特集 エンタメの極意がここに! シナリオ創作術
- 文芸
2019.08.08

イラスト:はしのちづこ
エンタメの極致
日本初の映画を調べてみたら、撮影したのは浅野四郎という人でした。
1897年(明治30年)のことです。
この人は写真店で働いていたそうで、店主に「何か撮ってこい」と命令され、「日本橋の鉄道馬車」というタイトルの映画を撮りました。
単に珍しい風景を撮ったという感じだったのでしょうね。
浅野四郎はその後、「死人の蘇生」「化け地蔵」といったタイトルの映画を撮っています。タイトルから想像すると怪談ですかね。
当時、大衆のための娯楽というと、落語か講談か、または江戸以来の草双紙に載っているような物語、歌舞伎、狂言などですね。
映画の中で、ストーリーを展開しようとしたら、当然、これらを参考にするはずです。
というより、すでにある物語をそのまま映画にしようと考えるでしょう。
つまり、映画や、その後に生まれたテレビドラマやラジオドラマは、かつては新しいジャンルであり、後発組でした。
そして、ご存じのように、映画やドラマはその後、どんどん進歩し、今や立場が逆転しています。他のジャンルの創作者たちが映画やドラマを観て、それを応用するようになっています。
脚本家はメンバーの一人
映画やドラマは、集団で作っていきます。
最初は脚本家が一人で考え、プロットを提出するかもしれませんが、その後、プロデューサーやディレクター(監督)などがみんなで面白くしていきます。
「プロットを揉む」と言いますが、「ここはこうしたほうが面白い」「この展開では盛り上がらない」のように、いろいろな観点からチェックしていきます。
余談ですが、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、もともとのシナリオでは、タイムスリップした30年前の過去において、1.25ジゴワットの動力を自力で作って帰ってくるという設定だったそうです。
しかし、その後、自力でできてしまうのでは面白くないという意見がでて、そこで落雷を利用するというアイデアを得たそうです。たぶん、このアイデアがなければ、この作品はここまでヒットしなかったかもしれません。
閑話休題。
映画やドラマを作るためにはお金がかかります。これは大きな弱点です。
小説や漫画のように、紙とペンがあればOKというわけにはいきません。
しかし、この弱点が転じて、映画やドラマはエンタメとして発展しました。
プロデューサーやディレクター、スタッフ、役者などが、より面白くしようとして総がかりでアイデアを出し合うわけですから、一人で考えるよりは相当磨かれるはずです。
さまざまな技術を紹介
映画やドラマを観ていると、すごい!と思うシーンによく出くわします。
単に娯楽として観ていると見過ごしてしまうのですが、自分で書くつもりで観ると、うまいなあとうなってしまったりしますね。
たとえば、昔、『ペイ・フォワード』という映画がありました。
冒頭部分を時系列で説明すると、
2. 少年は親切心でそのホームレスを家に招待する。
3. 少年の横でホームレスは食事をしている。
4. 少年の母親から電話がかかってきて、ホームレスとかかわるなと注意される。
5. 少年は母親に「わかった」と言う。
で、映画では以下のような順番になっています。
4. 帰宅後、少年の母親から電話がかかってきて、ホームレスとかかわるなと注意される。
5. 少年は母親に「わかった」と言う。
3. (カメラが引きになり)少年の横で食事をするホームレスが映る。
2. 少年が親切心でホームレスを家に招待したとわかる。
これは手品に近いですね。
「あ、そういうことだったのか」という種明かしがあって、すごくわくわくします。
こうした「あ!」とか、「え?」とか、「なるほど!」とか、「そうだったのか!」があると、心が弾んで、この快感をもっと味わいたくなりますよね。
つまり、先を観たくなります。
これがエンターテインメントの技法ですね。
物語を作るための必須のテクニックです。
こうした映像のテクニックは、映画やドラマ関係者だけでなく、小説家や漫画家にも注目され、実際、応用されています。
今回の特集では、シナリオだけでなく、小説にも応用できるさまざまな技術を紹介しています。
(ヨルモ)
1. 企画アイデアを探そう!
2. プロットを作ろう!
3. シナリオをもっと面白く!
4. 柏田道夫先生に聞く シナリオ公募対策
5. シナリオの基本と表現
6. シナリオ公募年間スケジュール
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