あなたとよむ短歌 vol.15 メリハリをつける

  • 公募ガイドから
  • 川柳・短歌・俳句

2021.06.09

あなたとよむ短歌
vol.15
メリハリをつける

こんにちは、柴田葵です。
15回を迎えたこの連載。「楽しみにしている」というお手紙やメールをいただくようになりました。ありがとうございます!
公募に入選しなかった作品だけでなく、応募しそびれた作品や、誰かに見てほしい作品など、気軽にご投稿ください。送られてきた大切な作品を、今後も一緒に読んで・詠んでいきましょう。

それでは今回の一首です。

尾は黒で腹は黄色のあの鳥はいつも一人でエサをついばむ
(なこちゃんさん/東直子の「短歌の時間」/題詠「尾」)


月刊公募ガイドの人気連載、歌人・東直子さんの「短歌の時間」に投稿された作品です。
題詠「尾」、詠み込み必須、という公募でした。もし短歌の募集要項に「詠み込み必須」とあったら、指定された言葉を一首のなかに必ず取り入れなければいけません。
たとえば「尾」を「詠み込む」としたら、「お」「オ」と字の表記を変えるのはNGですが、「尾長」や「高尾国定公園」といった熟語を使うのはOKです。例外もあるので、募集要項はよく確認しましょう!

さて、なこちゃんさんの作品ですが「一人」という表現がとても魅力的ですね。
鳥の種類はわかりませんが、黒と黄色のコントラストが美しい鳥です。作品中で鳥を見ている、その視線の主(作品の主体)は、鳥に愛着を持っているのでしょう。「一羽」ではなく「いつも一人で」と人間のように数えてしまうほど、その鳥に感情移入しているようです。
もしかしたら、自分自身と鳥を重ね合わせているのかもしれません。鳥ではなく、むしろ鳥を見ている人自身に、孤独や寂しさを感じる一首です。

少し気になるのが、上句の言葉のつながり方です。
尾【は】黒で腹【は】黄色のあの鳥【は】と、鳥に関する情報がすべて【は】で並列されています。「……で……の」という緩やかな接続も相まって、いくぶん間延びした雰囲気になっています。黒と黄色、細長い尾と丸い腹、という対比をあざやかに感じさせるためにも、メリハリの効いた上句を探ってみましょう。

尾が黒く腹は黄色いあの鳥はいつも一人でエサをついばむ

どこが変わったかわかるでしょうか? 変更前と後を、ぜひ声に出して読んでみてください。かなり違いが感じられると思います。

また「あの」などの「こそあど言葉」も、どうしても使う必要がある場合以外は、一旦避けてみましょう。作者以外にはイメージが伝わらず、ぼんやりしてしまうことがほとんどです(反対にイメージをぼんやりさせたいときには、効果抜群です)。

尾が黒く腹は黄色い鳥が棲むいつも一人でエサをついばむ

「あの」の代わりに「棲む」という動詞を入れてみました。動詞を入れることで、鳥の体温や存在感がより伝わるような気がします。
さらに思いきってメリハリを出すとしたら、次のような方法もあるかもしれません。

黒い尾と明るい腹をあわせ持つ鳥が一人でエサをついばむ

「明るい」としましたが、元の「黄色い」の方がより具体的な風景が浮かびますね。迷うところです。ただ、「明るい」に変えたことで「黒」との対比が鮮明になり、生き物の内包する矛盾や裏表というニュアンスが強く出ました。

いかがでしょうか。メリハリを確認するコツは「音読」です。短歌はやはり「歌」なので、声に出して確認してみましょう。
引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!

 
■講師プロフィール
柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
応募要項
応募規定 ペンネームと、入選を逃した公募タイトル・応募した作品・お題やテーマ(ある場合のみ)をお送りください。
応募方法 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌」をつけてツイートしてください。
採用1点=公募ガイドONLINE上で講評・アドバイス、金券2000円分進呈
締切 常時募集
 
 

バックナンバー

2022年1月7日あなたとよむ短歌 vol.22「主体」の存在感
2021年12月9日あなたとよむ短歌 vol.21「視覚情報が8割」というけれど
2021年11月9日あなたとよむ短歌 vol.20 細かな工夫
2021年10月8日あなたとよむ短歌 vol.19 目と耳が驚く短歌
2021年9月9日あなたとよむ短歌 vol.18 風景を取り入れる
2021年8月6日あなたとよむ短歌 vol.17 連作のすすめ
2021年7月9日あなたとよむ短歌 vol.16 57577を守る・守らない
2021年6月9日あなたとよむ短歌 vol.15 メリハリをつける
2021年5月7日あなたとよむ短歌 vol.14 1音の可能性
2021年4月9日あなたとよむ短歌 vol.13 慣用的表現の誘惑
2021年3月9日あなたとよむ短歌 vol.12「テーマ詠」は能動的に
2021年2月9日あなたとよむ短歌 vol.11「意味の重複」に注目
2021年1月9日あなたとよむ短歌 vol.10 内容と構造をマッチさせよう
2020年12月9日あなたとよむ短歌 vol.9「推敲の大切さ」と「落選したときの気持ち」
2020年11月9日あなたとよむ短歌 vol.8 本当に「こそあど」でいい?
2020年10月9日あなたとよむ短歌 vol.7「語順」を変えてみる
2020年9月9日あなたとよむ短歌 vol.6「体言止め」には要注意
2020年8月7日あなたとよむ短歌 vol.5 いくつもの「読み」
2020年7月9日あなたとよむ短歌 vol.4「ひっくり返す」
2020年6月9日あなたとよむ短歌 vol.3「具体的」にする
2020年5月8日あなたとよむ短歌 vol.2「説明」をやめてみる
2020年4月9日あなたとよむ短歌 vol.1「分かち書き」をやめてみる