【特集INTERVIEW 番外編】安部龍太郎(直木賞作家)

  • 文芸

2020.01.09

【特集INTERVIEW 番外編】安部龍太郎(直木賞作家)

撮影:神崎安理

特集INTERVIEW 番外編


安部龍太郎(直木賞作家)
1955年福岡県生まれ。図書館司書を経て、1990年『血の日本史』でデビュー。05年に『天馬、翔ける』で第11回中山義秀文学賞、13年に『等伯』で第148回直木賞、16年に第5回歴史時代作家クラブ賞実績功労賞を受賞。
2月号(1/9発売)の特集では、直木賞作家の安部龍太郎さんにインタビューしました。ここでは、編集部によるこの番外編をお届けします。
 
並みの実力だったK君は、
それでも夢があきらめられない


いきなり野球の話です。
というより、「いかに思い込めるか」という話です。

ある友人は、小学校から大学まで野球を続けました。
小学校のときはチームで一番うまく、高校のときもエースで、都立の星と言われたそうです。相当うまかったのでしょう。
友人のチームメイトに、そこそこうまい子がいたそうです。
友人いわく、「はっきり言って、ぼくのほうが全然うまかった」。
私の友人をS君、S君のチームメイトをK君としましょう。

K君は並みの選手ですから、中学、高校でも大した結果は出せず、大学でも野球を続けましたが、名門校ではなく、野球では無名の大学でした。
彼の家は全員が教員という家庭でした。彼も将来は教員になるつもりで、それが現実的な進路でした。
「プロ野球選手になりたい」とも思っていましたが、現実的に考えれば実現するはずのない夢でした。

しかし、K君はどうしても夢があきらめきれない。あきらめるにしても、やれることはやりたいと思いました。
それでK君は大学卒業時にプロ野球の入団テストを受けます。
すると、なんと合格!(といってもテスト生に近いですが)、両親には「やれるだけやって、それで一軍に上がれなかったら、そのときは教員になる」と言い、プロ野球選手になります。

 
Sさんは、能力はあったが、
現実的な道を選び、就職する


一方、K君のかつてのチームメイトであるS君は、野球では名門大学を卒業後、一流企業に就職し、平凡ながら幸福な人生を送っています。
大学時代はアメリカ遠征に行ける選手にも選ばれたそうです。アマチュア野球ではずっとエリートだったんでしょうね。
ドラフトに引っかかるほどの実力はなかったようですが、ひょっとすると、社会人野球でならやれたかもしれませんね。
しかし、S君は野球にしがみつくことはせず、サラリーマンの道を行きます。

K君とS君はどこが違ったのでしょうか。
S君によると、「思いの強さ」だそうです。「プロになりたい」という思いが人一倍強かったのだと。

というと、K君のほうが「自分を信じることができた」と考えたくなりますが、S君だって野球エリートですから、もっと自分を信じてもいいはずです。
違いがあるとすれば、S君は堅実で、リスクをとらない人だったということでしょう。

冷静に考えれば、プロ野球選手になったはいいが、それで人生が狂ってしまう人も少なくありません。
20代を野球漬けで過ごし、鳴かず飛ばずで引退。社会人1年生として一からやり直す気にもなれず、再起を懸けて事業を起こすも借金生活。
そんなリスクを考えると、そこまで野球に人生を懸けられないと判断したのでしょう。

そう考えると、何かをなすために必要なものは、「自分を信じられること」より、いざとなったら「リスクを承知で挑戦する勇気」のような気もします。

 
何かをつかむためには、
何かを捨てる必要がある


さて、2月号では、巻頭で直木賞作家の安部龍太郎さんにインタビューしました。
小説家になるにもいろいろななり方があり、処女作で即デビューというような方がいる一方で、苦節十年というタイプもいます。
安部龍太郎さんは後者でしょう。

安部龍太郎さんは高校時代、小説家になろうと志しますが、なるには10年はかかるだろうと思い、卒業後、公務員になります。
しかもその中でも本に関わる図書館司書という道を選びました。
また、同人誌にも所属しました。
書く環境は整ったという感じです。

しかし、なかなかすぐにはデビューできません。
それどころか、1次選考しか通らない。
生活も安定しているし、このまま公務員でいいかと思ってしまいそうです。
安部龍太郎さんは、そう思う気持ちを断つために公務員の職を捨ててしまいます。
背水の陣を敷き、自分を追い込んだわけです。
まさに、リスクをとったわけです。

しかし、単純にリスクをとったわけではなく、プロデビューできると思い込めるだけの努力はしていたはずです。
それをせずには、いくら思い込みの強い人でも、自分を信じることはできません。
棚からぼた餅で転機は訪れないのですね。

皆さんも、自分は何かを成し遂げることのできる人間だ、そう思い込めるだけの努力をして、2020年を飛躍の年にしましょう。

ちなみに、K君は現役引退後、プロ野球解説者を経て、現在は日本ハム・ファイターズの監督をしています。
と言えば、もう誰だかわかりますね。栗山英樹さんです。

(ヨルモ)




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