あなたとよむ短歌 vol.7「語順」を変えてみる

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2020.10.09

あなたとよむ短歌
vol.7
「語順」を変えてみる

こんにちは、柴田葵です。

だんだんと気温も落ち着き、過ごしやすい季節になってきました。芸術の秋、公募の秋ですね。
さっそく今月も、ご投稿いただいた「公募に応募したものの入選を逃した短歌作品」を、一緒に読んで・詠んでいきましょう。

灯のようにお店がぽつぽつと再び開き初夏の風吹く
(高田由香利さん/婦人公論)


中央公論新社が発行する女性誌「婦人公論」。毎号、はつらつとした芸能人・文化人が表紙になっている、あの歴史ある月刊誌です。読者投稿を広く募集しているのも特徴です。

高田さんの作品は、まさに今年の様子を描いたもの。春頃、新型コロナウイルスの流行により街中のお店も休業を余儀なくされました。ステイホームが呼びかけられ、人通りも少ない街のなか。とても寂しい、心が冷たくなる雰囲気でした。
自粛期間を経て初夏になり、感染の流行も一旦は下火に。少しずつ再開しはじめるお店の様子を、真っ暗ななかで点される灯(ともしび)に喩えた作品です。灯は、お店の再開だけでなく、人々の心が少しずつ温かくなる様子も表していると思います。

とても豊かでしっくりくる比喩表現です。結句(5・7・5・7・7の最後の7の部分)の「初夏の風吹く」という爽やかさも印象的。未来への希望を予感させます。
正直、このままでもとても良い作品だと思いました。今年の感染症問題下の生活を詠む「生活詠」あるいは、時勢を詠む「時事詠」として、未来に残したい作品です。

けれども今回この作品を取り上げることにしたのは、1つだけ、私としては気にかかる点があったからです。
一緒に考えていただけるとうれしいです。

私が気になったのは「灯のようにお店がぽつぽつと再び開き」の部分。「灯のように」と「ぽつぽつと」は両方とも「(再び)開き」にかかる修飾語です。

「灯のように」→「開き」
「ぽつぽつと」→「開き」

しかし作品には「灯のように」の後に「お店が」が入るため、修飾するはずの「開き」と距離が生まれています。私たちは、普段のしゃべり言葉でもしばしばこの語順で話しますし、文章だったら気になりません。ただ、短歌は約31音と非常に短い詩です。「お店が」を挟んでしまうと、通常の文章よりも、よりゴツゴツ・バラバラとした印象を与えてしまいます。
わざとそうした効果を狙う場合は良いのですが、この作品では「ゴツゴツ・バラバラ」感は内容にマッチしない気がします。できれば、

《お店が》《灯のように》ぽつぽつと再び開き初夏の風吹く

という語順のほうがスムーズですし、「灯」が「ぽつぽつ」する雰囲気を想像しやすくなります。
一方で、そのまま「お店が灯のようにぽつぽつと再び開き初夏の風吹く」としてしまうと、リズムも悪く、あまりにも文章的すぎます。
そこでこの語順にする場合の一例として、考えてみました。

お店とは灯だったぽつぽつと再び開き初夏の風吹く

「お店とは灯だった」で、意味としては切れます(このあとに一字あけ=スペースを入れるとわかりやすくなります。自分でピンとくる方でいいかと思います)。コロナ禍でお店が閉じて、初めて「お店とは街の、そして私の心の灯だったのだ」という気づきが表現できるかと思います。語順も整理されました。

いかがでしょうか。短歌ができたら、一度音読して、リズムや意味の流れを確認するのがオススメです!
引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています。

 
■講師プロフィール
柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
応募要項
応募規定 ペンネームと、入選を逃した公募タイトル・応募した作品・お題やテーマ(ある場合のみ)をお送りください。
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採用1点=公募ガイドONLINE上で講評・アドバイス、第6回掲載分から金券2000円分進呈
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