あなたとよむ短歌 vol.16 57577を守る・守らない

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2021.07.09

あなたとよむ短歌
vol.16
57577を守る・守らない

こんにちは、柴田葵です。
毎月さまざまな短歌をご投稿いただいています。ありがとうございます。すべて拝読しています!

少し気になるのが、「57577」という短歌の基本の形(定型)をうっかり忘れてしまっている作品が少なくないことです。特に「57575」と、最後が5音になっている作品を毎月いくつかいただきます。文字数ではなく、音数で数えるのがポイントです。
短歌を短歌たらしめる基本のリズム「57577」にノッてみることが、短歌を楽しむ第一歩。最初は指を折りながら音を数えてみるのが◎です。

それでは今回の一首を読んで・詠んでいきましょう!

夏祭り君が大人に見える夜浴衣まぶしく紅を引く
(山本聖山さん)


山本さんのこちらの作品。いずれかの公募で入選を逃したものではなく、このコーナーに宛てて投稿してくださったようです。
「入選しなかった・結果が振るわなかった短歌」を募集しているコーナーですが、「迷った挙句に投稿しそびれた」「自信がなくて投稿できなかった」という作品も大歓迎です。お気軽に作品をお寄せください。

さて、山本さんの作品です。「57577」の定型をしっかり踏まえた、安定感のある一首です。「夏祭り」という一般的な単語を「君が大人に見える夜」という個人的な言葉で言い換えています。それに続いて、浴衣姿、浴衣に合わせて引かれた口紅、と細部へフォーカスしていく、なめらかな流れが見事です。「君」から目を離せず、吸い寄せられるような気持ちが描かれています。

下句の「浴衣まぶしく」と「紅を引く」について、少し検討してみましょう。

「浴衣まぶしく」は「浴衣(が)まぶしく(輝いていた)」という意味でしょう。主語は「浴衣が」です。
対して「紅を引く」は「(君は)紅を引く」という文章を省略したものです。主語は「君は」ですよね。

「浴衣まぶしく紅を引く」という短い下句のなかで、主語が2つ存在し、なおかつ片方は省略されています。そのため、読む側の理解にかなりの負担がかかります。この作品の場合はこのままでも意味が伝わりますが、どこかゴロゴロとした読後感を与えてしまいそうです。

試しに、出てくる要素はそのまま、主語をひとつにしてみましょう。

夏祭り君が大人に見える夜まぶしい浴衣に紅ひいて

「(君は)まぶしい浴衣に紅(を)ひいて(いる)」と、主語を「君は」に統一してみました。下句の読後感がよりスムーズになったような気がします。

ところで、気がつきましたか? このように変えることで、下句のリズムは「77」ではなく「87」になっています。定型から外れているのです。
定型からは外れましたが、リズムは崩れていません。主語が統一されたことで、却ってスムーズに読めるようになりました。

「57577」の定型は短歌を楽しむ基本ですが、そのリズムの懐は大きいと私は考えています。有名な短歌や、いいなと思った短歌は、ぜひ声にだして読んでみてください。それから、自分が作った短歌も音読してください。57577をベースに、さまざまなノリ方を体感できると思います。

引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!

 
■講師プロフィール
柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
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