二十七杯目は「コピーしか考えない2ヶ月があってもいいじゃないか。」第55回宣伝会議賞グランプリ・林次郎さんインタビュー(完結編)

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2018.08.31

世の中のコピーは、どんな人たちが、どのように作っているのだろう? コピーライターであり公募ガイドスタッフのダイゴロが、日々のコピー作りについて語ります。

二十七杯目は「コピーしか考えない2ヶ月があってもいいじゃないか。」第55回宣伝会議賞グランプリ・林次郎さんインタビュー(完結編)

(二十六杯目より)

林さん:「数を書く」という教わった基本を守り、毎回ノートにコピーを書くことを実行してきました。その中からいいコピーをExcelにひたすらまとめる。実はマウスを持っていない人間でして。PCへのまとめ入力と応募の際は毎回、手の痛みと戦っています(笑)

 

————プロのコピーライターでないにも関わらず、過去3回連続で宣伝会議賞の贈賞式参加という偉業を「量を書くこと」で実現した林次郎さん。しかしその輝かしい記録は、第54回で一度止まってしまいます。当時、林さんに何があったのでしょうか。

林さん:これまでと同じように書いていれば獲れるだろう、そう考えて54回で提出した本数は780本でした。毎年毎年やって実力がついているのだから、少しだけ減っても問題ないだろうと思ってしまったんですよね。しかし、あの年は贈賞式に招待される連絡がこなかった。毎年2月に事務局から呼ばれ、3月の贈賞式に参加していたのですが、電話が鳴らないまま2月が終わってしまったんです。

 

————結果を出してきたことから生まれた、小さな慢心。それが思わぬ結果につながってしまったと林さんは当時を振り返っていました。

林さん:例えば審査基準の変化とか、他に何か原因があったのかもしれません。でもやっぱり、自分のなかにあった甘さが理由だったんだなと思っています。PCから見ることになった贈賞式の中継は、ぐっとこみあげるものがありましたね。「ああ、俺、今年はあの会場にいないんだ」と。

 

————そんな胸中を経て、その半年後に始まった第55回。この時、林さんは計画の一つとして「応募本数1000本超え」を目標にしたそうです。

林さん:最終的に出した本数は1069本。一度も1000本を超えたことがなかったので、この年は思い切って挑戦することにしました。2000本まで書く……となると流石に質が落ちるなと判断し、1000本を絶対に出そうと。

 

————その一方で、林さんは別の計画も立てていたそうです。

林さん:1日2課題、コピーを書く。これを2ヶ月間、毎日やり続けることにしました。計画通り進めることができるなら、46の課題を23日で1周することが可能だろうと。46日で2周し、締め切りの60日までまだ余裕があるはず。そして残りの期間を、全体的なチェックに回すことにしたんです。

 

————「量を書く」だけでなく「毎日、書き続ける」。例年は書かない日もあったそうですが、54回での悔しさをバネにこの2つの計画をやりきれたとのこと。その過程で、あのグランプリ作品

「現金なんて、お金の無駄づかいだ。」(クレディセゾン)

が生まれたのです。

 

林さん:ふと思いついた瞬間を逃さぬよう、スマホでのメモも同時に行っていました。最初にメモした時は「現金は金の無駄。」というフレーズでして。そこから「このままで意味は通るのか」と考えたり「もっと長く語ったほうがいいかな」と言葉を付け加えたり。その試行錯誤を繰り返した結果、あの形に落ちつきました。

 

————贈賞式では「その辺を歩いていたら、たまたま生まれたコピー」と答えていたという林さん。しかし、会場で審査員の方から「そのコピーはただの偶然から生まれたのではない」と指摘を受けたそうです。

林さん:「考えてノートに書く、考えてノートに書く」を毎日ひたすら繰り返す。そうすることで脳から無駄な情報の削ぎ落としがされ、考え方や表現の仕方が洗練されたのだと教えていただきました。コピーをノートに書くって、要は脳にある情報を外に出していく行為なんですよ。地道に行った「無意識の情報のそぎ落とし」こそがこのコピー誕生につながったんだと言われ、納得しました。

————応用技術や技法に走るのではなく、基本的な努力を毎日すること。54回の挫折からその大切さを学んだ林さんは、56回に挑戦する皆さんに向けてこんなメッセージをくださいました。

林さん:もし結果を出したいなら、とにかく書き続けてください。あとから挽回できるからのんびり書こう、今日は考えなくていいやといった意識は、何かしら響きます。そして書き続けた結果、グランプリとして名前が呼ばれ、壇上に立ち多くのカメラが自分に向けられるたまらない瞬間をぜひ味わってほしい。それまでの努力が全て報われるのですから。

「コピーしか考えない2ヶ月があってもいいじゃないか。」

今年挑戦する皆さんに向け、この言葉を最後にお伝えしたいです。

宣伝会議賞だけでなく、多くの公募コンテストが開催されるこの秋。募集期間の取り組み方次第で、賞金や結果以上の価値を得られるのかもしれません。今回の取材を経てそんなことを考えつつ、すっかり氷の溶けきったアイ◯カフェオレを、ぐいっ。

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