公募を探す

あなたとよむ短歌 vol.5 いくつもの「読み」

  • 公募ガイドから
  • 川柳・短歌・俳句

2020.08.07

あなたとよむ短歌
vol.5
いくつもの「読み」

お元気ですか? 柴田葵です。

連載『あなたとよむ短歌』も5回目。
公募に応募したものの入選を逃した短歌作品を投稿していただき、一緒に読んで・詠んでいくコーナーです。
応募しようと思って応募しなかった作品でも大丈夫です。ご投稿、お待ちしています!

それでは、今回の短歌はこちらです。

半額のシール貼られる前だってきっとあなたは輝いていた
(菊華堂さん/毎日歌壇)


前回の朝田さんと同じ「毎日歌壇」に投稿された作品。新聞の短歌投稿欄=新聞歌壇は、多くの投稿と読者に支えられています。 毎日歌壇の現在の選者は、伊藤一彦さん、加藤治郎さん、篠弘さん、米川千嘉子さんの4名で、投稿する際にどの選者に見ていただくかを選ぶことができます。
「この人に作品を読んでもらいたい!」という人に投稿するのも、取り組みがいがありますよね。

菊華堂さんの作品は、とても面白い一首です。「半額のシール」が貼られているのは、スーパーの食品かお惣菜でしょうか。セールになった日用品かもしれません。
半額のシールを見て「お、半額だ!」とうれしくなる。輝いてみえる。一方で、ふと「半額になる前だって充分良いものだったんだろうな」と思い直すと、なんだかその商品が哀れにもなります。
半額になった商品にわいた同情心が「あなたは輝いていた」という「擬人法」に現れています。

と、ここまで作品を読んできましたが、「あなた」は本当に擬人法なんでしょうか?
「あなた」とは、物ではなくて、誰かしら「人」のことを言っているんだとしたら?
私たち人間には値段などつけられませんが、現実的に、時給や給与といった値段で評価されてもいます。
景気の低迷や、加齢、様々な事情によって「値ごろな人材」になってしまった人間を詠んでいるとしたら。「半額のシール」の方が比喩だとしたら。
なんて社会性のある、痛切な歌でしょうか。全く違う歌に見えてきました。

この読み方が絶対に正解だ、と、この一首からだけでは結論づけられません。それも「短歌を読む面白さ」だと思います。

両方の読みができるこのままの状態で、作品は魅力的です。新聞歌壇のように何千もの投稿がある公募では、紙面の都合上すべての秀歌が選ばれるとは限らないので、自分で良いと思った作品を、めげずに繰り返し投稿するのが入選への道です。
ただ、せっかくですので、「①あなた=日用品説」「②あなた=人間説」それぞれの読み方を強める改作を考えてみました。
もし「読み方をブレさせたくない」と思った場合に、参考になればうれしいです。

① 半額のシール貼られる前だって輝いていたあなたをレジへ
② 半額のシール貼られる前だってあなたもわたしも輝いていた

①②それぞれ「読み」のブレは少なくなったように思います。 でも、元の菊華堂さんの作品、やっぱりいいですよね。私はとても好きです。もう一度、菊華堂さんの作品を載せておきます。

半額のシール貼られる前だってきっとあなたは輝いていた

いかがでしょうか。今回は「どう読むか」「どう読まれるか」ということを中心に、素敵な作品をご紹介しました。
引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!

 
■講師プロフィール
柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
応募要項
応募規定 ペンネームと、入選を逃した公募タイトル・応募した作品・お題やテーマ(ある場合のみ)をお送りください。
応募方法 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌」をつけてツイートしてください。
採用1点=公募ガイドONLINE上で講評・アドバイス、第6回掲載分から金券2000円分進呈
締切 常時募集
 
 

バックナンバー

2022年5月1日あなたとよむ短歌 vol.26 「固有名詞」を取り入れる
2022年4月1日あなたとよむ短歌 vol.25 公募と作品のミスマッチを防ぐ
2022年3月1日あなたとよむ短歌 vol.24「答え」を言わない
2022年2月1日あなたとよむ短歌 vol.23「心情」を表す方法
2022年1月7日あなたとよむ短歌 vol.22「主体」の存在感
2021年12月9日あなたとよむ短歌 vol.21「視覚情報が8割」というけれど
2021年11月9日あなたとよむ短歌 vol.20 細かな工夫
2021年10月8日あなたとよむ短歌 vol.19 目と耳が驚く短歌
2021年9月9日あなたとよむ短歌 vol.18 風景を取り入れる
2021年8月6日あなたとよむ短歌 vol.17 連作のすすめ
2021年7月9日あなたとよむ短歌 vol.16 57577を守る・守らない
2021年5月7日あなたとよむ短歌 vol.14 1音の可能性
2021年6月9日あなたとよむ短歌 vol.15 メリハリをつける
2021年4月9日あなたとよむ短歌 vol.13 慣用的表現の誘惑
2021年3月9日あなたとよむ短歌 vol.12「テーマ詠」は能動的に
2021年2月9日あなたとよむ短歌 vol.11「意味の重複」に注目
2021年1月9日あなたとよむ短歌 vol.10 内容と構造をマッチさせよう
2020年12月9日あなたとよむ短歌 vol.9「推敲の大切さ」と「落選したときの気持ち」
2020年11月9日あなたとよむ短歌 vol.8 本当に「こそあど」でいい?
2020年10月9日あなたとよむ短歌 vol.7「語順」を変えてみる
2020年9月9日あなたとよむ短歌 vol.6「体言止め」には要注意
2020年8月7日あなたとよむ短歌 vol.5 いくつもの「読み」
2020年7月9日あなたとよむ短歌 vol.4「ひっくり返す」
2020年6月9日あなたとよむ短歌 vol.3「具体的」にする
2020年5月8日あなたとよむ短歌 vol.2「説明」をやめてみる
2020年4月9日あなたとよむ短歌 vol.1「分かち書き」をやめてみる