3月18日(日)新宿にて、公募スクール春の公開講座を開催しました。
後藤みわこ先生「童話創作のコツ」、田中章義先生「短歌レッスン」、若桜木虔先生「プロ作家になるには」の3講座。前泊して遠くからご参加いただいた方もいらっしゃり、大盛況のうちに終了しました。
その模様をお届けします!
【担当講座】「はじめての童話」「童話公募必勝講座」ほか。

「はじめての童話」「童話公募必勝講座」でご指導いただいている後藤みわこ先生の講座からスタート。
先生自身、さまざまな公募に応募し、デビューされた体験を踏まえ、皆さんから寄せられた質問をもとにお話しいただきました。
- Q. 童話は、楽しいものが多いですが、中には悲しいもの、切ないものもあります。小学生向けの作品で、病気や死を扱う場合の注意点は?
-
A.
活字になるということは誰かの目に触れるということ。同じ病気で悩んでいる読者を貶めるようなことをしてはいけない。
言葉のニュアンスを変えて配慮すること。またその配慮を面倒だと思わないのであれば、病気や死を扱ってもよいと思う。そして、ラストには希望を。
-
Q.
私は、57歳です。時代感覚のズレをどうしたらいいのでしょうか?
実際子育てママたちを見ていると、尊敬することもありますが、やれやれと思ってしまうこともあるのですが。 また、子どもたちも、面白がるポイントがちがって、戸惑うことが多くなってきてしまいました。
-
A.
確かにスマホを見ながらベビーカーを押しているお母さんをみると私も「?」と思います。
ただ、主婦として母として経験したことは一度置いておいて、本当に現代の子どものことを知りたければ、取材をすること。
近所の小学校が下校する3時ごろに散歩をして、小学生の会話に耳をすましたり、文部科学省のHPで学習指導要領をみたり……。
ただ、変化にばかり気を取られないように、時代に左右されない普遍的なものを描くことも大切。
などなど、どの質問にも身振り手振りを交え、誠実に、具体的に回答する後藤先生。
参加者の方のメモがみるみる埋まっていきます。
そして、最後は
「書けない、ということで落ち込むよりは一行でも多く書くこと」
先生の力強い言葉に、ご参加の皆さんの多くが励まされていました。
ご参加の皆さんには「春」を題詠に予め作品をご提出いただきました。
提出された作品は、無記名のまま、参加者は自分が良いと思った作品を2首選び、1位、2位の順位をつけ、なぜその作品が良いと思ったかの理由とともに、一人ずつ発表していくことに。
「短歌は褒めあうだけでは成長しません。作品の欠点も指摘するように」とにこやかに仰る先生。少しだけ皆さんに緊張が走ります……。
ただ、そこは創作に関わる参加者の皆さん。的確に長所や「これはもうちょっとこうしたら」と、巧みに感想を述べていきます。
同じ歌でも、同じ見方の人はおらず、さまざまな意見が交わされます。
みなさんがコメントされた後、1首ずつ田中先生が選評されます。その作品の良さや欠点だけでなく、短歌を詠む際に、ポイントとなる技術についても解説するので、自分の作品以外からも学ぶことができます。
ちなみに、ご参加の方の中で最も多く票を獲得されたのが、
水色のコートを脱いでやわらかく梅のにおいの風を羽織った 水野真由美
「春」という言葉はどこにも使われていないにも関わらず、冬から春になる様子が巧みに描かれています。
この歌で田中先生が短歌として優れている点として
- 「やわらかく」や「におい」などのひらがなの使い方が上手。
- 「羽織った」という動詞が効いている。
以上2点を挙げられました。
どちらも短歌を創作するうえで、大事なポイントだとか。
最後に、田中先生が短歌を作る際に押さえておくべきこととして挙げられていたのが、
- 「動詞」にこだわること
- ひらがなと漢字の使い方
- 表現は細部にやどる
また、なるべく多くの短歌に触れることが上達の道とも仰っていました。
31文字と短い言葉で1つの世界を作りあげる短歌。その奥深さと豊かさに触れた1時間半でした。
15時からスタートしたのは若桜木虔先生による「プロ作家になるには」。
若桜木先生をはじめ、若桜木先生のもとでデビューを果たした、7名のゲストを招いて行われました。
【ゲスト】
蒼井凛花、赤神諒、有間カオル、江藤亜由美、佐々木一加、中村啓、矢吹哲也
(50音順・敬称略)
50名を超える参加者を前に、事前に寄せられた質問に回答していきます。「作家になるにはどうしたらいいか?」「小説の書き方って?」「キャラクターやプロットの作り方を教えて!」など、小説を書いた人なら一度はぶつかる悩みなのでは。
- Q. 魅力的なキャラクターを思いつくことができません。考えてもどこかで見たことがあるようなキャラクターを考えてしまいます。
-
A.
