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未来の挑戦者へ 第9回日経「星新一賞」一般部門グランプリ 関元聡さん

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2022.05.25

受賞者が未来の挑戦者であるあなたに向けてメッセージを送ります。今回は第9回日経「星新一賞」一般部門でグランプリを受賞した関元聡さんです。
第9回
日経「星新一賞」

SFショートショート作家・星新一。その理系的な発想力に敬意を表し、「理系文学」を土俵に、アイデアとその先にある物語を競う公募。一般部門、学生部門、ジュニア部門がある。一般部門の応募総数は2022編。

規定一般部門:あなたの理系的発想力を存分に発揮して読む人の心を刺激する物語を。1万字以内。
学生部門:30年後の未来を想像した物語。1万字以内。応募時点で在学中、 かつ25歳以下。
ジュニア部門:100年後の未来を想像した物語。5000字以内。中学生以下。

一般部門:グランプリ(星新一賞)1編=ホシヅルトロフィー・100万円、ほか
学生部門:グランプリ(星新一賞)1編=ホシヅルトロフィー・50万円、ほか
ジュニア部門:グランプリ(星新一賞)1編=ホシヅルトロフィー・図書カード10万円分・絵本『はなとひみつ』、ほか


1970年千葉県出身、茨城県在住。会社員。東京農業大学大学院農学研究科修士課程(造園学専攻)修了。趣味は写真撮影、現像、プリント。現在、次の公募に向けて鋭意執筆中。

受賞作品 「リンネウス」

炭素原子に偽装したナノサイズの生態系探査機を使い、食物連鎖を通じてあらゆる生物の遺伝子を調査するプロジェクト――リンネウス計画。人工炭素の中で意識体として世界中を旅してきた俺は、ある日絶滅したニホンオオカミの体の一部となる。死期を察して山を登るオオカミは苦難の果てにとある巨木に出会い、そこで息絶える。木の中を通って果実となった俺はやがて宇宙へ旅立ち、その途中でかつて自分が何者であったかを思い出す。

 はじめまして、関元聡と申します。有り難いことに、このたび第9回日経「星新一賞」の一般部門にてグランプリを頂きました。まだ駆け出しですが、「未来の挑戦者へ」ということで、創作の上で私が普段気をつけていることをお話しします。これからSF小説を書く方にとって少しでもお役に立つなら幸いです。

 自分で小説を書いてみようと思う方なら、きっとこれまでたくさんの小説を読まれてきたのだろうと思います。その中には、面白いと思う作品や、逆につまらないな、退屈だなと思う作品もあったはずです。もちろん小説の面白さは人それぞれです。ですがこれまで皆さんが培った読書経験は、自分の作品をつくる上でかけがえのない指標となります。面白いと思った作品の一体どこが面白かったのか、設定なのか、ストーリーなのか、キャラクターなのか、逆に退屈だと思った作品はなぜそう思ったのか、是非考えてみてください。これまでの楽しむための読書から一歩だけ進んで、そういう分析的な読み方を少しずつ積み重ねていくことで、自分だけの創作の秘訣を発見できるかもしれません。

執筆のきっかけは、通勤中に日経「星新一賞」の案内を見て、「自分でも書けるかもしれない、もう50歳近いので本当に自分の好きなことをやろう」と思ったことだそう。
アーサー・C・クラークの『2001年宇宙の旅』やレイ・ブラッドベリの『火星年代記』は何度も読み返しており、最近はテッド・チャンやケン・リュウなど中国系作家の作品をよく読むとのこと。関元さんは、「作品づくりの上で上記の作家たちの作品にかなり影響を受けている」という。

 SF小説は一般文芸と違い、異常な世界や、現実にはあり得ない設定の下で起こるドラマを描くものです。だから発想は自由でいいのです。科学的かどうかは気にしなくて構いません。SFはエンタメで、あくまで読者が楽しむために存在します。科学的な正確さにこだわるあまり、お話としての面白さがないがしろになったら本末転倒です。

 ただ、自由とは何でもありという意味ではありません。SFは「論理的」かどうかがとても重要です。特に星新一賞は「理系的論理性」が常に問われます。論理的といっても難しく考えることはありません。例えば何か不思議な道具を思いついたら、それがどんな仕組みで動いているのか、なぜそういう道具が必要だったのか、必ず「理由」を考えるのです。これがあるとないとでは説得力がまるで違います。

 SF小説の面白さは、論理というルールの下でどれだけ想像力の翼を広げられるかにかかっていると私は思います。日常の当たり前の風景が無限に広がって、その先に宇宙の彼方や遙かな未来が垣間見えた瞬間、私は震えるような喜びを感じます。そんな経験を読者に与えられたら、作者としてこの上ない喜びではないでしょうか。

 SFは想像力が勝負です。そこには年齢も性別も経歴も関係ありません。難解な数式や理論が一切出てこないSFもたくさんあります。是非、皆さんの真っ新(まっさら)な想像力をぶつけてみてください。

ホシヅルトロフィー。「グランプリはずっと目標にしていましたので、トロフィーを受け取ったときは万感の思いでした。何より高齢の母に見せることができたのが大変嬉しかったです。最近は地震が多いので箱にしまって低いところに置いてありますが、家の中で箱を目にするだけでも誇らしい気持ちになります」と、関元さん。

主催者サイト:第9回日経「星新一賞」