「小説の取扱説明書」~その60 本当の推敲 文章の推敲PART2

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2021.07.09

公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。
第60回で最終回になります。前回の続編「本当の推敲 文章の推敲」のPART2をお送りします。

一文を磨こう

改行するかどうか
「改行は意味の句読点」と言います。
いい位置で改行していると、意味もすっきり伝わります。
改行が全くない文章は紙面が真っ黒で、読んだとき、「うっ」となりますよね。読む気がうせます。
改行によって適度に白を出し、とっつきやすいようにしましょう。ただし、改行が多すぎてもだめ。意味段落と言いますが、改行によって段落という意味のかたまりを作りましょう。

語順をどうするか
日本語の場合、最後に述語が来るという以外は、語順は自由にしてかまいません。
一応、読みやすい語順はあって、たとえば、
〈今日郵便局で妹が手紙を投函した。〉
のように「いつ」「どこで」「誰が」「何を」のような順がいいとされていますが、これも文節の長さによります。

上記の例文の文節はすべて「投函した」に係り、つまり、
「今日   → 投函した」
「郵便局で → 投函した」
「妹が   → 投函した」
「手紙を  → 投函した」
と、修飾する文節の長さに大差はないですから、
〈今日妹が郵便局で手紙を投函した。〉
〈今日郵便局で手紙を妹が投函した。〉
〈郵便局で手紙を妹が今日投函した。〉
いずれもかまわないと言えばかまいません。
しかし、たとえば、
〈今日郵便局で僕の幼なじみで親友の妹が手紙を投函した。〉
のように、「僕の幼なじみで親友の妹が」といった長い文節がある場合はどうでしょうか。
この場合は、長い文節を先に書いて、
〈僕の幼なじみで親友の妹が今日郵便局で手紙を投函した。〉
という語順にしたほうが読みやすくなります。
〈今日郵便局で手紙を僕の幼なじみで親友の妹が投函した。〉
とすると、修飾語(「今日」「郵便局で」「手紙を」)と被修飾語(「投函した」)の係り受け距離が遠くなり、意味がとりにくくなりますので注意してください。
キーワードは「長い順に」です。

ただ、いつも長い順というわけにもきません。
たとえば、上記の例文で言うと、時間的なことは先に書いたほうがいいので、「今日」は先に書きたいのですが、そうなると、長い順になりませんので、このときは以下のようにテンを打ちます。
〈今日、僕の幼なじみで親友の妹が郵便局で手紙を投函した。〉
語順は原則として長い順を優先し、長い順に書けない場合は、文節と文節の間にテンを打つと覚えておいてください。

テンを打つかどうか
テンの話がでてきましたので、読点(テン)についても触れておきましょう。
一般的にテンを打つのは、以下のようなときでしょう。

1. 重文の境目
例)昼はお堅い仕事で、夜はコンビニ店員だ。
2. 倒置法
例)勝ちたいな、今日こそは。
3. 感嘆の言葉などのあと
例)おお、神よ。
4. 挿入句の前
例)多くの欧米人医師、とりわけロバート医師は腕利きだった。
5. 修飾語が二つつながっているとき
例)以前からお願いしている、ぼくにとっては重要な案件です。
6. 連用中止法のあと
例)コロナ禍が収束し、また会えるようになった。
7. 接続助詞のあと
例)急いでかけつけたが、もう開演していた。
8. 助詞を省略したとき
例)その場合、ぼくなら行きません。
9. 一文全体に係る文頭の接続詞や副詞のあと
例)まず、ここで注意しておきたいことを挙げるなら……。
10. テンを打たないと(打つと)意味が変わってしまうとき
例)刑事は血まみれになって、逃げる犯人を追いかけた。(血まみれなのが刑事のとき)
刑事は、血まみれになって逃げる犯人を追いかけた。(血まみれなのが犯人のとき)

日本語のテン(読点)は、大半が打っても打たなくてもいいテンです。今挙げた例にしても、テンを省略したら間違いということはありませんし、もっと言えば、文節ごとにテンを打ち、
〈コロナ禍が、収束し、また、会えるように、なった。〉
と書いても、文法的には間違いではありません。
とはいえ、より適切なテンもあります。
打つか打たないかは、以下の観点で適宜判断してください。
1. 意味や文の切れ目かどうか。
2. 意味が通りやすくなるかどうか。
3. リズムとしてどうなのか。
4. 意味が正しく伝わるかどうか。

文字や記号を確認する

校正、校閲的な作業は地味ですが、最後の最後の総仕上げであり、とても重要な工程です。

誤字
「公募」と書くところ、「公慕」と書いてしまうようなミスです。間違って覚えてしまっていることもあります。

誤用
誤字と似ていますが、間違った使い方です。
たとえば、「耳障り」は嫌な音がして不快な様子ですが、「舌触り」などからの連想で、いい意味で使っている例も多々あります。
このように揺れている言葉を使うのは神経を使います。
「全然」は否定を伴い、〈全然面白くない。〉が正しいとされますが、しかし、戦前は〈生徒が全然悪い。〉とも言っていました。
また、「煮詰まる」は議論がまとまることを言い、
〈一日かけて話し合い、ようやく議論は煮詰まった。〉
のように使いますが、今は「行き詰まる」との混同から、
〈考えが煮詰まってしまって、ちっともまとまらなかった。〉
といった使い方もします。
うっかり使って、「この人、言葉を知らない」とは思われたくないですが、たとえば、「姑息な」のように「ずるい」という意味の誤用のほうが広まっているのに、「一時しのぎ」という意味で使って通じないのも困ります。
状況に応じて、適宜判断していくしかないですね。

誤変換
これは「公募」と入力したはずなのに、誤って「酵母」を選択してしまうような場合です。選択ミスですね。
また、「口」と「ロ」、「二」と「ニ」、「ー(長音)」と「―(ダーシ)」と「-(マイナス)」、「〈 〉(カッコ)」「< >(大なり、小なり)」も選択ミスに注意しましょう。

操作ミス
たとえば、「光太郎」という主人公の名前を「雄太郎」に変えたとして、置換機能で一括変換したのはいいですが、光太郎のとき書いた「光ちゃん」というセリフを修正し忘れたりします。
また、この機能を使うとき、「光」を「雄」に置き換えるように指示すると、「日光」という地名まで「日雄」になってしまったりします。

文字や記号の修正をするときは、「文を読まず」、一文字一文字、記号として見て確認していきます。
読んでしまうと、
「ライクスタイル」という語句を見た瞬間、「ライフスタイル」だと思い込んでしまい、ミスに気づかないのです。
同様に、「公募ガイドをいつも買っていた書店がなくった」も、「なくなった」が「なくった」になっていますが、こうした脱字にも気づきません。
校正・校閲をするときは、読むのではなく、「ラ」「イ」「ク」「ス」「タ」「イ」「ル」と一つずつ確認する。ざっと読むのはそのあとです。

(ヨルモ)

 
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ヨルモって何者?

公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。

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