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作家インタビュー 2022年本屋大賞2位 青山美智子

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2022.06.07

2022年本屋大賞2位 青山美智子

撮影:土佐麻里子

2022年本屋大賞。『赤と青とエスキース』で第2位に輝いた青山美智子さん。実は学生の頃から公募ガイドの愛読者。今回は青山さんの半生を通して、小説はどう書けばいいのかを探っていく。併せて、作中に出てくる架空の漫画を現実に描いてくれる漫画家募集「『ブラック・マンホール』コミカライズ・プロジェクト」も紹介します。

青山美智子
1970年、愛知県出身。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年後に帰国し、雑誌編集者を経て、2003年、第28回パレットノベル大賞で佳作。2017年、『木曜日にはココアを』でデビュー。『お探し物は図書室まで』で2021年本屋大賞で第2位、『赤と青とエスキース』で2022年本屋大賞第2位。

原稿用紙100枚が書けず、
「私、天才じゃない」と気づく

――作家を目指したのは、いつぐらいですか。

青山中学生のときに、氷室冴子さんの『シンデレラ迷宮』(集英社コバルト文庫)を読んで、なんて面白いんだと思い、真似して書いたのが最初でした。中1で書き始め、中2のときに「作家になろう」と決めました。

――かなり早い段階で目覚めたんですね。

青山そのあと、高校生になって、いろいろな高校の生徒が集まった同人誌のサークルに入ったんです。原稿用紙5枚、10枚の小説や詩、イラストなどを持ち寄り、3カ月に1回、同人誌を発行していました。そのとき、「うまい、うまい」と褒められたんですね。それでいい気になっちゃって、「私、いけるかも」と思い、コバルト文庫の後ろに載っている新人賞に応募しようと思って……。でも、それまで10枚ぐらいしか書いたことがなかったので、規定の95枚~105枚という枚数が書けなかったんです。そのとき、「私、全然天才じゃない」と気づいたんです。

――初めての挫折ですね。

青山それで気が楽になって、それなら好きに書けばいいやと思って、そのあともずっと書いていたのですが、大学に入って、公募ガイドと出会うんです。

――それでまた文学賞に挑戦する?

青山大学のときはエッセイやショートショートを書いていましたが、やっと文学賞に応募できる枚数が書けるようになったのは25歳のときでした。14歳で作家を目指し、50枚書けるようになるのに10年かかっています。

――その後も投稿生活が続くわけですね。

青山公募ガイドに書いてある規定枚数や締切を書き出して壁に張り出し、年に2編か3編、本命のすばる文学賞を中心に応募していました。公募のスケジュールで生活サイクルが決まってくるという感じでした。

――成果はどうだったのですか。

青山33歳のときに、小学館のパレットノベル大賞で佳作入選をしました! そのときは結婚をしていて、妊娠していました。大きいお腹で授賞式に行き、子どもも授かって万事めでたしと思っていましたが、作家デビューはできなかったんです。入選作が50枚だったので、担当編集の方に「次、書いてくださいね」と言われ、200枚書いたのですが、出産や子育てに追われてしまい……。

――女性としては悩みどころですね。

青山編集者さんともコンタクトがとれなくなってしまい、0からのスタートと思い、また公募ガイドを買う日々が来るんです。それで37歳のときに「ショートストーリーなごや」に入選し、映像化もされましたが、作家デビューには至りませんでした。

書きたいことがあるから書く。
もの書きに必要なのはそこ!

――それが2007年のこと。2017年に『木曜日にはココアを』で単行本デビューを果たすまで10年以上ありますが、その間は何を考え、どう過ごしていたのですか。

青山作家になれそうでなれないというジレンマは感じていましたが、「私は天才じゃない」というところからスタートしていますので、落選し続けても誰に怒られるわけでもなし、気楽にやっていました。
私の場合は、書きたいことがあるから書いているというスタンスだったので、惚れた弱みではないですが、書くのが好きだから仕方ないやみたいなところがありました。

――好きでないと続きませんよね。

青山投稿時代が長かったので、努力と根性でやってきたと思われがちですが、やめるきっかけがなかったんです。認められなくても、書きたいことがあるから書くというのは、才能ではなく、性分だと思います。結局、もの書きに必要なのはそこかなと。

――スキルを磨くために、どんなことをされましたか。

青山私の場合はそれが課題で、何をすれば力がつくのかわからなくて、ミステリー、SF、官能小説など、いろんなジャンルの小説賞に手当たり次第に応募していました。

――応募することが修業だったわけですね。

青山自分が何に向いているかは、自分では決められないところもあるのかなと思います。誰かに読んでもらって、誰かに反応をもらうことは必要かなと思います。
私の場合は、シドニーで発行されている情報誌のWEBサイトで連載していた小説を書籍化する形で作家デビューをしましたが、連載中、サイトに上げるとすぐに読者さんから反応があるのがすごく励みになりました。

――やりがいにつながりますね。

青山次を書きたいというモチベーションになりますよね。やはり、小説は読み手がいて初めて命が吹き込まれるものだなと思います。

――反応があって、そこに読者がいるんだと意識するということは?

