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vol.01 イケガミヨリユキ×工藤玲音 対談

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2022.04.15

絵と短歌のコラボレーション企画「絵to短歌」。工藤玲音さんが、毎回変わるイラストレーターの絵から短歌を詠む、季刊公募ガイドの連載です。ウェブでは、制作後におこなった工藤さんとイラストレーターの対談をお届けします。

お題 | 遊園地

イケガミヨリユキ

1993年生まれ。2019年「ボローニャ絵本原画展」入選。作品集に『PETALS』、『イケガミヨリユキ作品集』。2021年、映画『竜とそばかすの姫』にキャラクターデザインで参加。

工藤玲音

1994年生まれ。コスモス短歌会所属、著者に第一歌集『水中で口笛』、中編小説『氷柱の声』、エッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』『うたうおばけ』など。

[対談]
イケガミヨリユキ
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工藤玲音

「ひかりの街」の外側のものを大事にしたい

今回のお題「遊園地」は、二人にとって馴染みのないものだったという。作品の制作過程やお互いの作品への感想のほか、普段の制作についても聞いた。

01_遠くに見える「遊園地」

いくつかのお題候補から「遊園地」をイケガミさんに選んでいただき、絵を描いていただきました。どうして「遊園地」を選んだのでしょうか。

イケガミ:今まで遊園地をモチーフに描いたことがなくて、今後も提案していただかないと描かないだろうなと思ったので選びました。いま住んでいる場所の近くには、遊園地など華やかな感じの遊ぶ場所があまりなくて。今回の絵は、どこかへ行った帰りの高速道路で、遠くのほうに遊園地が見えたときの記憶から想像を膨らませました。

工藤:私も、遊園地がある場所から離れたところで生まれ育ったので、手触りのある記憶がありませんでした。遊園地のCMで、夜にすごく大きなメリーゴーランドが回っているというものを見たことがあるのですが、私の中の遊園地って、行ったこともないその遊園地なんですよね。メリーゴーランドも乗ったことないんですよ。

イケガミ:ないです、私も。

工藤:そうですよね。でも、遊園地の中で一番心を寄せやすいのがメリーゴーランド。観覧車はロマンチックの象徴で、ジェットコースターははしゃぐ人たちの象徴みたいな感覚があります。メリーゴーランドは遊園地を一番クラシックに楽しんでいる人たちの乗り物という気がして、好感が持てるというか。私は学校の団体行動とかでどこかへ行っても、はしゃいでいる人を遠目に見ているみたいなところがあります。そこにいる間は帰りたいと思っているのに、帰り際は誰よりも帰りたくないような気持ちになる。ひねくれているんですよね。

イケガミ:私も同じようなタイプです。

工藤:あと実は、学生の頃に初めて商業出版の本に載ったのが「冬のメリーゴーランド」という短編小説で(『ショートショートの宝箱 短くて不思議な30の物語』光文社文庫)。夜のメリーゴーランドに、疲れたOLが乗るっていう話なんですが。

イケガミ:絵と一致してる!

工藤:だから絵が来てびっくり!
 それから、イケガミさんの絵はジェットコースターと観覧車を遠くに見るような構図になっていますよね。絵自体の構え方が真正面じゃないところが、私とイケガミさんは似ているのかもしれないと思いました。はしゃいでいる人を描くのではなく、それを遠くから見ているっていう。

イケガミ:私も、工藤さんの『水中に口笛』(左右社)と『うたうおばけ』(書肆侃侃房)を読んで、心に同じ部分がある人なのかもって思って喜んでました。

02_「ひかりの街」を選ばなかった側

イケガミ:今回の短歌の2首目に「きみ」って出てきますよね。短歌を読んで、私はこういう存在を求めていたんじゃないかという錯覚が起こりました。「きみ」みたいな存在と一緒に遊園地を楽しみたかった、と想像して切なくなってます。

工藤:ありがとうございます。
 短歌は、たてがみにしがみついている女の子が、ちょっと遠くから遊園地を見ていたので、自然と俯瞰の視点になりました。遊園地のさらに外側を回るメリーゴーランドが、銀河鉄道のような感じでそのままどこかへ行くかもしれない。そういう距離の取り方で詠みました。

イケガミ:メリーゴーランドなのに遊園地の外側に描いていることにいま、気がつきました。

工藤:この絵を含むイケガミさんの作品は、絵の中にレイヤーがたくさんあるように感じます。メタ的な視点を現在の視点と一緒に描いている。凄みを感じて、好きなんですよね。
 それとイケガミさんの絵は、ファンタジーじゃないと思うんです。リアルだから全部描いているのだと思うんです。逆ファンタジーというか。

イケガミ:ファンタジーではないのですが、よく言われます。よくも悪くも全部描いてしまいますね。「逆ファンタジー」、しっくりくるかも。

工藤:凄みがあると感じるので、「かわいい」で終わるものではないだろう! って。この絵には、はしゃいでいる人のにぎやかさと、先ほどの「帰りたいのに帰りたくない」みたいなひねくれた気持ちも入っているように見えます。

イケガミ:名残惜しさというか。

工藤:この女の子も、向こう側を向いているようにも見えるし、たてがみに顔をうずめているようにも見える。自分でもちゃんと掴んでいるものはあるんだけど、ちょっと遊園地のにぎやかさが気になってもいるみたいな。絶妙な角度の顔ですよね。

イケガミ:まさに私の性格に近しいです。かなりひねくれていて、それが絵に出るんですね。

工藤:あと、女の子が乗っている木馬だけぽおっと光っているじゃないですか。遊園地のような特別なところにいられない女の子なんだけど、それはそれとして、特別な自覚のある光り方をしているなって気がします。

イケガミ:そうですね。自分が描いた主人公なので、それなりにいい思いはしてほしくて、無意識に特別感を与えているのかも。遊園地で遊ばせてあげればよかったのに、わざわざ距離の離れた木馬に乗らせているのがちょっとこわいですね(笑)。

工藤:私もこの絵を受け取って、見守られている遊園地の中の人を描けばよかったのに、「ひかりの街」を選ばなかった側の歌を詠んでいるので。

イケガミ:そういう、外のものを大事にしたいですよね。取り残された人みたいな。

工藤:遊園地の中も楽しそうだけど、外の木馬もそれでいい。

イケガミ:その人に合う場所でいいんですよね。

03_最初にタイトルを決める

制作の原動力は?

