特集 オモテとウラがわかる! ヒルモとヨルモの小説・エッセイ相談室

  • 文芸

2020.02.07

特集 オモテとウラがわかる! ヒルモとヨルモの小説・エッセイ相談室

イラスト:松元まり子


小説やエッセイの疑問に対する回答は、コインのオモテとウラのように裏表一体。
教科書的な王道の答えもあれば、それとは逆のレアケースもあります。
今回は読者の質問にオモテとウラを回答し、疑問の本質に迫ります!
 
小説を書くとき、取材はしたほうがいいか

今回の特集では、小説とエッセイの疑問に対して、オモテとウラの二つの回答を用意しました。
誌面で扱った質問はあとで紹介しますが、ここでは特別編として、誌面とは別の内容にものを二つ挙げましょう。

一つ目は、「小説を書くとき、取材したほうがいいですか」。
オモテは、「取材すべき」です。
ウラは、「取材は必要ない」です。

【オモテ】
対象がメイン舞台である場合や主題である場合は、取材すべきです。
以前、第5回ふるさと秋田文学賞の選評の中で、選考委員の内館牧子さんはこう書いていました。

まず小説の部ですが、これは毎年問題になることです。書きたいテーマの周辺をネットや資料で調べ、座して書いているものが目立つのです。
作家、脚本家は、ものを書く時、現地に行き、人と会い、役に立ちそうにないことをも自分の目と耳でつかまえます。他に職業を持っている応募者がそのようにはできないにせよ、できうる限り、自分で取材して確かめないと、物語が「ウソっぱち」になってしまいます。ご存じのように、西木正明さんと塩野米松さんは文壇でも屈指の取材派ですから、一読しただけで、これはネットで調べてるねとか、現在はこんな状況じゃないよとかすぐにわかります。書く上では、とにかくよく歩き、確かめ、対象の持つ香りを自分にまとわせることが必要だと改めて思わされています。
(第5回ふるさと秋田文学賞 内館牧子さんの選評より)

確かに、現場に立つというのは大事ですね。刑事じゃないけど、「迷ったら現場に行け」ですね。現場を見て書いた実感は、頭で書いた表現を軽々と超えます。

【ウラ】
純文学、または対象がメイン舞台や主題ではない場合は、取材は特に必要ではありません。
村上春樹さんはあるインタビューの中で、こう答えています。

――例えば今回だったら画家が主人公なので、ディテールがありますよね。専門的なことを調べる必要のある描写も出てくると思うんですけど、最初から、そういう場面も書き込んでいくんですか。それとも……。
そういうのは最初の段階ではそれほど細かく書き込みません。だいたいは頭の中で想像して書いちゃう。細かいところはあとで調べて訂正すればいいんです。たとえば日本画家は絵筆のことはブラシとは呼ばないとか……。
(川上未映子 村上春樹『みみずくは黄昏に飛びたつ』)

そしてこうも言っています。
「ウィキペディアか何かみたいなもので、簡単に調べられることは少しチェックしたりするけど、できるだけそういうものも見ないようにしています」
その理由は、
「『こんなもんだろう』と自分で想像したほうがうまく書けるから。いろんなディテールを引っ張り込んでくると、ディテールが幅をきかせて、文章がうまく流れていかないことがあります」
とのことです。

もちろん、知識ゼロでは書けませんし、取材が必要であれば資料にあたったりもするのだと思います。
また、上記の談話は第一稿のことですから、最終稿に至るまでには資料で確認すると思います。
しかし、「取材しないで済むのであれば取材はしない」というのが基本スタンスです。

端的に言えば、1%の知識があれば、残り99%は想像力で補い、見てきたかのような嘘がつける、というのが作家の資質なんですね。
 
書く前に、プロットは作るべきか

プロットを作るべきかどうかも、白黒はっきりしない問題です。
オモテは、「プロットは作るべき」です。
ウラは、「プロットは作らないほうがいい」です。

【オモテ】
「プロットを作る派」はミステリーの作家に多いかもしれません。
謎解きプロパーの場合、即興で変えるということはしにくいですし、やはり骨組みはしっかり作りますね。

中山七里さんはプロットを綿密に作り、しかも、書き出してから変更がないと言っていました。普通は書き出すと変えたくなるものですが、ミステリーの場合は変に変えると最後の謎解きで辻褄が合わなくなったりします。それで変えないのかもしれません。

五十嵐貴久さんも、初心者にはプロットだけで100枚書くことを勧めています。
これは途中で挫折しないように、まずはいったん完成させてしまいましょうという意図ですね。

しかし、プロットだけで100枚は多数派ではないでしょう。
多くの作家は、A4用紙1枚のざっくりした概要のことをプロットと呼んでいるようです。

三幕構成で言うと、舞台設定と人物設定、カタリスト(主人公が目的を見出す事件)、第1ターニングポイント、ミッドポイント、第2ターニングポイント、結末ぐらいを大ざっぱに考え、あとは書きながら考えていく。これが多数派でしょう。