青山ありますね。物語の向こうに誰かがいて、その人との共同作業と感じることがあります。その「誰か」を一人だけに特定するということはないのですが、何十万、何百万と読者がいたとしても、読者と作家は本を通じてマンツーマンなんだなということはいつも意識しています。

『赤と青とエスキース』
(青山美智子著・PHP研究所・税込み1650円)

頭の中でシアターが始まる。
ストーリーは小説が決めてくれる

――『赤と青とエスキース』は、一枚の絵を核とした連作小説です。凝った作りになっていますが、内容や構成は最初に決まっていたのですか。

青山ある人物が絵を見ているというプロローグがあり、同じ人物がエピローグでも絵を見ているという構成は最初に決まっていました。でも、それが誰なのか、どんな絵なのか、どんな出来事が起きるのかは決まっていませんでした。

――ストーリーはどのように着想しますか。

青山私が考えるというより、物語のほうが引っ張ってくれることが多いです。ストーリーや展開は小説が決めてくれます。頭の中に映像が見えて、それを写している感じです。

――頭の中で映画が流れ、それを追いかけている感じですか。

青山そうです。私は夜から明け方まで書くのですが、夜、暗くなると頭の中でシアターが始まるんです。

――第一章の「金魚とカワセミ」は、レイが絵のモデルになっている現在進行形の場面の中に、レイとブーとの出会いがカットバックのように何度も挿入されます。

青山第一章に関しては、古い映画を観ているような感覚で書いていました。だから、現在と過去が交互に出てくるという映画的な作りになったのだと思います。

――プロットは綿密に作るほうですか。

青山かなり特殊と言われています。文章で説明するというより、1シーン1シーンを映像で見せていくような書き方です。文章では、私の頭の中の映像が編集者さんに伝わらないと思い、「主人公のモデルはこの人」のように映像を引っ張ってきます。

――それはかなり特殊ですね。

青山私はドラマのノベライズを書いていたことがあって、そのときはドラマの相関図を壁に張っていたのですが、小説を書くときも相関図を作ります。

――いつもどんな作品を書こうと心がけていますか。

青山「誰でもなくて、誰でもある」市井の人物を書きたいと思っています。おじいさんを書いても、若い女性から共感しましたと言われることがあって、性別も年齢もやっていることも違うのに、「これは私だ」と思ってもらえる。それが私の小説の方向性なのかなと思っていて、そこを書いていきたいと思っています。

――今回は「絵」が核でしたが、取材はされましたか。

青山私は取材をよくするタイプで、第二章「東京タワーとアーツ・センター」を書くときも、額工房に行ってお話を伺いました。そのときに聞いたセリフがそのまま出てくる箇所もあります。〈(絵と額の)完璧な結婚〉というセリフも、額工房でアルバイトをしていた美大生がぽろっと言った言葉でした。取材に行かなかったら第二章は書けなかったと思います。そういう奇跡の出会いがたくさんありました。

作中に登場する漫画を現実に!
作画を担当する漫画家を募集

――第三章「トマトジュースとバタフライピー」に『ブラック・マンホール』という漫画が出てきますが、これを現実にコミカライズするそうですね。

青山「トマトジュースとバタフライピー」の中に、『ブラック・マンホール』の説明として、
〈下水道管に住むモンスターの話だ。シュールでオシャレで、ちょっとホラーなのに、ちょっと笑えて……なにしろおもしろい。人間の愚かさと英知、ラブとサスペンスが絶妙なバランスで描かれている。〉
とあります。これを原案として、採用になったクリエイターさん(漫画家さん)と一緒に物語を作っていければいいなという企画です。

――ストーリーは原案をもとに漫画家さんが考えるのですか。

青山クリエイターさんと一緒に詰めていけたらいいなと思います。どちらがどの程度考えるか、その割合はクリエイターさんにもよりますが、原案のイメージと違うものにならないようにしながら、クリエイターさんのクリエイティビティーも生かして、よい相乗効果が生まれるあんばいで割合を決めていけたらいいですね。

――あらすじを読んだだけで面白そうと思えます。ホラーで笑えて、ラブでサスペンスってすごいですね。

青山「トマトジュースとバタフライピー」を書いているときは、自分では描けないけど読んでみたい漫画ということで設定だけ書きましたが、まさか本当にコミカライズの企画が持ち上がるとは夢にも思わず。

――どんな漫画家との出会いを期待しますか。

青山私も公募に投稿する時代が長かったので、プロ・アマ問わず、漫画を描いて頑張っている方に応募していただきたいです。私が何があっても小説を書いちゃうという性分であるように、漫画が好きで、何があっても漫画を描いちゃうんだよという人と一緒に作りたいですね。

「『ブラック・マンホール』コミカライズ・プロジェクト」
概要
青山美智子著『赤と青とエスキース』に登場する架空の漫画『ブラック・マンホール』を実際に作画してくれるクリエイター(漫画家)を募集。『赤と青とエスキース』の第三章「トマトジュースとバタフライピー」を原作としてイメージし、10ページ以内にまとめたオリジナルのコミカライズ作品で応募。
採用者=賞金10万円
締切
2022年10月15日(土)
24:00
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