していたらどうだっただろうか。うまくいったかもしれませんし、いってなかったかもしれません。
ただ、何かになるには、タイミングがあるのも事実です。
「水・温度・酸素」の3要素が揃うと自然と発芽するように、原田マハさんが40代でデビューできたのは、ある意味必然。
逆に言えば20代だったら芽が出ないか、出てもうまく育たなかったかもしれません。

 
専門分野を生かして小説を書くときも、
タイミングがある


最近は、何かの専門家が、その分野のことを題材に作家デビューすることがあります。
いわく、医療関係者が医療小説を書く。弁護士が法廷ものを書く。
警察関係者が刑事ものを書く。金融関係者が経済小説を書く。
などなど。

一般の人は知らないような世界が描かれれば、それだけで興味がわきますね。
いわゆるお仕事小説を読むと、「へえ、そんな仕組みになっているんだ」と思ったりします。
もちろん、門外漢でも調べれば書けますが、“現場感覚がある”というのは強みで、その道に精通しているのであれば、ぜひ生かしたいところです。

ところが、原田マハさんは、そうはしませんでした。
アートが専門なのに、デビューして3年はアート小説を書いていません。
40代でデビューしたのもそこにタイミングがあったからですが、アート小説を書くのにもタイミングがあったわけです。
デビュー作で無理してアート小説を書いていたら、失敗していたかもしれませんね。

 
歴史の「IF」を大胆に広げた、
アイデアに富んだ歴史小説


原田マハさんは2005年に「日本ラブストーリー大賞」を受賞しているので、2020年でデビュー15周年ということになります。
今や、押しも押されもせぬ人気作家ですね。
そんな原田マハさんが上梓した新刊『風神雷神』は、俵屋宗達とカラヴァッジョを主人公とした歴史小説です。

歴史小説というと、食わず嫌いの人もいるかもしれませんが、『風神雷神』はいわゆる歴史小説とは違います。歴史の中の「IF(もしも)」をかなり大胆に広げて、「こんなこともあったかもしれない」というところに物語を作りました。
すなわち、俵屋宗達とカラヴァッジョという同時代人がいて、洋の東西は違うものの、もしかしたら2人は会っていたかもしれない、というのがこの小説の肝です。

ちなみに、俵屋宗達は、戦国時代から江戸時代初期の画家です。琳派の祖です。
カラヴァッジョは、16世紀から17世紀初頭のイタリアの画家です。
この時代、日本からイタリアへ、天正遣欧少年使節団が派遣されています。この中に俵屋宗達が紛れ込んでいれば、物理的にも2人は相見まえることができるというわけです。

詳しくは原作を読んでもらうとして、ところで、『風神雷神』の物語は、まず現代から始まります。
ここも原田マハさんお得意の技巧と言っていいですね。
舞台が現代で、実在する京都美術館が出てきて、これまた実在する俵屋宗達の『風神雷神図屏風』が出てくると、現実と小説世界が地続きになって、「これって実話なの?」というふうに思ったりもしますね。
こういうのも1つのテクニックですね。

今回の特集のテーマは、小説をどう読むかというところにありますが、導入部を含め、『風神雷神』をじっくり読み、原田マハさんの作家生活15年の技巧を盗んでみましょう!

(ヨルモ)




『風神雷神』(PHP研究所・1,800円+税)
琳派の祖と言われる俵屋宗達が、天正遣欧少年使節団と一緒にローマに行って、カラヴァッジョに会うというアイデアが光る歴史アート小説。
 
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