【ウラ】
「プロットを作らない派」は、基本的には書きながら考えていくタイプです。
中には、「結末も何も考えない」という作家もいます。
これは考えたら、恐ろしいですね。地図を持たずに森に入るようなものです。
迷ったらアウト、ゲームセットですね。

もちろん、全くのノープランではなく、森に入る前には地図を何度も見て、
「森を抜けるためには何十というパターンがある。どれを選ぶかは現場で決めよう」
ということなのかもしれませんが、それにしても、どんな成算があって書き始めるのだろうと思ってしまいますね。

しかし、プロにとってはプロットなしで書くことも、そんなに難しいことではないのかもしれません。
たとえば、原稿用紙3枚だと、適当に書き始め、そろそろだなと思って終わりにすると、ぴったり3枚だったりします。3枚なら3枚の感覚を体で覚えているのですね。

同じことが、慣れれば300枚でも500枚でもできます。
そのような人にとってはむしろプロットは邪魔で、想像する力を弱めます。
これは、取材しないほうが想像力が働くというのと似ていますね

公募ガイド3月号(2/7発売)では、このように一つの質問に対して、オモテとウラの両方を回答しています(一部、オモテウラのない回答もあります)。
下記の質問の中から気になるものがあったら、ぜひともチェックしてみてください。
 

(ヨルモ)

【質問項目】

〔鈴木輝一郎先生に聞く編〕
1. プロットとは何?
2. キャラクター設定はどこまでしますか。
3. 登場人物の適正人数は?
4. 史実と違うことを書く場合、名前を変えれば大丈夫?
5. ストーリーが平板と言われます。どうすればいい?
6. 先が読めると言われます。読者の予想を裏切るには?
7. 展開が早いと言われます。1場面の適正枚数は?
8. 話の矛盾点の洗い出しをするには?
9. 文学賞を獲るための3カ条は?

〔山口恵以子先生に聞く編〕
10. 地の文とセリフの比率はどれくらいが適正ですか。
11. 比喩などの表現に、どこまで凝っていい?
12. 自分の文体は、どうしたら作れますか。
13. 文章が上達するトレーニング法はありますか。
14. 「文は人なり」と言いますが、文章に人柄が表れるには?
15. 締めで、メッセージを書いていいですか。
16. 役に立つ情報を盛り込んだほうがいいですか。
17. ウソっぽくならないようにするには?
18. 文学賞に応募しようにも完結しません。どうしたら完結しますか。
19. 書いている途中でどうせ駄作だと思ってしまいます。どうすればいいですか。
20. 小説とエッセイ、どっちが向いているか、適性をはかる方法はありますか。
21. 何を書いていいかわかりません。どうすればいいでしょうか。

〔小説の文章・基本編〕
22. 小説の書き方のマニュアルはありますか。
23. テーマはなければならないものですか。
24. 小説は描写で書くというのは本当ですか。
25. セリフは短く、説明ゼリフはやめたほうがいい?
26. セリフ始まりの場面を書いてもいいですか。
27. 実話のほうがリアリティーがありますよね?
28. プロのまねをするのは一番ですよね?
29. 一人称と三人称、どちらにしたらいいですか。
30. 視点の取り方について教えてください。
31. 主人公は必要ですか。1人のほうがいいですか。
32. 取材(下調べ)は、今は書籍よりネットですか。
33. 説明文を書いて、それでも面白く読ませるには?
34. 語り(ナレーション)がどういうものかわかりません。

〔小説の仕掛け編〕
35. 謎を残して終わるのは禁じ手ですか。
36. ご都合主義の展開は禁じ手ですか。
37. 回想ばかりしているのは禁じ手ですか。
38. 夢オチで終わるのは禁じ手ですか。
39. 伏線を回収しないのは禁じ手ですか。
40. 結末はハッピーエンドのほうがいいですか。

〔エッセイと日本語編〕
41. エッセイにウソを書くことは禁じ手ですか。
42. 他人の体験談を書いてもいいですか。
43. つれづれなるままに書けばいいんですよね?
44. 日本語の文法は、正しく厳密に使ったほうがいいですか。
45. 同じ作品の中では、表記は統一する?
46. 「を」より、「が」のほうが自然な言い方?
47. 過去に起きたことは過去形で書く?

〔応募マニュアル編〕
48. 二重投稿は禁じ手ですか。
49. ストーリー自体はまねしても問題ないですか。
50. 締め切りぎりぎりまで推敲したほうがいいですか。
51. 手書き原稿でも問題ないですよね?
52. 入選に年齢は関係ないですよね?
53. カテゴリーエラーは気にしたほうがいい?
54. あらすじは結末まで書くのですよね?
55. 40字×30行は原稿用紙換算3枚ですか。

〔予選委員に聞く編〕
56. 一度に何編届き、その中の何編を残す?
57. 1編を何時間で読み、何日間で返す?
58. 評価シートはある? 全作品に寸評を書く?
59. 作品以外の情報も予選委員にわかる?
60. 題材について要望はありますか。
61. 文章について要望はありますか。
62. 書式について要望はありますか。
63. 本選考委員や編集部の嗜好は考慮しますか。
64. どんな作品を評価しますか。
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