特集 短編小説のレシピ

  • 文芸

2019.07.09

特集 短編小説のレシピ  
初心者がトレーニングするなら、
まずは短編小説から

昔、新人作家はみんな短編修業をしたそうです。
いきなり長編なんて書かせてもらえませんし、小説誌はそもそも長編を載せられません。
だから、短編を書いて、認められたら次のステップに行くというわけです。

これがいい小説修業になりました。
長編の場合、原稿用紙で500枚も600枚もあるうち、冒頭のほうで2~3枚、余計なエピソードを書いてしまったとします。
全体からすれば1%にも満たない枚数ですし、読者も何日もかけて読むうち、そんなこと忘れてしまいます。

ところが、短編だと、目立つんですね。
「あのエピソード、なんの伏線だった? 結末とかかわらないじゃないか。なんのために書いたんだ。それとも何か深い意味でもあるのか」
突っ込まれまくります。

写真で言えば、きっちりピントを合わせていかないと短編ではだめなんですが、それがいいトレーニングになるんですね。ぜひ短編を書いてください。
全くの初心者なら、3~5枚ぐらいがいいかもしれません。

これくらいの枚数なら、あっというまにマス目が埋まります。
出来事を書く以前に、その経緯や状況などを説明するだけで、もしかしたら半分ぐらい埋まってしまうかもしれません。

それだけに、いかに省略するかが問題になります。
単に削るだけではだめです。文章は削りながら、意味は残します。
このあたりのテクニックは、俳句や短歌の省略法と似ていますね。

 
30枚は長編小説の入り口
まずは30枚を目指そう!

ただ、3~5枚という枚数は、トレーニングには最適ですが、長編の練習になるかと言うと微妙です。少なくともショートショート的な書き方をしていたら、たぶん一生長編は書けません。

ショートショートの書き方は短距離走です。「よーいドン」でスタートし、一瞬で駆け抜けます。この感じでマラソンをやったら、途中で疲れてしまいますよね。リタイアです。
では、どうしたらいいかと言えば、少しずつ距離を伸ばしていくことですね。

5枚の掌編を100編書くとします。100編書いたら、相当筆力が上がっていると思いますし、「5枚を書く」という感覚も身にいていると思います。「なんとなく書き出し、そろそろ終わりかなと思って結末を書いたらちょうど5枚だった」ということができたら、それは5枚の感覚が身についたということですね。

これができると、枚数を倍にして10枚にしてもなんなくこなせると思います。そうなるとあとは意外と早く上達して、20枚、30枚も普通に書けます。もしかすると、50枚、100枚もいけるかもしれません。それくらい、書いて完結させてきた経験は大きいのです。

ただ、枚数が長くなるほど、しっかり構成しないといけなくなります。ショートショート的な枚数は一筆書きのようなもので、瞬間的な体力でいけます。しかし、長編は積み木のようなもので、すべての場面が相互に関連し合いながら積み重なっていないといけません。
その境目は、30枚ではないかと思います。

つまり、30枚は掌編小説のゴールであり、長編小説の入り口ということ。
30枚は、瞬間的な勢いだけでは書ききれず、短い中にもそれなりの計画が必要となる枚数です。

長いものが書けない人は、まずは30枚を目指しましょう。
そして、長編を視野に入れながら、短編の文学賞にも応募しましょう、というのが今回の特集の趣旨です。

(ヨルモ)



〔内容〕
1. 阿刀田高先生に聞く 短編小説の作法
2. 第1工房 アイデアを探せ
3. 第2工房 アイデアを育てる
4. 第3工房 短編の文章作法
5. 第4工房 短編小説のプロット
6. 堀真潮さんに聞く、ショートショートの書き方
7. 短編文学賞ガイド
 ・北日本文学賞
 ・藤本義一文学賞
 ・木山捷平短編小説賞
 ・埼玉文学賞
 ・伊豆文学賞

 
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