【巻頭INTERVIEW 番外編】額賀 澪(小説家)

  • 文芸

2019.07.09

【巻頭INTERVIEW 番外編】額賀 澪(小説家)

撮影・賀地マコト

巻頭INTERVIEW 番外編


額賀 澪(小説家)
ぬかが・みお。1990年生まれ、茨城県出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。2015年、第22回松本清張賞『屋上のウインドノーツ』と第16回小学館文庫小説賞『ヒトリコ』を同時期に受賞。近著に『拝啓、本が売れません』『タスキメシ』『風に恋う』『獣に道は選べない』などがある。
8月号の巻頭インタビュー「YELL」では、小説家の額賀澪さんにご登場いただきました。その番外編をお届けします。
 
全員が作家志望という教室で
切磋琢磨した4年間

額賀澪さんと初めて会ったのは、2015年4月21日、松本清張賞の発表を待っているときでした。
4年前なのでうろ覚えですが、記者控え室で近くの席にいた人がスマホを見ながら、
「W受賞だって」
と言ったことをよく覚えています。

おそらく、記者発表直前にネットで速報が流れて、そこに、
〈先日、『ヒトリコ』で小学館文庫小説賞を受賞した額賀澪さんが、今度は『ウインドノーツ』で松本清張賞を受賞〉
といったことが書かれてあったのではないかと思います。

額賀さんは、日大の芸術の文芸学科出身です。
この学科は、全員が作家志望だそうです。
同好の士がたくさんいて楽しそうですが、緊張感もありそうですね。

「ねえねえ、何読んでいるの?」
普通ならなんでもない会話ですが、相手が作家志望では微妙です。

「岩野泡鳴だよ」
「ふーん、そうなんだ。ほーめー?」
相手が知らない作家名を出した場合、内心、「勝った」と思いますが、そこから話が弾んで親しくなるということはなさそうです。

一方、親しみやすい作家名を出した場合、
「司馬遼太郎だよ」
「ああ、面白いよねえ、オレも好きだよ」
この場合は賛同を得られる可能性が高いですが、相手が文学青年であれば、
「所詮は娯楽小説だ」
下に見られるかもしれませんね。

でも、それが刺激になるんですね。
「そんな小説があるんだ、今度読んでみよう」とも思うし、
「負けてられない。オレももっともっと勉強しなければ」と努力する。
切磋琢磨するわけですね。

 
応募すれどことごとく落ちる
不遇の時代を経て一気に爆発!

額賀さんは、高校のときは毎日図書室に通う生徒だったそうです。
図書室には、書架の高いところにある本をとるために脚立が置いてあったりしますが、机で読まず、脚立の上で読むのが好きだったそうです。
確かに、あそこは一人になれる空間かもしれません。

1日1冊という感じで本を読んでいた額賀さんですが、高校3年の秋には進学が決まり、そのとき、先生から「今でないと読めない本を読むといい」と言われたそうです。
それで、読破したのが、プルースト『失われた時を求めて』。

この話を聞いて、母校の教頭先生も読み始めたという。
それで母校に講演に行った際、図書室で読者カードを見たところ、教頭先生は1巻で挫折していたそうです。
無理もないですね。私の知人でも、『失われた時を求めて』を読破した人は1人しかいません。それほどの超大作ですね。

額賀さんはこれだけの読書経験があったから文学賞W受賞という快挙も成し遂げたし、デビュー4年で単著13冊という多作な作家にもなれたのだと思いますが、そんな額賀さんでも不遇の時代はあり、大学時代と社会人になって3年はなかなか受賞に至らなかったそうです。

「エンタメ系の文学賞にはほとんど応募した」という額賀さんですが、ということは、つまり、ことごとく落ちた時代もあったわけですね。
坊っちゃん文学賞に至っては、最終候補者として愛媛県松山まで招待されたが、受賞できず、そのまま帰京したそうです。
候補のまま帰るってつらい……。

しかし、それもあって、今の飛躍があるわけですね。
今思うと、応募すれど受賞できない不遇の時代は、ジャンプする前に一瞬沈む、あの瞬間だったのかもしれませんね。

(ヨルモ)

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