阿刀田高のTO-BE小説工房 選外佳作「AIトイレ」よしひろ

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2019.05.09

第50回 阿刀田高のTO-BE小説工房 選外佳作「AIトイレ」よしひろ

ドアに手をかざし、中に入る。

「おはようございます、一郎さん!今日の体調はどうですか? 昨日は約70グラムの便と150CCの尿が排出されました」

「よろしければ、確認パネルにタッチしてください。」

パネルに触れると、ゆっくりと便座のフタが持ち上がる。微かな花の香りも漂ってきた。

おもむろに腰をかける。

今日は便秘気味で、なかなか出てこない。

「一郎さん、便秘ですか? 浣腸がおすすめです! 細い管で抵抗なく挿入できて、楽に排便できます」

「俺のあそこまで監視してんのか?」とムッ!としたが、年のせいか、運動不足のせいか、よく便秘になることがある。

悪化して、よく痔にもなる。今回、お願いすることにした。

「浣腸ボタン」をそっと撫でると……。

「サイズはS,M,Lとありますが、どうしますか?」と恥じらいもなく質問してくる。

無難に「M」を選択する。

ググッと何か棒状のものが出てきて、俺のあそこに向かってやってきた。

そして、狙いが定まったのか? 一気に突っ込んできたのだが、少しズレて違うところに突き刺さった。

「痛い! 何すんねん」と便器に罵声を浴びせる。

「申し訳ありません。今後は一郎さんの挿入位置データを上書きして対応させていただきます」

それでも、再度ズレて侵入してきたので自分で位置を調整して、管を入れた。

生暖かい液体が体内に運ばれて、すぐにお腹がグルグルとなってきた。

管が抜けるとき、ほんの少し気持ちよかった。一気に排便する。

センサーが感知して、便器を洗浄。

あそこを目がけてお湯が出て、温風乾燥する。位置情報が補正されたようで、問題なく進む。すると、

「今の排便の量は約130グラムとなります。いつもより多いですね。質は柔らかくて、臭いはキツいです。5段階の4くらい臭いです」

「うるさい! なんやねん」と苦笑いする。

念のためトイレットペーパーで拭こうと手を伸ばすと、何かが書いてある。

「一郎さん! 今回のサービスについてお聞かせください。今後のサービスの改善に役立てていきます。ご理解とご協力をお願いします」

「浣腸する位置情報の精度」

「お尻の洗浄時の温度設定」

「温風乾燥の風量」

無視して紙を引っ張ろうとしたら、ロックされた。

「不審な第三者による利用が認められました。紙の使用を禁止します」

「なんでやねん」

仕方がないので、ちょっとヌルッとした下半身でトイレから出ることにする。

すると、

「一郎さん、お尻を拭かないのですか? 不衛生ですよ!」

「お前がトイレットペーパーをロックしたんやろ!」と、怒鳴ってしまった。

その拍子に、緩くなった下半身から便が少し漏れたように感じた。

こうなっては、また便座で用を足さないといけない。

また座ると、

「一郎さん! 今日はすでに130グラムも排便してます。これ以上の排便は健康によくありません。整腸剤をお出ししましょうか?」

突然、壁の引き出しが開いて、錠剤が二粒でてきた。

素直に従わないと、トイレを使わせてもらえないので、無理矢理喉に押し込んだ。

「水くらい出せや、気がきかんのぉ。評価減点やな」と呟く。

残りのモノを出して、洗浄乾燥が終了。

トイレットペーパーの方に目をやると、やはり、アンケートの依頼があった。

ロックされたくないので、回答する。

「評価」を低くしようと考えていたけど、「ご機嫌を損ねると恐い」ので、5段階で4、としておいた。

「ご協力ありがとうございました!感謝の意を込めて10ポイント加算させていただきます。500ポイントから交換できます!」

「何に交換するねん」