特集 “書く力”の秘薬! スローリーディング その読み方では、文章力はつかない!

  • 文芸

2019.12.09

特集 “書く力”の秘薬! スローリーディング その読み方では、文章力はつかない!

イラスト:あべさん


どう書くかは、どう読むかにかかっているということを知っていますか。
いくら多読を心がけても、読み方が悪いと、うまく書けません。
そこで今回は、書くための読み方、スローリーディングについて解説します。

山は登頂だけが目的ではない!
本を読むことも同じ

最近は山登りやトレッキングが人気だそうで、早朝の電車は山に行く人で賑わっていますが、「山に行くのは登頂が目的」だとして、それなら一気に車で山頂まで行けばいいのかというと、そういうことではないですよね。

足が不自由な方や高齢者の場合は、自動車道を使って山頂まで行ってもいいのですが、そうでない場合は、やはり、多少しんどん思いをしつつ、紅葉を見たり、鳥の声を聞いたり、仲間とたわいもない話をしながら登るのが楽しいですね。

効率を考えると、自動車やロープウェイを使ったほうが早いし、楽です。
しかし、面倒な過程があるからこそ得られる副産物も多いのですね。
帰りに天然温泉に寄ってビールを飲んだときの「くう~」って感じは、大汗をかいて一歩ずつ登ったからこそ得られた気分ですよね。

ひるがえって言うと、小説を読む場合でも、効率ばかり考えると、むしろ、効率が悪くなってしまうことがあります。
読了することが目的なら効率的に速読するのもいいのですが、書き方を学びたい人は速読ではだめなんですね。

 
筋だけを追うような読み方では、
書くことの役には立たない!

小説を読んで、「小説の書き方」を学ぶとしましょう。
やり方は、2通りあります。

1つは、多読です。なるべく多く、それこそ考える暇もないくらい読みます。
たくさん読んで、そこに共通する書き方を見出し、「これが小説の書き方だ」を体感するわけですね。
これは帰納的な方法です。
欠点は、たくさん読まなければなりませんので時間がかかることです。

もう1つは、寡読です。お好きな1冊だけをゆっくりじっくり読みます。暗記するぐらい何度も読みます。
1つの作品には大小さまざまな技巧が使われていますが、一読しただけではわからないそうしたテクニックを、1つの作品からくみ取っていきます。
これは演繹的な方法です。
欠点は、読書の幅が薄くなることです。

多読も寡読も一長一短があり、どちらがいいということはありません。
多読であったり寡読であったりしていいのですが、筋だけを追うように速読するのでは、小説の書き方を学ぶという点では意味がありません。
『あらすじで読む名作』といったたぐいの本がありますが、内容だけ知っていても書くことにはなんの役に立たないのです。

 
書くために読むのであれば、遅読、味読、熟読がオススメです。
いわゆる、スローリーディングです。

これを最初に始めたのは、灘高校の国語教師だった橋本武先生(故人)です。
橋本先生の授業では教科書は使わず、3年かけて中勘助の『銀の匙』を読みます。

文庫本で200ページ足らずの自伝的小説ですから、1週間に1ページぐらいのペースで読んでいくわけですね。
読むというか、調べたり、考えたり、想像したりということのほうが多い読み方です。
でも、これがすごく効果的なんですね。

橋本先生がこのスローリーディングを始めた昭和25年当時、灘高校は公立高校のすべり止めだったらしいのですが、この5年後、灘高校は進学校になります。
そうなるまでには各方面からのさまざまな努力があったとは思いますが、橋本先生の授業で国語力が上がったこともその要因の1つだったでしょう。

皆さんにもぜひスローリーディングをしてもらいたいと思います。
そこで、本特集では、スローリーディングのやり方や効果について解説し、併せて、スローリーディングによる名文採集の結果も掲載しています。
お好きな小説を用意して、さあ、今日からスローリーディングを実践してみてください。

(ヨルモ)

【公募ガイド1月号 特集内容】
 
1.これからはスローリーディングだ!
  スローリーディングとは何か、どんな読み方かを解説。
2.実践!スローリーディング
  文豪の名作などを使い、答えのない答えを読みとってもらいます。
3.スローリーディングで名文採集!
  ゆっくり読むからこそ目に留まる凝った表現を集めてみました。

 

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【特集】“書く力”の秘薬! スローリーディング
【INTERVIEW】原田マハ(小説家)
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