工藤:やっぱり締切ですよ。依頼と締切に合わせて、自分のノリをチューニングしていくというか。
 今回だったら、チャットモンチーの「真夜中遊園地」を聞いて、没頭した状態で短歌を作ります。テーマがある依頼はありがたいんです。自分で書いていると手癖で同じようなものばかりになってしまうのですが、新たなものを作る機会になるので。
 あとは、誰も見てくれないと思うと書けないほうなんです。何かができると「見てー! できたー!(紙を広げて見せるような動作)」って常に思っているから、そういう意味では締切って辛いけどありがたいなと思います。

イケガミ:私もやっぱり、締切とか。あまり健康的じゃないんですけど、何かしらで追い詰められたときに描ける。工藤さんの話を聞いて、自分だけじゃないんだと安心しました。

普段、どのように制作していますか。

イケガミ:私は絵のタイトルを決めてから描き始めることが多いです。行き当たりばったりで描いて最後にタイトルを付けるよりも、先に絵に合う言葉を考えるほうがうまくいくことが多くて。文字からのインスピレーションはかなり受けていると思います。タイトルを決めると、絵の世界観や方向性も決まるので、迷わずに最後まで描けます。タイトルが描きたい絵の雰囲気と合うほど短時間で描けて、表現したいものもうまく表現できているような気がしています。

工藤:私もタイトルが何より先で。タイトルがバシッと決まるかどうかで、その後ノリノリで書けるかが決まるんですよ。

イケガミ:わかります。先ほどの話ですが、私も今回の絵を描くとき、遊園地っぽい曲を聞きながらでした。

工藤:先にタイトルを決めて、タイトルに合う曲を決めて。

イケガミ:プレイリストとか。

工藤:プレイリスト、作りますよね!
 追い詰められているときほどタイトルがバシッと決まると、すぐにできあがります。タイトル先行の作家はあまりいないらしくて、大体最後に頭を悩ませるそうです。逆に私はタイトルが決まらずに書き出すと、全部没にしちゃう。だから、締切が迫ってきてもタイトルが決まらないと本文が書けないっていう。でも、書くのは早いんですよ。

イケガミ:こわいくらい一緒です。描きだすとすぐに描ける。それまでに時間がすごくかかっちゃうっていう。

工藤:締切を長くもらっても、結局同じくらいの制作時間だったりする。

イケガミ:共通点が多いです。絵を描く友達も、最後にタイトルを決めていることが多いです。私たち、レアなタイプですね。

工藤:レア。

イケガミ:レア対談。

04_ノリノリになるまでが大変

行き詰ったときはどうしていますか。

イケガミ:本当に行き詰ったときは、部屋から出なくなります。イヤホンで外界の音をシャットアウトして爆音で音楽を聞き、一日中机に向かってご飯も食べない、みたいな。近場に何かアイデアがあるかなと思って、部屋にある本を読み、何かを自分の中で確立していって、「あ、これでようやく描ける」って状態まで持っていきます。

工藤:わざとどん底まで行くって感じですか。

イケガミ:よくない方法だなって我ながら思うんですけどね。描き終わったら二、三日何もしない、みたいな。

工藤:私は半年くらい全然書けなくなりました。何をやっても書けなくて、最終的にはスランプを言い訳に人に会いまくりました。めちゃめちゃお酒を飲んで、「全然書けないんだよ……」とか言って。目的もなく海に行ってみたり。

そういうときは、アイデアが浮かばなくて悩んでいるのでしょうか。

工藤:アイデアが浮かばないっていうことはないんですよ。書けるものはあるんだけど、自分がノリノリになれないっていう感じです。
 私はいつも、「書けちゃうわ~これは。書けちゃったら何か、揺るがすよ。いろんなものを!」みたいな気持ちになって書いているから、そのモードにするまでが大変。最近、そのモードになる速度が落ちてきました。学生のときは、毎晩それが来てたんですけど。

イケガミ:わかります、それ。体力がなくなってきてる。

工藤:体力なんですかね。

イケガミ:体力がなくなってくると集中力が続かなくなるから、やっぱり筋トレしなきゃ。

工藤:してますか?

イケガミ:自転車で10km走るっていうのを最近やってなくて。そうすると、やっぱり何も浮かばなくなりました。

工藤:「アイデアが浮かばない」って言う人もいるかもしれませんが、アイデアがないんじゃなくて、生活が慌ただしかったりして「よっしゃやるぞ!」っていうモードになるまでが遠いんじゃないですかね。私やイケガミさんみたいに、タイトルを最初にバシッと決めて、決まらなかったら海に行く。そして筋トレをするっていうのを試してみてはいかがでしょうか。

イケガミ:それが一番いいかも。

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2022年4月15日 vol.01 イケガミヨリユキ×工藤玲音 対談