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あなたとよむ短歌 vol.27 半歩踏み込む

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  • 川柳・短歌・俳句

2022.06.01

あなたとよむ短歌

入選を逃した短歌や投稿できなかった短歌などを募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。作品は常時募集中です!

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.27
半歩踏み込む

1年の折り返し地点、6月がやってきました。早いものですね。

ところで最近、新聞の投稿欄や短歌結社の詠草では、ウクライナ侵攻を取り上げる作品が増えているそうです。自然災害や社会問題など、そのときの時事を詠んだ短歌を「時事詠」といいます。

時事詠に積極的に取り組む方も、短歌では時事問題に触れない主義の方もいます。直接的に時事を詠まなくても、基本的にはどの短歌もその時代の社会と繋がっているという考え方もあります。いずれにしても、時事詠というものがあることを意識して投稿欄など読むと、改めて興味深いかもしれません。

それでは今月も、みなさんの一首を読んで・詠んでいきましょう!

父の日の午前に物の着くといふ娘のメールに想ひ巡らす
(遊泉さん/「オール讀物」応募作品)


小説・文芸誌「オール讀物」には俳句と短歌の投稿欄があり、隔月で交互に掲載されています(合併号は両方が載るので、詩歌に興味がある人にはお得ですね!)。現在、短歌のコーナーで選者を務めるのは、雑誌「公募ガイド」でも長く連載を務めていらした歌人・東直子さんです。

今回の遊泉さんの作品は、まさに今月にぴったりの一首。「荷物を送ったから」と娘さんからメールがきました。メールの受け手はお父さん、と考えるのが素直な読解かもしれません(もしかしたら、お母さんかもしれませんが)。おそらく離れて暮らしているのでしょう。きちんと荷物を受け取れるように配達の予定を伝える、娘さんの心遣いが感じられます。

この一首のすばらしい点は「物」という言葉のチョイスです。「贈り物」や「プレゼント」ではなく、ただ「物」とすることで、何が届くかわからない状況を読者も体感することになります。

たぶん、届くのは父の日のプレゼント。けれども「午前に荷物を送った」という連絡だけでは、本当にプレゼントなのかどうか……いや、きっとプレゼントに違いない。何を選んでくれたんだろう。食べ物かな。酒かな。高いものだと悪いな。気持ちだけでいいのになあ、楽しみだな。そんなふうに、想いをめぐらせるお父さんの心情を、読者も一緒に体感できる一首です。

一点、再考したいのは結句の「想ひ巡らす」です。子どもからこのようなメールがきたら、いろいろ考えるだろうことは、書かずとも伝わるはず。もう一歩、いや、半歩だけ、お父さんの感情が伝わるように踏み込んでみてはいかがでしょうか。

父の日の午前に物の着くといふ娘のメールを幾度も開く
父の日の午前に物の着くといふ娘のメールのその眩しさよ

結句だけ置き換えてみました。一首目、メールを「幾度も開く」という明確な動作を入れることで、お父さんのイメージが浮かびやすくなります。そわそわ、ワクワクしているんでしょうね。

二首目、「その眩しさよ」は具体的な動作ではありません。けれども、メール自体がまるで光っているように見える気持ち、尊い気持ちが感じられます。メール自体がすでにプレゼントなのかもしれません。

説明文のようにすべてを明確に書きすぎるのも面白くありませんが、少し踏み込むとグッと魅力がでるのが短歌です。特に結句は、いろいろなパターンを試してみたいですね。

引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!

 
応募要項
応募規定 ペンネームと、入選を逃した公募タイトル・応募した作品・お題やテーマ(ある場合のみ)をお送りください。
応募方法 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌」をつけてツイートしてください。
※応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
採用1点=公募ガイドONLINE上で講評・アドバイス、金券2000円分進呈
締切 常時募集
 
 

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