あなたとよむ短歌 vol.11「意味の重複」に注目

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2021.02.09

あなたとよむ短歌
vol.11
「意味の重複」に注目

少しずつ日が長くなってきましたね。お元気でしょうか? 柴田葵です。
季節の移り変わりは、短歌の良い題材になります。
和歌に多く詠まれる植物や動物、気候だけでなく、たとえば「パン屋さんの春の新作がおいしかった!」など、自分らしい「季節」を詠むのもオススメです!

それでは今回も、投稿していただいた作品を一緒に読んで・詠んでいきましょう。

写真にて会ったことない祖父の顔初めて目にす母とそっくり
(かふ子さん/第6回うえだ七夕文学賞 テーマ「その他自由」)


「うえだ七夕文学賞」は、長野県にある上田西高等学校・上田女子短期大学が主催する文学賞です。短歌だけでなく、俳句、自由詩の部門もあります。
第6回は全部門合わせて7541作品の応募があったとのこと。国内外から、熱意のこもった作品が寄せられます。
複数のテーマが設定されているのも特徴的な賞ですが、かふ子さんの作品は「その他自由」を選択された自由詠だそうです。

かふ子さんのこちらの短歌は、多くの読者から共感を得られる作品ではないでしょうか。
「あったことのない祖父」の顔を写真で初めて見る。「母とそっくり」であることの驚き。
「祖母と母」ではなく「祖父と母」という異性の親子であることにも、なるほど、と思います。顔立ちや歳の取り方は、歳を取るほど、性別関係なく似てくるものではないでしょうか。

「母とそっくり」という言い差し調の結句は、まるで「!」がつくような、驚いた心情が表現されている部分です。
(たとえば「母とそっくりだと気づく」という書き方だと、より冷静な雰囲気になってしまいますよね)

今回、少し気になったのが「意味の重複」です。
祖父の顔を「初めて目に」したと書けば、祖父と「会ったことない」ことも伝わります。
「会ったことない」からこそ、写真で「初めて目に」したわけですが、少し説明に音数を取られすぎているかもしれません。「写真で祖父の顔を初めて見た」という情報自体は、どちらか片方だけで伝えることもできそうです。

写真には会ったことない祖父の顔○○○○○○○母とそっくり

「写真にて」を「写真には」としました。「~にて~する」から「~には~(がある)」に変えることで「写真で祖父の顔を初めて見た」という情報を端的に伝えています。
もしこの形にするなら、余った7音を自由に使うことができます。さて、何に使いましょうか?

私は「どんなところが似ていたのか」を知りたいと思いました。多くの人が共感する作品に、具体性を出すことで、より「かふ子さんにしか詠めない」作品になります。
いくつか例を挙げてみたいと思います。実際にどんなところが似ていらしたんでしょうか? いろいろ入れてみてください!

1)写真には会ったことない祖父の顔あかるい額が母とそっくり
2)写真には会ったことない祖父の顔けわしい眉が母とそっくり
3)写真には会ったことない祖父の顔うすいくちびる母とそっくり

いかがでしょうか。額や、眉、くちびると具体的な部分を入れることで、読者にも情景がイメージしやすくなりました。1は優しそうな印象、2は厳しそうな印象、3は少しドキッとする大人の雰囲気が感じられます。

短歌は、説明文と違って「情報を伝えるためのもの」ではありません。なので、必ずしも効率的に言葉を選ぶ必要もなく「意味の重複」も一概にダメではありません。ただ「限られた音数をどう使うか」に意識的になって、あれこれ実験してみるのも面白さの一つです。

引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!

 
■講師プロフィール
柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
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