特集 あなたに最適な公募と書き方がわかる!童話賞ナビ

  • 文芸

2020.03.09

特集 あなたに最適な公募と書き方がわかる!童話賞ナビ

イラスト:伊藤奈緒


童話賞に応募したいけど、書き方がわからない。
それは添削実例で教えましょう。
どこに応募したらいいかわからない!
それは主催者と受賞者コメントによって示しましょう。
目指せ、最優秀賞!
 
童話初心者の大きな勘違い

初めて童話を書く人の作品には、以下のような傾向が見られます。

1. 教訓的な話、残酷な話。
2. 特に理由もなく動物が主人公。
3. 特に理由もなくメルヘン調。
4. 主人公が最後に美しい死を迎える。
5. 主人公が大人で、子どもの頃を回想する。

この手の作品は、予選で落ちる可能性が高いです。
童話は子どものためのお話ですが、道徳を教える道具ではないからです。
童話に対する認識がちょっと違うわけですね。
一方、そうした上から目線の作品でなくても、選外になる作品もあります。

1. グレード(読者の年齢層)が違いすぎる。
2. グレードが低い割には話が複雑。
3. グレードと主人公の年齢、題材が合っていない。

これは読者対象が見えていないというのが大きな問題です。
童話の読者は子どもです。子どもが理解できる話、子どもが共感できる話でないとだめというか、これは大前提ですね。
 
民話は面白い! しかし、童話とは違う

こうした童話観のズレは、童話と民話を混同していることに原因の一端があります。
広義の童話は、民話、寓話を含みますが、これらはもともと大人向けに書かれたもので、童話=子どももためのお話という定義からは外れます。
「イソップ物語」が有名ですが、これは教訓的、道徳的な民話を集めたものですね。

民話は残酷です。「赤ずきん」もオオカミのお腹を割いてしまいます。普通だったら大流血です。
「かちかち山」も、タヌキを捕まえてタヌキ汁にしようとしたおばあさんが、逆に殺されて、おばあさん汁にされてしまいます。かなりえぐい設定です。

民話は庶民の欲望、恐怖、畏怖といったものを象徴的に語ったものが多く、人々は物語として語られることで、気分的にすっきりしたり、説明がついて納得したり、欲望に走りがちだった心に抑制をきかせてきたりしました。
そういう意味では必要なものですが、童話とは違います。
 
子どもを教育しようという発想はだめ

19世紀になると、アンデルセンが創作童話を書くようになります。これが日本の児童文学にも影響し、鈴木三重吉の児童文学雑誌「赤い鳥」を中心に、オリジナルの童話が書かれるようになります。
この頃の童話は、子どもの教育を目的とした教訓という意味合いが強かったようです。

鈴木三重吉は漱石門下ですから、作家仲間に声をかけて童話を書いてもらいます。
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』もそうですが、この頃の童話は、主人公が欲を出すと必ず罰が当たるんですね。
当時は、人は欲張ってはいけないという倫理観が強くありました。滅私奉公こそが是で、子どもにもそのような思想を育んでほしかったのでしょう。

今もそのように思う人もいるかもしれません。
「こんな子どもになってほしい、こんな子どもにはなってほしくない」という気持ちを込めていけないわけではありませんが、しかし、正面から押しつけるのはどうでしょうか。その時点で子どもに「ノー」と言われますね。
 
有名な童話作家の作品にもいろいろある

それなら世の中にはどんな童話があるんだと、著名な童話作家の作品を読んだとしましょう。そのとき、有名だからというだけでお手本とするのは早計です。

たとえば、小川未明に「眠い町」という童話があります。大人が読んでも深い寓意を感じる優れた作品です。ネタバレですが、あらすじを書くと……。

ある町に来ると、自然と体が疲れて眠くなる。主人公もその町に行って眠ってしまうのですが、起きるとおじいさんがいて、
「私は昔からこの世界に住んでいた。けれど、どこからか新しい人間がやってきて、私の領土に鉄道を敷き、汽船を走らせ、電信をかけた。いつか一本の木も一つの花も見られなくなるだろう」
と言う。だから、世界中に疲労の砂をまいてくれと言う。その砂をかけると鉄は錆び、人は疲れて眠ってしまうのだと。
主人公はその砂をまき、砂が尽きると元の町に戻ってくるが、そこには昔見た建物はなく、鉄工場が建てられ、電線が張られ、電車が縦横に走っている……。

なんだか環境破壊に対する警告のような寓意を感じます。進化に対しては個人では太刀打ちできないと言っているようなアイロニーも感じます。
しかし、今の童話賞で評価されるものかどうか。
童話賞だったら、この結末では「希望がない」と判断されるかもしれません。
 
思いをストレートに書かず、フィクションに仮託する

入選に向く題材、グレードの傾向などは、ある程度は気にしたい。少なくとも、まるっきり違うということにはしたくありません。
しかし、それよりも「これが書きたい」という思いが大事です。
思いなくして、形ばかり気にしても、いい作品にはなりにくいです。

とは言え、「いつも人に優しく、決していじめなどしない子であれ!」といういい子を強要するような話は、ストレートに書かないほうがいいです。
そうしたモチーフはフィクションに仮託する。物語の裏側に隠す。そして、物語は物語で楽しめるように書きたいですね。

(ヨルモ)


[magazine_202004_tokushu]
公募ガイド2020年4月号
公募ガイド 2020年4月号
2020年3月9日発売/定価680円
【特集】童話賞に挑戦しよう!
【INTERVIEW】石崎洋司(ベストセラー『黒魔女さんが通る!!』作者)、牧野節子(白百合女子大学・共立女子短大講師)
外部サイトで電子版購入:

みどころ

大人気連載! 投稿募集

プロに作品をみてもらえるチャンス! 入賞すると雑誌に掲載します。奮ってご応募ください。

web限定連載記事

バックナンバーの購入