魅力的なキャラクターを作るには、まず『強いキャラ』を考えましょう。
強いっていうのはいろいろあります。頭がよくて学問に強いのか、腕っぷしがあって喧嘩に強いのか、スポーツの天才か……強さにもいろいろあるんですよ。
弱い人を考えると、みんな同じようなキャラになるから、話も似たり寄ったりの内容になる。
つまりは『個性的なキャラ』を作りましょうって話。
個性があるキャラには、その作者らしさが出ますからね。(若桜木先生)
どこにでもいる学生。冴えない普通のサラリーマン。平凡な人物はたいくつであり、そこに魅力は感じないということでしょう。
舞台も同じで、一般的な学校生活や会社の風景を描いても読者の心はつかめません。
- Q. 情景描写をうまく書くことができません。どこまで詳しく書けばいいのでしょうか。
-
A.
これには4つのポイントで説明。(赤神さん)
-
1. 後回しの原則
情景を入れる部分に「春。いい天気」とだけ書いてあとで詳しく書く。 -
2. メモ書きのストック
普段の生活で「あ、この表現いいな」「こんな言い回しがあるんだ」など、気づいた言葉や文章をメモするクセをつけておく。 -
3. 五感のずらし
人間は知覚情報で共感を得る。まずは味や匂いで表現してみよう。そのときも「にぎやかな味」「かろやかな味」など、単純な表現ではなく、ちょっとずらした表現を使うと◎。 -
4. ピンポイントに入れる
のべつまくなしに情景描写をするのではなく、必要な個所で表現するようにしよう。
-
1. 後回しの原則
新人にとって風景や場面などの描写は苦労するところ。
焦らず気長に、じっくりと勉強しましょう。ある程度の熟成も必要ですよ、と先生は語ります。
その他、
「プロットや企画書はA4判の用紙1枚でまとめて」(矢吹さん)
「自分の特技をとっかかりに企画本を立ち上げるのもアリ」(江藤さん)
「勤め人や、学生さんは通勤時間などに構想を練るなどスキマ時間の有効活用を」(蒼井さん)など、これから作家を目指す人にとって有益な情報が次々と語られます。
また、若桜木先生の駆け出し時代のお話もありました。
「編集者も新人には容赦がないですからね。ぼくもボロクソ言われたな(笑) でもね、全然気にならない。気にしたって仕方ないですからね。だから作家になりたいなら嫌な情報はすぐに忘れること。良いことだけを覚えておけばいいんですよ(笑)」
いまや誰でも小説を書き、ネットや同人誌で手軽に発表できる時代。新人賞を取るまでの道は険しい。そんな中でなにを言われても気にせず流す、という考えは、ある意味、技術を磨くことと同じくらいに重要でしょう。
賞に落選したときも一緒で、何十回と落選したところで落ち込まない。
「20回落ちたとしても、21回目でデビューをしたら、あなたには20本のストックがある。そう考えたら、何十という落選も強みですよね」。
この言葉には会場の多くの人がうなずいていました。
1時間半の講座はあっという間。ここで自分の問題が解決した人は多いでしょう。しかし新たな問題を抱えた人もいたはずです。すべては新人賞を取るという目標のため。講師陣が示す道を執念で歩み、その先にあるゴールは、新しいスタート地点だと思える人が、プロの仲間入りを果たすのかもしれません。